217/570
ナイチンゲールショウコウグン
「そう、良いのよ貴方はそれで」
雲の上にそびえ立つ城の奥にある玉座では、巨漢を沈め眠る逞しい髭を生やした者が居た。
その傍らに侍り、優しくその者の頭を撫でる、艶やかで神秘的な紫と金髪のの髪を靡かせた
美女が居る。
「私は貴方の介添えとして生まれた存在。使命と意思を与えられた。だけれど私は自らの
意思で貴方を愛し、その望みに添い遂げる。例えそれが深淵へと至る道だとしても、
私は喜んでこの身と魂を捧げましょう」
「ただ、私は一つだけ不満なの」
美女は髭に手を添え梳かしながら囁いた。
「貴方は本当は苦しんでいるのに、それを見ない、理解しない、認めないようにしている事よ。
貴方がそれを認めさえすれば、貴方もあの綺羅星と同じになれたと言うのに」
美女は髭から手を離すと、視線を移し雲間から見えた、地を歩く一人の男の姿を見ていた。
「あぁ私のかわいい息子。貴方は世界のすべてに愛されるのよ。貴方こそがセカイの希望なのだから」




