ニライカナイ
人は飽きる事無く多くの命を奪いながら、追い求めるものがある。
きっと始まりも終わりも無い。永遠に続いて行く。が故に求めている。
理想郷を。
何処で選択を間違えたのだろうか。
ここには人は無く、ただ穏やかに生命が過ぎ行くのを見て居たかった。
私が遭った事に見合う代償はこの世界。
それなのにいつの間にか人が生まれた。繰り広げられるのは前に見ていた風景。
何故だろう。夢見る事すらままならないのか。
それともこれは私の寂しさや願望なのだろうか。
争いの連鎖を防ぐ為に、人の上位互換を誕生させた。
だがそれはただ輪を広げただけだった。
争いの根本は変わらなかったが、幹から枝が分かれるようにその手段は増えて行く。
このままいけばこの科学の無い世界に何れ科学が生まれてしまう。
そこには感情は無く、たった一つのボタンで滅ぶ事が出来るようになってしまう。
人の匙加減に生死を任せる事になる。私のように。
ああ、それは蜃気楼なのか。思い描くだけの夢なのか。
理想郷。其処に辿り着く答えに必要なのは何なのだろうか。
……私自身が強大な力を自覚し、全ての生き死にに干渉する事で
拮抗させれば成せるのかもしれない。そう、元からそういった存在なのだ。
形と姿と役を得れば望むべき理想郷を自らの手足で作り上げる事が出来る。
それこそを求めていたのかもしれない。
理想郷へと辿り着く為なら、多少の犠牲は止むを得ない。
いや寧ろここは私の世界なのだから当然の事だ。
干渉者が居るが問題無い。自らの欲求で行動した者達に私が負ける事は無い。
何より彼らにとっても望むものに違いないのだから。
私は間違ってない。
新たに現れた者は何だか同じ匂いがする。
きっと私に協力してくれる。ならばこれまで以上に目を掛けよう。
このまま彼の流れる方向に答えはあるかもしれない。
いやそれは私の意思なのか?
そもそも彼は英雄に祭り上げられたその先どうなるのか。
彼を引きつけなければならない。私の駒として、私の理想郷を実現する為に
私の理想を私の意思を私の存在を知らしめなければ。
――― 私はきっと間違ってはいない ―――




