カクシン
今思っている事を口に出せば修正される。
修正と言うのはパッと消される事じゃない。
なるほど……そういう事か。
俺が異世界人として投入された事には意味があるとは思ったけど。
巧い具合に引っ張られた訳だ。
元々引き籠りのニートだから空っぽの入れ物で。
刺激的な出会いに出来事、そして世界の輪の外にある剣の入手と最大開放。
ここに入る時のフィルターなり選別なりはあるんだろうか。
取り敢えず俺の思考だったり行動には制限は今のところ無い訳か。
「どうやら大体話は纏まったようだな」
「自分に関してだけですが」
「ならわらわ達はどうじゃな?」
引き籠りニートのおっさんは凄くでは無いがオタクである。
ティアマトさんはメソポタミア神話の女神。
マルドゥクに敗れた後亡骸を天地創造に使用され全ての母の地位を固定された。
問題はこの世界での話だ。
この場合のマルドゥクは誰なのか。
ロキか?俺か?
ロキにも俺にもなるしなれる動機がある訳だ。
スイッチになるアプスーは誰なのか。
ただブロウド大陸の件もある。
ここで言う新たな登場人物は誰なのか。
難しいなぁ。ロキがティアマトさんに付いているからと言って
マルドゥクではないとは言い切れない。
誰かの死によるトリガーによって新たな世界なり大陸を作って
この世界の輪から逸脱した場所を確保し戦力を整える。
という筋書きを描いている気がする。
「そうですね。俺しかティアマトさんを殺せないでしょう」
「ならどうする?今するか?」
「いいえ。個人的にはこの大陸の均衡を保てばいいと思っています」
「気付いてしまった今、前までのように踊れるものかな」
そう、気付いてしまったなら修正される可能性が生まれた。
俺としては何がトリガーとなるのか、の1つは見当が付いている。
他にもあるのか、個人的には其処を調べてみたい。
子孫とかではなくこの世界に辿り着いた異世界人達の末路。
「掻い潜って辿り着ければ着きたいですね」
「ならば様子見と言ったところか」
「ですね。間違いは許されない。生憎今やりたい事があるのでアッサリやられる訳にはいかない」
「さてどうなるかな。当初の目的とは違うようだ」
「今迂闊に動いた人物が後手に回ります」
「なら膠着かな」
「いえ、予定通りダンジョンに潜ります」
「わらわと対立するのだな」
「いいえ、話し合いをしに行く事にします。ロキとも話必要があるので」
「良かろう。ただし誰一人としてあの街に残してくるなよ?」
「当然です。それは人質ですから」
「巧くやると良い。お茶位は出してやる」
「楽しみにしていますよ」
「ではな」
ティアマトさんはゆっくりと雨の滝を登るように空へと浮かんだ。
そして雷となって洞窟がある方向へと帰って行ったのだった。




