到着ゴルド大陸!
――――ああ――――
――――空が綺麗だ――――
――――見渡す限りブルー――――
――――真っ青だ――――
俺は高速で飛ぶ竜に紐でぶら下がりながら、
ゴルド大陸を目指す。
これまでにない深い深いダンジョン攻略。
竜人達の住まう地を救う為、旅立った。
と恰好をつけてみたが、胴体をぐるぐる巻きにされて
身動きが取れない。餌になった気分である。
お嬢様方は大変ご立腹で、もうシルヴァ大陸を旅立ってから経つのに
上にあげてもらえない。高度が高いのもあってとても寒い。
鼻水が出たら凍る勢いだと思う。
上の方でキャッキャしているのかと思いきや、
全然そんな事は無かった。
時々聞こえてくる罰則とか順序とかルールとか、
真剣に議論されてて怖い。時折紛糾してて尚更怖い。
何の議論がなされているのか。何度か聞いてみるが返事がない。
聞こえていないのかと思いきや、声を上げる度に議論は止まるので
聞こえているらしい。
しっかし暇である。寒さにも慣れてきたから眠くなってきた。
これは寝ると死ぬとかじゃないよな。
でも退屈である。ある程度高度が低ければ
景色を楽しめたが、下は雲である。
どうしたもんなのかねこれは。
そんな事を考えながらボーっとしていると、
高度が落ちてくる。そして雲に潜り雲から出ると、
現れた大きな大陸。そこは遠くから見ても解るほど大きな竜がいた。
そしてそこから少し離れた所でわちゃわちゃしていた。
どうやら戦が始まっているようだ。
竜はその場所を通って、大きな竜の所へ行こうと針路を修正する。
その戦場を見ると、意外な光景が広がっていた。
圧倒的な力を持つ竜人達が押されていたのである。
俺の予想だけど、元々竜人達は争う事があったとすれば
竜人同士の戦になっていたと思う。
それが魔族やモンスターの流入によって戦の形が変わっていた。
大きな竜人に対して纏わりつく魔族やモンスター。
竜人の数は少ない。それに対して魔族とモンスターは多い。
これは誰の仕業なのか。その時ふと黒刻剣を
見つけた時の事を思い出した。
そうなると首謀者は誰なのか。もしふと頭をよぎった人物なら、
何故こちらに塩を送る様な事をしたのか。
俺は嫌な予感がしていた。元々この世界に来た事でチート能力を得ていた。
そしてそれ以後の出会いによって強化されている。
当初の体力不足も解消され、種族的に人間に括弧ハテナが付く位に。
それは誰の手による物なのか。
そして何のためにそうなったのか。
ロキを止める。それはラグナロクに繋がるのではないのか。
これは考えなければならない。俺はこの世界を滅ぼす為に
救った訳ではない。というか混沌としてきたな。
さてどうしたものか。このまま良いように使われるのも困る。
ロキは最初にエルフの里で逢った時に言った。
俺を頸木から脱出させる手段かもしれないと。
今はまだそんな力は無いが、この戦いを終えたらそれに匹敵する
力を手に入れているかもしれない。
なるべくそれを回避したいところだ。
その為には皆の力を借りないといけない。
改めて考え直すと、一人で来なくて正解だったかもしれないな。
やがで高度が下がる。見えてくるのは大きな家が並ぶ街だ。
あの巨大な竜の座る場所。この大陸を収める竜の住まう地。
……段々高度が下がり地面が近くなる。
ヤバくね?
俺は足がつかない様に折りたたむが、それも限界がある。
手も出ないからよじ登る訳にもいかない。
「ちょっ!誰か助けて!」
上に向かって叫ぶが聞こえてない。
このままだとこの竜が着地して潰される!
相棒、助けて!
……返事がないただの相棒の様だ。
ってボケている場合では無い。
俺は足を着いて走る。速度が速いから足がおっつかない!
「ぬぁああああ!」
地面にダイブしそうになるも、飛び上がって回避。
次の瞬間竜も飛び上がる。ヤッベ!着地する気だ!
迫りくる地面に俺は冷や汗をかく。激突する!
と思った時、俺は空へ投げ出される。
下を見ると、ファニーが釣りをするように俺の縄を跳ね上げたようだ。
そして相棒も鞘と腰から飛び出して縄を切る。
「神の息吹」
俺は黒刻剣を手に取り地面に向かって放つ。
重力を殺しながら着地する。大分魔法の加減も出来てきた。
マジヤバかった。死ぬ一歩手前だ。
「てぃ」
後ろから蹴りを入れられる。地面と顔を合わせる。痛い。
「反省したか?」
「次やったら解ってるわよね」
「ホントマジやるから」
「お祈りをして下さいね」
「今回ばかりは……」
「流石にフォロー出来ないだのよ」
「…ダメ…」
一応許してくれる訳ね。良かったよ。
このままギスギスしたままダンジョンをクリアするのは難しい。
まぁ俺の所為ですけどね、うん。反省します。
「ホントスンマセンしたっ!」
俺は起き上がり頭を下げた。
「旦那、早速ですがアダマス様の所まで行きましょう」
ザルヲイが先導する。
「戦場は良いのか?」
「取り合えずあっしも戻ってきたばかりですから、詳しい話を聞きましょうか」
俺たち一行はそのままあの巨大な竜の元へと移動する。
しかし家が他の大陸と比べてデカイ。
2m以上の扉が殆どだ。ザルヲイクラスの竜は少ない。
皆がっしりした体形で、流石生物の頂点にいる一族である。
それが押されている。簡単に見れば物量で押されている。
黒い竜のいるダンジョンなら地上から見えないように、
魔界への穴をあけられる。黒い竜は勝つ為なら手段を選ばないのか。
どうも見えてこない。この状況はまんま返せば自分にも当てはまる。
それ位は黒い竜も解っているだろうに。
何にしてもダンジョン最下層で待つ黒い竜に、会わなければならない。
そこに何が待つのか。どうも嫌な予感バリバリである。
ともかくこっちの竜の話を聞いたうえで、マジックアイテムの事を詰めて
それからダンジョンへ潜ろう。こちらで足せるものがあれば足して。
補給線はほぼない。失敗は許されない。
「ザルヲイ!待っていたぞ!」
皆でデカイ竜が間近で見える位置まで来ると、
一応門らしきものがありその前にザルヲイより大きな竜が、
門兵として立っていた。
「只今戻りました。してアルブラハ様の様態は!?」
「それはアダマス様より直接お話がある……」
どうやら言い辛いようだ。様態は芳しくないらしい。
ザルヲイが一礼して道が開かれる。
中は城はなく、多くの竜人達が仕事をしていた。
その一番奥に金色の大きな竜が座っている。




