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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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何度も置いていかれたら普通キレる


「何その頭」


 リウの超加速で速度は徐々に増した。だがそれでも街の手前に

 キッチリつける辺り、リウは走る事に関してスペシャリストである。

 たかが人間如きがチートになった所で、職人には敵わないのは

 道理だなぁと思う。

 

「うん、まぁこないだの恵理みたいな髪型になってるな」


 そう言うと席に着いていた女性陣の顔が怖くなる。

 未だに根に持ってるのか。そして恵理は怒っているのか。

 寧ろこれ位の事を言う権利が俺にはあると思うよ。

 

「で、旦那用はお済ですか?」

「こっちは問題無い。各チームはどうかな」

「はっ!こちらは問題ありません。ショウの袋の許容範囲の半分程に一旦収めつつ、持ち運び出来る乾燥食料も確保致しました!」

「は、はい!」


 女性陣のに持ちを考えてそれ位で収めたのは素晴らしい。

 持ち運びできる乾燥食料なら、ある程度の日数持つし。

 

「こっちも良好よ。荷物を分担して担ぐし、糖分確保の為の物も用意したわ」

「うむ。塩分糖分は固形の物もしっかり用意してあるから安心せよ」

「いざという時の為に、救急用具も手に入れてありますわ!」

「ダンジョンマーカー何かもね!」

「私も武具が壊れた時に補修する道具を少々」

「アタシもちょっと値が張ったけど、魔力補強の魔力石っていうのを手に入れてみたわ」


 女性陣もしっかりと用意してくれている。

 別のテーブルに並べられた物を、各人から説明を受けつつ見る。

 今までにない深さのダンジョンだから、皆気合いが入っているのだろう。


「俺は取り合えずなるべく不可思議な物には頼らない様に、多く携帯できる袋を仕入れてきた」


 ビルゴは自分の長所を生かす為に、巨大なリュックだけでは無く

 色々な所に付けて、重さを分散できる袋を多く仕入れてくれた。

 これなら何とかなるな。


「で、ザルヲイは?」


 俺は見ずに尋ねる。


「……申し訳ありません。少し混乱しておりまして」

「そうか」


 俺は敢えてそこではそれ以上聞かない。

 マジックアイテムの有無はまた改めて問う。


「よし、皆ビルゴの用意してくれたリュックと袋に分けて収納してくれ。外にリウを待たせているから、幾つかはリウに。俺は鞍を探してくる」

「コウや、鞍ならここにもあるぞい?」


 オルソン様が声を掛けてくれる。

 うーむ。怖いなぁ何を要求されるのかしら。


「餞別だから気にするな」


 俺の耳元で囁くオルソン様。怖いよー、怖すぎるよー。

 だがオルソン様の鞍ってことは色々考えると違う意味でも怖い。

 主神の鞍って。超絶レアアイテムじゃないっすか。


「何か説明ありますか?」

「何も」

 

 とても素敵な笑顔で見つめていらっしゃる。

 やはり怖い。主神怖い。

 ただ大きな介在は無いだろうから、重量カットとかそういう利便性を

 追求したものだろう。ここで先の無い話をしても仕方ない。


「有り難く餞別として頂きます」

「ほっほっほっ」


 笑いながら下がっていく主神怖い……。

 

「リウってアンタあれ連れて来たの?」

「勿論。今回は文字通り総力戦だ。ビッドの行方が知れたら力を借りたかったんだが」

「あれは今恐らくドラフト族の村に居ると思う」

「そうか。相変わらず真面目だなぁ」

「お前も以前は似たようなもんだろう」

「確かに」


 ビッドにも何時か突きぬける時が来る。

 俺はおっさんの上に引きこもりだったから、突きぬけるまで地獄を見た。

 ビッドもビッドの地獄を見るだろう。

 それが血に塗れるのかどうか。闇落ちしないと良いけど。


「まぁ何れ会うさ。男性陣も準備しますかね」

「いや座ってて?邪魔だから」

「そうですね。ショウ、袋を」

「はっはい」


 アリスに連行されて席に着かされ、ショウはカグラに袋を強奪された。

 俺達は呆然とする。が、そのまま座っておく事にした。

 気にいる気にいらないの話になると、後が大変である。

 長期旅行に失敗するパターンである。

 極力怒りを買わない様にするのが策である。あれは理屈じゃないのである。


「はいおまたせー!いつでも行けるわよ!」


 暫くオルソン様に出してもらったお茶を楽しんでいると、

 勢い良く恵理が纏わりついて来た。御茶こぼれる。

 行ったり来たりカップの中でするお茶をコントロールしつつ、


「御苦労さん、じゃあ行きますか」


 と返事をして飲み干す。が、動かない。


「おいどいてくれおい」

「んー?」


 痛い。何か頭の上に顎乗せられておる。


「いやどいてくれませんかねぇ?忙しいんすけど」

「あー?」


 お茶は飲み干して正解である。前後に揺らされている。

 こういうノリは是非お子達にしてもらえませんかね。

 ……あー、よく考えたら恵理もお子ちゃまか。

 

「どらぁー!」


 何か某有名番組の主役の名前的な凄い雄叫びが聞こえたと思ったら、

 俺は前後の揺れから景色が、横に動きカウンターの壁に顔を打ち付けた。

 

「貴様最早ゆるせん!」

「何でアンタの許可が居る訳!?」


 始まった。始まったよこれ。何してんのこれ。

 俺は壁に手をつき態勢を立て直して、女性陣の乱闘の脇を通って

 荷物を確保する。そして乱闘の合間を縫って其々に適当に背負わせる。

 リムンとハクは小さめの物を。野郎共は重そうなものを。

 そしてオルソン様から鞍を受け取ると、外のリウに掛けて空いてる袋を

 二つ両脇にセットする。


「はいはい皆行くよー?来ない人は置いて行きまーす」


 普通の声で中に声を掛ける。静かである。マジで置いてくのである。

 俺はリウを引いて街を出る。こんな事もあろうかと、実はショウの袋を

 俺はゲットしてある。人も多いしこのまま行くのも悪くないのである。

 

「あれ!?兄さんたちは!?」


 街から少し離れた所で、ザルヲイの弟が竜と共に待っていた。


「ああ急用だ。俺だけで先行する事になったから宜しく!」

「宜しくって旦那……」

「良いから早く行こうぜ?アルブラハさんが心配だ!」


 明らかに不審な目をしている。それに対して俺は親指を立てて答える。

 

「いやそんなもんで解決できないっすよ」

「堅いなぁ良いじゃないか。この英雄たる俺さえいれば、万事解決間違いなし!」

「旦那明らかに無理してますよね?恥ずかしさを振り払うように元気いっぱいに言っても無駄ですよ耳赤いんで」


 俺はそう言われると親指を下げた。うわ恥かし!

 それにしてもコイツ中々良いツッコミ性能してやがる!


「……でもまぁ旦那の言う事も一理あるか。急がないといけないのは事実ですし、旦那だけ連れて先に行きましょうか」


 おおチョロイ。ならこのまま行っちゃおう!


 ―――何処行くの?―――


 俺の両肩と頭、そして両足に腰がホールドされておる。

 振りむきたくない。凄く振りむきたくない。

 

 ―――ねぇ何処に行くの?また一人で―――


 可笑しいな。前回は二人ほど連れて行ってるから一人では無い。

 一人では無いんだが。てかいつの間にか首を掴まれてるぅ!?


 ―――ねぇ聞いてる?―――


 返事できない状態でどうしろと?

 暫く黙っていると、物凄い力で後ろへ向かせようと頭と体を動かされる。

 向きたくない!向きたくない!怖い!怖い怖い!


 ―――ねぇ―――


 振り向くとそこには


 白目をむきながら


 口が裂けんばかりに微笑む



 沢山の鬼がいた。

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