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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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更なるジョーカー


「つあっ!」


 何とか暴れてホールドされた腕が緩んだ所に、俺はブリッジする態勢で

 相棒を突き立て地面との直撃を避ける。モンクなので武術はお手の物か。

 態勢を立て直そうとするが、ブリッジしながら見えたのは

 振り下ろされるハンマー。

 横へ転がりながら避けつつ起き上がる。

 しかし隙の無い連携で詰められる。地面に穴が出来る。

 フルパワーである。粉砕しに来たである。死ぬである。


「くあっ!」


 肩膝をつきながら相棒を交差させつつ、何とか受けとめるがキツイ!

 パワーだけならファニーに匹敵するんじゃないかこれ!

 黒刻剣ダークルーンソードの剣身の腹を蹴り、ハンマーを弾く。

 ウーナは回転して一撃を放ってくる。受け止めたら動きを止められる。

 俺は大きく飛び退く。ただ避けただけでは地面を粉砕した破片で動きを制限される。

 まったくもって困ったもんだ。皆パーティとして機能させる為に、

 必要最低限の行動に徹して抑えていたんだろう。

 なるほどね。それを解らんとはなんと甲斐の無いおっさんだと。

 でキレてらっしゃると。解るわ―。気迫のこもった顔してらっしゃるもの。

 鬼の形相に近いもの。ハンマーの空を切る音が半端ないもの!


「はぁっ!」

 

 このまま行くとここは穴ぼこだらけになる。

 しかしウーナはスタミナもこの中ではある方だ。

 特殊能力は法術のみだけど、人の枠に入っているのか微妙である。

 パーティとしては後方を任せる事になるが、

 ウーナ的には劣らないと言う所を見せたかったのだろう。

 

「なるほど。ウーナが殿を務めてくれれば安心だ。今度は俺と共に後方を頼む」


 俺はそう告げて相棒達を交差させてハンマーを受けとめる。

 気も魔力も使わずに人としての力で受けとめる。

 それこそがウーナにとって相応しい答えになると思う。


「流石コウ様。私がお慕いしているだけありますわ。今後もお傍を離れません」

「期待にこたえられるよう頑張るよ」


 ハンマーを仕舞い笑顔で頭を下げたウーナに、俺も同じようにしてこたえる。

 

「では次は私とお願いします」


 Oh……マジで休みなしなのね。

 振り返るとそこにはプレシレーネが居る。

 魔族の鍛冶師。師匠をエルフの里のエドベによって殺され、

 その仇を討つ為に同行してきた。それが思いのほか長い付き合いになる。

 イリアもブルームも其々の役割を果たしている。

 プレシレーネも鍛冶屋があるのに付き合ってくれて有り難い。


「ああ。プレシレーネには世話を掛ける」


 俺は相棒を抜いて構える。それを見て直ぐにプレシレーネは何か尖ったものを、

 こちらに向かって投げてきた。俺は魔力を通した相棒で叩き落とす。

 すると次の瞬間、剣山のように見えるほど辺りを覆う尖ったものが

 俺に向かって飛んでくる。ただ慌てる事も無い。

 狙いが俺だけなら集中して来るので、待っていてそれを吹き飛ばす。

 俺を逃がさない為なら、広範囲に及ぶ為最低限のものを叩き落とす。

 

 ―危険―


 俺は直ぐ様相棒を振り薙ぐ。返しで更に薙ぎ続ける。

 あっぶな!これただ重力を足して落てくるだけじゃない。

 何か魔術が掛かっているな。リードルシュさんと同じく魔術を入れて、

 鍛冶制作物の強化をしているのかもしれない。

 プレシレーネの方が本家魔族だけあって魔術の力が強い。

 リードルシュさんの方はエルフなので、魔術に精霊の力が混ざり合っている。

 その御蔭で絶妙なバランスで他にない強度を保っているのだろう。

 思えば俺の相棒は一振りは、女神の気紛れとリードルシュさんの魂の籠ったもの、

 もう一振りはプレシレーネの師匠が作ったものだ。

 

「はぁっ!」


 プレシレーネも魔族として身体能力を、遺憾無く発揮して来る。

 全てにおいて高い水準を誇る。そして何より女性特有の身軽さが、

 得物の数的不利を補っていた。俺が早さで押しきれないとは。

 ギアを一段上に入れよう。プレシレーネもやっぱりトンデモである。

 俺は重なり合う瞬間に力を集中して込める。

 プレシレーネの持っている剣は強くはあるが、

 俺の相棒でありプレシレーネの師匠が作った遺剣には強度的に勝てない。

 ガキガキと削り合う中で、プレシレーネも剣に魔術を掛けているが、

 俺は魔法を定着させている。魔術のコーティングでは防ぎきれない。

 キーーン!という音と共に宙に舞うプレシレーネの剣の剣身。

 同じ所を集中的に力を入れて折ったのだ。


「プレシレーネ。そろそろ本気を出しても良いぞ」


 俺は促す。プレシレーネの鍛冶に対する拘りは解る。

 師匠から受け継いだものを護りたいと言う事と同時に、

 魔界から抜け出して人に紛れて鍛錬してきたのだから。

 剣に魔術を定着させると言うのは、高等技術である。

 ロリーナ以上にしっかり定着していた。

 出なければ名剣とは言い難いそれが、俺の相棒と魔力を纏ったものに

 あれだけ耐えられる訳がない。


「いえ。私は鍛冶屋です。皆から受け継いだものを次の世代に託すのが私の悲願。その為にももっと腕を磨かねばならない。貴方と共に。私はそう決めたのです」


 どうやらこれ以上はやらないと言う事みたいだ。

 決意表明をしたかったのかもしれない。


「そうか。俺と一緒に来てくれるからには、鍛冶屋としての腕もそうだけどそれ以外も期待させてもらう」

「ええ。御傍を離れません。何なりと」

「じゃあ早速だけど後で俺の相棒のチェックを頼むよ。ゴルド大陸に行く前に」

「お任せ下さいコウ殿」


 俺は清々しい気持ちでいた。

 うんうんとか頷いていた。

 そう言えば誰か忘れていると気付くのが遅れた。


「やっぱり正妻が締めでしょ?」


 俺は直ぐに地面に相棒を指す。

 崩れる地面。その崩れて行く岩を足場に、何とか落ちるのを免れた。

 しかしアリスの魔術を久しぶりに見た。

 アイゼンリウトで初めて対峙して以来か。


「魔姫血界」

「まぁこれは改良版みたいなものよ」

「昼間でも関係なく能力を発揮できるんだから、前とは違うってことだな」

「勿論よ。上司にもなるべく貴方の成長を邪魔しない様に言われてたからね。後は私の判断だけど」

「アリスの判断とは何かな」

「師父の教えでもあるわ。切り札を見せる前に、切り札のようなものを見せよってね。コウも解っていたと思うけど、ファニーも私も奥の手がある。それを出す時は更に用意してからよ」

「これが出るって事は更なる奥の手があるってことだな」

「そう言う事ね。何も貴方だけが師父達に鍛えられたのでは無くてよ?ファニーは相変わらずポンコツだけど」

 

 また煽る。だがアリスからはそれだけの余裕を感じる。

 ここに居る者の中に俺の力を見て敗北感を感じている者はいない。

 困った奴らである。皆カードを隠し持っている。

 俺はアリスとの鍛錬にカードを出すべきか迷っていた。

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