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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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魔力鍛錬


「大丈夫?」


 俺は気付くと皆に囲まれていた。

 どう言う事だ?

 さっきヘラクルスさんと戦っていたのに。一瞬にして皆が現れた。

 足早に去ったとはいえ、ヘラクルスさんの気配もしない。

 

「皆何時からここに?」

「コウがボーっとしているようだから見に来たのだ」


 ボーっとしていた?

 

「皆の所に何かとんでこなかった?」

「別に何も飛んで来てないけどどうしたの?」


 アリスは首をかしげる。

 おっと……。

 俺の記憶が途切れた訳ではない。

 寧ろ途切れたのはヘラクルスさんと会っていた、いやその前後からだ。

 違和感を感じたのは、ヘラクルスさんが本来の力を解放したからだろう。

 神域ってことなのだろうか。

 ひょっとすると俺の力はまだ安定していないから、皆に向かって放っていれば

 死人が出ていたかもしれない。

 加減が出来るような状態では無い。

 なるほど迂闊だった。

 相棒、もしかしてそれを知って実行したのか?


 ―何らかの力は働いていた―


 ――だからこその鍛錬だ――


 なるほどね。それは解り易い。だけど出来れば今度から事前に教えて欲しい。

 心臓に悪いわこれは。思い返すだけでゾッとした。

 

 ―だが明確に課題が見えたな―


 ――出力を増やしつつコントロールを――


 だな。こんな危なっかしい技を狭い洞窟でぶちかました日には、

 探索どころの騒ぎじゃない。

 しかし日程的に間に合うのかねこれは。

 ある程度使えるようにしないとな。


「恵理は居るか?」

「あいよ」

「悪いが少し付き合ってくれ」

「オッケー」


 恵理の魔力は俺よりも高い。恵理が安定して武器に魔力を通せば、

 その場合どうやっても魔力で防ぐより他ない。この中では適任だ。


「そっかーしょうがないね!……で済むか!」

「そうよ!一人だけなんて依怙贔屓だわ!」

「そうだそうだ横暴だ!」

「皆バイバーイ!」


 非難の声を遮り恵理は鎌を取り出すと空を切る。

 すると俺と恵理の周りがガラスのように崩れて行く。

 そして現れる闇。


「恵理、お前これを何処で」

「さっき。ロキがやったのを見て出来ないかなと思って」

「簡単に言うな。これ結界だろ」

「そう。凄いでしょ?アタシ天才でしょ」

「そうね凄いね」


 ニコニコしながら頭を突き出して来たので撫でる。

 少し撫でて止めようとしたが、更に頭を突き出してくるので

 気が済むまで撫でた。

 結界自体はリムンと仲が良かったから何となく理解があったのだろう。

 だからってこんなあっさり出来ても困るが。

 俺もリューとの戦いで結界自体は理解しているが、

 生成出来る気がしない。

 この結界は世界と世界の隙間に間借りする空間。

 それだけに莫大な魔力と魔力自体の質も問われる筈だ。

 なるほど、俺だけがチートでは無かったのな。

 

「で何すんの?イチャチャするの?」

「するか!魔法の鍛錬するの!」


 ニヤニヤしてやがる。おっさんからかって楽しんでやがる。

 俺は取り合えず相棒達に魔力だけを通す。

 恵理も鎌を構える。青白い魔力が通る。

 恵理が振るう鎌を相棒達で受ける。

 前よりもシャープになっている上に魔力が質が高く、

 受けるだけでもかなり魔力を削られる。

 だが良い感じだ。俺の魔力が切れる感じは無い。

 更に俺は魔力を通す為に、再度視界をずらし頭に力を入れて元に戻す。

 成功はしたが相棒達が何時もより重い。

 これは魔力を増したためなのか、後遺症で腕に力が入らないのか。

 恵理自身では無く鎌を狙って剣撃を繰り出す。


「ちょっ!」


 魔力はまだ恵理の方が強いが、恵理は鎌のコントロールを失って酔っぱらう。

 力が抜けているのが功を奏してダメージが上がったようだ。

 自分が持つ力と魔力による攻撃は別と言う事か。

 俺は一旦下がって恵理が態勢を立て直すのを待つ。

 恵理の顔が真剣になる。

 何時もの眼とは違い、若干黒眼に青白いコンタクトをつけたようになっていた。

 恵理は負けず嫌いだからなぁ。

 俺は微笑みながら間合いを詰める。

 恵理は鎌の間合いに俺が入ると、軽く俺の相棒を弾く。

 そして振り子のように戻す勢いで、俺の胴を目掛けて薙いでくる。

 俺はそれを弾かれた流れで後ろに下がった。

 恵理は一回転して鎌を叩きつけてくる。

 これは受ける。魔力を引き出すためには受けとめなければならない。

 だが字面以上にキツイ。腕が持っていかれそうになる。

 力で受けとめても貫通して来る。

 マジックアイテムであれば、こういう所はカット出来るのだろうか。

 後でザルヲイにマジックアイテムの基本的な所を聞いてみよう。

 俺は恵理の攻撃を受けながら考える。


「大丈夫?」


 恵理は鎌を振り上げた所で攻撃の手を止める。

 俺は息を切らせつつ相棒を見る。

 魔力が切れている。

 ただ通すだけで定着していない。

 質力を増やせても、しっかり定着しないのでは意味がない。

 

「大丈夫だ。慣れる為には仕方がない」

「あんまり無理しないように」


 恵理は微笑んで距離を取る。

 そして鎌の柄を地面に着き待機している。

 恵理に気を遣わせているな。でもそう言う事も出来る娘になったんだと感心もした。

 リムンが懐くのも解る気がする。根性が悪いと思ったのは訂正しなくては。

 俺は息を整えつつ目を閉じ相棒をしまうと、手を開いたり閉じたりした。

 体力的な問題では無い。芯が疲れる感じだ。力を抜いてリラックスして。

 自分に言い聞かせるように念じて回復を図る。

 丹田に意識を集中して呼吸を整え、頭は空にして全てを解き放つイメージ。

 少しずつ頭の痛みも芯の疲れも軽くなる。

 

「お待たせ。再開しよう」

「オッケー!」


 こうして俺と恵理はその後も剣撃を交わし合う。

 定着率は上がったものの、恵理の魔力の質が高過ぎたので鍛錬はお開きにした。

 魔力的に俺はまだまだ恵理には及ばないらしい。

 それを恵理に言うと、凄くうれしそうな顔をして俺の肩を抱きながら


「チミも頑張りたまえよ!」

 

 と言って体を揺すられた。前言撤回である。コイツ根性悪い。

 恵理の手により元の場所へと戻るが、そこには鬼が一杯いたのだった。

 


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