ひねくれものと朝の騒動
夜空を見上げながら、俺と恵理は街へ帰る。
ロキはあの結界と共に姿を消した。
ホントアイツには振りまわされる。
恵理をおぶりながら、
ギルドへと辿り着く。
オルソン様が迎えてくれた。
傷を見てくれたが、
魔力で斬られた傷なので
そう簡単に治らないらしい。
血だけ止めてもらい、
恵理を女性陣の寝室に潜り込ませ
自分の部屋で鎧を脱いでベッドに入る。
ホント疲れた。
もう何も出ない。
ここまで辿り着いた自分を褒めてあげたい。
そして直ぐに眠りに落ちる。
出来れば自然に起きたいと願いながら……。
「ぐはっ!?」
俺の中では一瞬である。
何かが纏わりついてとかならまだ抵抗は出来る。
だが明らかに重量があるものを、
鳩尾を中心に投げつけられた。
しかも2つ。
そら目を開けるでしょ。
凄い痛いって!
目を開けるが体が起こせない。
「なん!?」
頑張って顔を起こすと、
お子達が寝巻のまま転がっておる。
てかどう考えても自分の意思で
飛び込んできたようには見えない。
こんな事態でもお子達は寝ておるし!
「ちょっ!?リムン、ハク起きろ!起きろって!」
俺は何とかお子達をどけようとする。
しかし小さい足が俺の顎をとらえたり、
急所を蹴られたりと想像以上に寝相が悪い。
女性陣部屋マジ怖い。
戦争でも起きてんのか毎日。
そう言えば上品に寝そうな人間は少ない気がする。
ギルドも広くは無いから、
一人ベッド一つとは行かないだろう。
てかそんな事言ってる場合じゃない。
重いし痛いしどかすのが第一だ。
何とか足を掴んで持ち上げようにも、
暴れるお子達。
ホントこえー。
起きてる時より凶暴って何なん!?
「お前らマジで起きろって!重いんだから!」
俺の声に眉をひそめ、
丸まり始めるお子達。
……籠城か。籠城なのか。
いやちょっと待て。
そもそもこの怪獣達がここに居るのは
誰かの仕業だろ!
俺は先ず右に首を傾け確認。
よし、誰も居ない。
次は左だ。
「いっ!?」
向いた瞬間に何か飛んできた。
目の前が暗くなる。
しかも鼻ツーンてなってるし。
昨日の今日で疲れてるのに。
「何なんだ一体!」
俺は手で顔に飛んできたものをどけると、
そこには恵理が居た。
酷い顔である。
特に髪の毛が酷い。
ボサボサというか静電気を頭に当てたような、
エライ有様になっている。
ほほぅ寝ぼけている訳ですねこれは。
「恵理、ここはお前達の部屋じゃないし、お子達の隔離部屋でもない。ここはおっさんのマイルー」
熱弁を振るっている所を無視して布団に入ってくる。
ぐいぐい押されて布団の端に追いやられる!
「おまっ!聞いてんのか」
「んー!」
邪魔と言わんばかりに押される。
「落ちるっておい!」
ギリギリの所で踏みとどまる。
ていうか身動きが取れない。
恵理は背中にピッタリくっついてるし、
お子達が俺の体を枕に完全に寝ている。
何の悪戯だこれは。
眠れる訳がない……。
だが意地でも寝る。
今が朝か夜か知らんが、
まだ少しくらいなら寝れる筈。
頑張れ俺!
「んー」
うとうとした所に、
お子1が寝がえりをうち俺の膝横を強打。
どけようとするも恵理とお子2によって、
身動きが取れない。
まぁ一回位はあるだろう。
しょうがない。
俺はめげずにもう一度寝に入る。
「んん」
お子2が俺の脇腹に頭をぐりぐりする。
座りが悪いのだろう。
当り前である。
俺は枕では無い。
この世界に来たばかりの頃なら、
ぜい肉も一杯あったと思うが、
今は無い。
硬い枕状態である。
柔らかくなる事がある訳ない。
痛い痛い痛い!
何とかどけようとするも、
手が届かない。
ある程度もがくが無駄な抵抗である。
こいつらの近くでは絶対に寝ない!
俺はイライラしつつももう一度寝に入った。
「ありがと」
背中から何か聞こえた。
「ああ」
全く。
何かあるとは思ったが、
それを言う為にこんな事をしたのか。
捻くれ者だなぁ。
俺は微笑みながら再び寝る努力をする。
「何してんだコラァアアア!」
またしても一瞬である。
俺寝不足で倒れるんじゃね?
しかもその絶叫の次に目に入ったのは、
こちらに向かって鳥人間コンテストヨロシク
飛び込んできた影である。
ああ。
またか。
ドン!という音と共に、
俺の体はベッドでバウンドする。
咽ながらお子達を確認するが、
ベッドには俺しか居ない。
何これ。
「おいちょっ待て!」
「だぁああああ!」
最初に俺にボディプレスをして来たのが
誰だか解らないうちに、
最初のがどいて次が飛んできた。
何時から俺はアトラクションになったのか。
「ガフッ!」
俺は再度バウンドする。
そしてそれがどく。
「でやぁああああ!」
逃げる隙もない。
何これ。
マジで何してんのコイツら!
「ふざけんなコ」
言葉すら無理。
ドス!っと叩きつけられ、
次何か言おうとする隙もなく
俺はベッドに叩きつけられる。
何回か繰り返される中で、
俺は見たのだ。
その中に恵理とリムン、ハクまで混じっているのを。
その上王女まで居やがる。
ホントふざけんなよ。
誰の所為でこんな目に遭ってると思ってんだ!
抗おうとすればするほど、
隙が段々無くなってくる。
微かに聞こえてくるのは、
キャッキャした女性陣の声である。
そら十分寝たら元気よね。
朝飯前って事よね。
こうして向こうが飽きるまでこれは繰り返された。
子供の集団なので飽きるまで時間掛かり過ぎ。
一時間位やられてぐったりしたっつーの!
飽きた女性陣に放置された俺は、
寝たと言うか気を失ったのだった。




