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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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理想主義者と現実との付き合い方

 カグラ王女が幼いながらも、

 キチンと先を見据えているのは解った。

 そこに嘘は無いだろう。

 問題は民だ。

 民が国を変えたい、

 変わって欲しいと願っているか。

 俺にとっては王女とショウの考えよりも、

 そちらが気になる。

「カグラ様、お聞きしたいのですが、民はどう思っていますか?」

「コウ殿、カグラとお呼び下さい。民ですが、先にお話ししたように、戦に次ぐ戦、減り続ける仲間を見て疲弊しております。変わる事を願っていますが、立ち上がる余裕がありません」

「私がカグラさんの国に行ったとして、私はどの兵を率いれば良いのでしょうか」

「それは……」

 俯くカグラ王女。

 民の疲弊を目の当たりにして、

 動かざるを得なかったのは、

 良い王族なのだと思う。

 しかし現実として率いる兵が無ければ、

 それは国を平定し治める事は出来ない。

 現王朝に対して支持が多ければ、

 例え打倒した所で元に戻るだけ。

 そんな徒労に仲間を付き合わせる訳にはいかない。

「ショウ、お前の考えはどうか」

「はい。コウ殿のおっしゃる事は御尤もです。私達としては、都合の良い話ではありますがこの状況を打開する為に、貴方のお力をお貸し願いたいのです」

「ショウの考えは?」

 王女の横に行き答えたショウは、

 俺に問いなおされて言い辛そうにしている。

 これは困った事になった。

 革命に燃える正義の使徒って感じだな。

 ショウが感想を聞きたいと言ったのは、

 こういう事だったのか。

 理想は良いが地から足が離れている。

 ショウはそれを承知で、

 俺に頼んできたのか。

 俺が教師役ねぇ……。

 師父みたいな役割をする前に、

 教えてもらいたい事が山ほどあるんだよなぁ。

 俺は溜息を吐いて姿勢を崩す。

 足を組んでその上に肘を置き、

 頬杖をつく。

 端的に回答を言うなら現実を見せろってことね。

 その為にプライドを曲げてでも、

 俺と一緒にダンジョンへ潜りたかったのな。

「解った。受け合おう」

「え!?本当ですか!?」

「いや違う。ショウ、お前の依頼を受ける。ただ俺のやり方でやるが構わんか?」

「先にお伝えしました。忠を尽くすと。姫への忠誠は捨てませんが、貴方に命懸けでお仕えいたします」

「……解った。お前達二人とも才を絞り尽くすからな。覚悟しておけ」

「心得ております。姫ともども死んだつもりでお仕えいたします」

「え?ショウ、コウ殿、何の話ですか?」

「兎に角二人とも、遅いから俺達の所へ行くぞ」

「はい。支度は済んでおります」

「良い手際だ。決めたら即行動は大事だぞ?経験上。では二人とも行くぞ!」

「はい!お供させて頂きます!」

 もうコントのノリである。

 王女は永遠と、え?え?と脇で言い続け、

 ショウは直立不動で答え、

 脇から大きな風呂敷を取り出して

 あっという間に準備を完成させた。

 そして俺は立ち上がり部屋を出る。

「ショウ、代金は」

「はい!先払い済みです!」

「宜しい!引き上げるぞ!」

「はい!」

 王女は結局ギルドに着くまで、

 状況を把握していない。

 ヤバイボケ要因の可能性が浮上した。

 ツッコミ成分が不足しているのに。

「皆集合!」

 丸いテーブルを囲んで食事を取ってる。

 良いなぁお腹すいたよぐぐぅ。

 なーんて言ってる場合では無い。

 皆は食事の手を止めて俺を見ていた。

「皆さん、こちらのテーブルへお越しください」

 ショウは止まっている仲間に、

 俺の近くのテーブルへ移動するよう促すべく、

 近付いて行った。

 良い試練である。

 もまれるべきなのである。

 俺に仕えると言った以上、

 女性が多い集団での女性の扱い方を

 いっぺん身をもって知るべきである。

 先輩引きこもりからの試練第一である。

「は?何アンタ」

「小僧もう一度申してみよ」

「貴方様はどなたですの?」

「君態度悪いね」

「貴方は初対面に近い人間に命令するのですか?」

 予想通りである。

 そしてたじろぐショウ。

 俺に助けを求めているが、

 その程度でめげてはダメなのである。

「あ、あの皆さん、コウ殿が呼んでおられます」

「だから?」

 凄まれたのである。

 アリスは忘れがちではあるが魔族である。

 カグラ王女はそういう顔しそうにないもんな。

 ビックリするよな。

 怖い人達顔負けの顔だもんな。

「え、えっとその……」

「お主何が言いたいのだ。我らは食事中だ。後にせよ」

 ファニーは竜だからね。

 瞳孔違うからビックリするよね。

 蛇に睨まれたカエルになるよね。

 半泣きのショウが俺を見る。

 ギブアップ早い。

 引きこもりらしい。

 俺は涙がこぼれた。

「あ、皆遅れてごめんね」

 俺はさっきまでの態度とは一変して、

 頭を掻きながら笑顔で近付く。

「コウ様御帰りなさいませ」

「コウ殿、申し訳ない先に御食事を」

「おっちゃん御帰り!」

「……御帰りなさい」

「アンタ遅いわよ!」

「すまぬが先に食べておる」

「コウ御帰り!僕の方が早かったね!」


 皆はそう言った後、

 俺と残り二名が座れるように場所を開けてくれた。

「さ、二人とも掛けて掛けて」

 俺は促して二人を座らせる。

 疲労が顔に出るショウ。

 頭の上だけじゃなく、

 目にまでハテナマークのカグラ王女。

「えっと先に紹介したいんだけど、こっちがショウ。こっちがカグラ。二人とも皆にご挨拶」

「よ、宜しくご指導のほど宜しくお願い致します」

「あ、え?よ、宜しくお願いします」

 それを聞くと、皆はよろしくー!と、

 元気良く挨拶してくれた。

 有り難い有り難い。

「で、明日からこの二人も仲間に加わる事になったんだ」

「まぁコウが加えたいなら良いけど」

「うむ。ある程度であれば我らが面倒を見よう」

「そう言う訳にはいかない。今度のダンジョンは地下深くまで潜る。水や食料の面でも、飢えないとは約束できない。そんな状況で誰かがお荷物になれば、パーティは決壊する」

 俺が真面目に言うと、

 皆再開した食事の手を再び止める。

 それを見てショウは唾を飲む。

「ではコウとしてはその二人は何らかの役に立つと言うのだな?」

「流石ファニー!今日俺が一日この眼帯のショウとダンジョンに潜ったんだけど、彼は罠や宝物を見抜く力がある。そして経済の流通にも明る。更に便利な道具もある。な?」

「は、はひ!わ、我が一族に伝わる袋なのですが、こ、これにはある程度多くのものを入れる事が出来ます」

 緊張しすぎな上に最後の方妙な英訳みたいになっている。

 俺は落ち着かせるように背中を擦る。

 顔色が悪い。

「それは凄い人物ですね!しかしコウ殿を襲ったのでは?」

「ああプレシレーネの言う通りなんだが、ダンジョンで解り合った。な?」

「はっはい!粉骨砕身お仕えする所存であります!」

「何処をどう打ったらこんなに人が変わるのよ」

「まぁまぁアリス。男同士には殴り合って解り合う事もあるのさ。なぁ?」

「な、殴るなんてめ、めっそうもありましぇん!」

 えぇ……。

 あれ最初に登場した時と違う。

 初めて家に連れてこられた

 子犬みたいな状態になってる。

 王女は目が点状態だし。

 今まで全てを敵視し、

 王女を護ってきたから、

 突っかかるしか術を知らなかったのか。

 ……俺じゃ無かったら死んでるだろこれ。

「……コウ様、洗脳はあまりお勧めしませんが」

 えぇ……。

 洗脳してこの有様なら大失敗だよ!

 どうしようかなこれ。

 何か白い目で俺が見られてるし!

「あー、えー、皆取り合えず落ち着いて。二人はちょっと特殊な事情でひきこもってて」

「なるほど類は友を呼ぶのか」

 ファニー今そのツッコミは要らない。

 そして何笑ってんだショウとカグラ。

 お前らに笑われたくないんだけど!

「まぁ人として問題はありそうだけど、そっちは役に立ちそうね。それで、その娘は?」

「カグラは何が出来るかな」

 俺が振るとカグラは、

 目をかっぴらいて俺を見た。

 えぇ!?みたいな顔されても困るんだけど。

 おいマジでこいつら国の未来を思って、

 反乱起こそうとしてたんか?

 頭痛しかしない。

「えーっとカグラは明日確かめます」

「……アンタねぇそんな解らないものを抱え込むのはダメって言ってなかった?」

「うん言った」

 フルーツが飛んできた。

 俺の顔面ではじけ飛ぶフルーツ。

 よく俺の顔面は無事だな。

 そしてイラつくのが脇の二人だ。

 誰の所為でこんな事になってると思ってるんだ。

「まぁ明日試してダメなら連れていかないから」

「なら頼むぞ?我らはただでさえ時間がないのだ」

「ていうかファニーとアリスは何すんの?」

「私達もほら、あれよね?」

「そ、そうだの。あれだ」

 絶っっ対何も無いだろ。

「お前らもサボってたらカグラと一緒に居残り」

「ちょっ!?何で私達まで!?」

「馬鹿者!我がいなくてお前が成り立つか!」

 この後ファニーとアリスの異種格闘技戦が始まる。

 疲れたので解説しないが、

 熱い戦いを繰り広げた。

 そのままカグラは女性陣に連行されて、

 一緒に布団に入った。

 助けを求める視線を投げてきたがシラネ。

 残る一人は取り合えずオルソン様に、

 空いてる部屋を借りて押し込んだ。

 俺の世話をしようとしてきたので。

 こうして何とも疲れた一日が終わる。

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