表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

187/570

巨人族の末裔


「旦那、止まってくれ」

 ショウとダンジョン探索していると、

 非常にサクサク進む。

 足を止めた後、

 ショウは石を掴んで転がす。

 すると次の瞬間、

 天井が崩落してきて道に穴が開く。

 こんな感じでトラップも難なくクリア。

 ショウに取り合えず殿呼びを止めて貰う。

 様だとか殿だとか言われるのは、

 どうも居心地が悪い。

 旦那もどうかと思うが、まだマシである。

「さて順調に進んでるが、ここ何回だ?」

「そうだな。7階に差し掛かっている」

「このダンジョン意外に深いんだな」

「後13階はあると見て良いだろう」

「え、そんな深いなら出直すか?」

「そうだな……。後を考えるなら出直すのが正解だろうと思う」

「よしなら撤退だ。行こうショウ」

「了解」

 俺は踵を返して来た道を戻る。

 ショウが粗方解除してくれたので、

 戻る道は問題無い。

 魔物も下って来る様子は無いし、

 結局7回まで潜ってあったのは金だけだった。

 中々に渋いダンジョンである。

「まぁそんなに入り組んでいる訳でもなく、慣れている者にとっては潜り易い所の様だから、宝は深い所にあるかどうかだろう」

「まぁそうだよな。次に期待しよう」

 難なく俺達はダンジョンを出る。

 外は真っ暗である。

「さぁ疲れたから帰るべ」

 俺は背伸びをしながら疲れを取る。

 狭くは無いがそれでも広いとは言えないダンジョン。

 圧迫感があったのだろう。

 天井がない空は解放感で一杯だ。

「旦那、少し付き合っちゃ貰えないか?」

「ああ構わんけど何処に?」

 俺は肩を回した後、

 屈伸したり足を横に伸ばしつつ答える。

 それを見てショウは苦笑いをした。

 ストレッチは大事だと思うんだが。

「会って頂きたい方がいるんだ」

「おう。なら遅くなると先方も良い気はしないだろうから急ぐか」

「誰かは聞かないのか?」

「別に。向こうに着く前には説明してくれるだろう?」

 俺はストレッチを継続しつつ答える。

 そしてショウまた苦笑い。

 何か変な事を言っただろうか。

「どうした?」

「いや何。普通はもっと警戒すると思ったんだが」

「今まで色々な難物に会ってきたからなぁ。俺としてはその人達より難物は居ないと思っているのもある」

「旦那も苦労している訳だ」

「ショウほどではないと思うけど」

 ショウは前を向き歩き出した。

 俺はストレッチを終え、

 ゆっくりと後に続く。

「旦那に会ってもらうのは、俺達の国の王女だ」

「そうか」

「どんな人物であるかは、是非会った後に旦那の感想を聞かせて欲しい」

「解った」


 振り向かずにそう告げたショウに対して、

 俺は短く答えた。

 察するにその王女は非力なのだろう。

 力と言っても武力だけでは無い。

 国を治める為の力が足りない。

 それを俺に知らせる事で、

 ショウは俺に託したいのだろう。

 ただ安請け合いだけは出来ない。

 ショウ一人の考えでしかないなら、

 危険を冒せない。

 国全ての人々が国が変わるべきだと思い、

 行動しかけているかどうか。

 ショウがその先鋒であると考えたいが。

 俺は黙って後ろを歩く。

 後ろから見るショウの背中は、

 何処か落ち込んでいるようにすら見える。

 王女か……。

 それに繋ぎを付けられる時点で、

 ショウは所縁の者か。

 兄弟でないなら幼馴染か従者。

 何にしても残酷な答えにしかならない事は、

 ショウが一番良く分かっている筈だ。

 それでも尚、か。

 俺とショウは街へ戻る。

 そして城の方へ向かって人波を掻き分けていく。

 ホント良く混むなぁ。

 流石首都。

 暫くして城が近付くと、

 城には入らず外の塀をなぞる様に歩く。

「旦那、ここです」

 案内されたのはとても要人が要るとは思えない、

 うらぶれた二階建ての建物だった。

 ショウの顔を見るが、

 背中だけでなく泣きそうである。

 俺は黙って頷く。

 そして中へと案内される。

 見た目と同じような内装の中を、

 二階に向けて上がっていく。

 お供も居ないのか。

「カグラ王女、お連れしました」

「どうぞ」

 凛とした声では無く、

 可愛らしい声が中から飛んできた。

 ショウが扉を開けると、

 そこに居たのはショウよりも幼い少女だった。

 膝まである長い黒髪に、

 赤を下地に金の刺繍でヒマワリの様な花があしらわれた

 物を着ていた。

 この歳で国をどうこう言うのは早計だ。

 そんな事はショウも解っている。

 だがそう言わねばならない理由があるのだろう。

「失礼致します王女。私は」

「コウ殿ですね。お待ちしておりました」

 笑顔で駆け寄り手を握られる。

 そしてその手から伝わるのは、

 とても王女の手では無いと言う事だ。

「……お待たせして申し訳ありません。生来の無骨者故、道に迷ってしまい、ショウ殿に手間を掛けさせてしまいました。御許しを」

 俺はその手を握りながら膝を突き、

 頭を下げる。

「いえいえ!私はてっきりショウが失礼な事をしたとばかり」

「とんでも御座いません。して私めに王女は何をお求めなのでしょうか」

「あの、汚い所で何ですがお掛けになって下さい」

「では失礼いたします」

 俺は場所を変えようとしたが、

 話し辛くなるのも困る。

 ここで先に話をするのが賢明だ。

 だが急かすのは良くない。

 ジッと言葉を待つ。

「コウ殿。私達のオレイカルコス大陸は、以前は竜を凌ぐ神に最も近い一族が統治する世界の中心でした」

 ラグナロクはオーディン様達神々と、ロキ、そして巨人の戦争だ。

 最終的には巨人の炎によって一度世界は死んでいる。

「一度世界を壊した巨人たちに、人と同じかそれ以下の存在に落とし罰を与えました」

 この世界はオーディン様が再構築した世界。

 その中で巨人を優遇したのでは、

 またラグナロクを生むと考えたのだろう。

 再構築したばかりの頃は、

 再構築する事に力を注いだために、

 修正を加えるのが遅れたのかなと思う。

 それにしてもこの凋落ぶりはそれだけなのか。

「ただ巨人たちにも言い分はありました。巨人と言っても4つに分かれており、全てが同じではありません。その事からオレイカルコス大陸は荒廃の一途をたどっています。もう持たない所まで来てしまいました」

 なるほど。

 内紛が内紛を呼んで、

 種族の危機にまでなったのか。

「今の王達は誰一人として、それを解決しようとは思っていません。どの巨人族の末裔が強いのか、それを決せんと戦をし続けています」

 自滅へ一直線と言う事か。

 どの巨人族がトップに立とうとも、

 其々が其々に思う事が邪魔をして、

 内戦は治まる事は無いだろう。

「滅びるならば、私は別の方法を試してから滅びれば良いと考えています」

「私の様な外の血を入れると言う事ですか」

「はい。人によって淘汰されれば、巨人族の夢も覚めるでしょう。人と同じかそれより劣ると言う現実から目を背けた結果が、内戦におよび、今種族さえも滅ぼそうとしています」

 俺は目を瞑り考える。

 王女は年齢の割に聡明だ。

 しっかりと考えて選択をしたのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ