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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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男二人でダンジョンというのは温度が上がる

 俺と眼帯男は着の身着のまま街を出た。

 何か道具とか要るものは無いのか聞いたが

「アンタが要るなら」

 と言いながらニヤニヤしていた。

 どこからこんな余裕が出てくるのか。

 まぁただのこけ脅しなら、

 直ぐに化けの皮ははがれる。

 一般人よりアドバンテージがある面も、

 巨人族の血を引く彼にはあるだろうが、

 無敵という訳ではない。

「さてここからダンジョンだが」

「ああ見えている」

 並んで立っているだけである。

 まぁ良いけど。

 俺はそれだけ言うと中に入る。

 入口付近は特に問題無い。

 前回は浅い階層しか行っていない。

 未知数である。

 しかし緊張感が全く無いな眼帯は。

「時に名前は?」

「名など聞いて何の意味がある」

 困った。

 引きこもりとあんまり変わらない。

 コミュニケーションを取るつもりが

 まるでない。

「意味がある。パーティでダンジョンに潜るのに、信用できない奴に命は預けられない」

「命を預けてもらう必要は無い」

「なら不合格だ」

 俺は踵を返して入口に戻る。

「何の真似だ」

「悪いがこんな程度のダンジョンじゃない所へ行く。食べ物や飲み物を分け合い、必要最低限、命のギリギリまで切り詰めなくちゃならない。そんな状況で信用出来ない奴と一週間近く居られると思うか?」

「そんなにお前の仲間は心が狭いのか」

「人の所為にするな。それとも巨人族の血を引く人間は、他人の好意に甘えて生き延びるセコイ人間の集まりなのか?」

「俺の一族の事を知りもしないで侮辱するのか」

「知りたいが教えてもらわなければ解る筈も無い。で、知ればお前の一族がセコイ理由を納得出来るのか?」

 何でも暴力か。

 俺は眼帯の剣を黒隕剣で防ぐ。

 どうやら怒ったらしい。

 とても直線的であっさり防げた。

「話は終わりだ」

 俺は気を発し力で押し返す。

 眼帯は驚いた表情を見せる。

 それはそうか。

 力押しなら負けないと思っていたのだろう。

 世界は広い。

 俺もそれを色々な人に教えてもらっている。

「馬鹿な!」

 もう一度突っ込んでくるが無駄だ。

 俺は受け止めつつ押し返し、

 空いている手で眼帯の剣を握る手を掴み、

 剣を落とさせると、鳩尾を蹴りあげる。

「気は済んだか?命は取らない。大人しくしていれば、無傷で城へ引き渡してやる」

「おのれ」

「大人しくしていろと言っている」

 俺はもう一度顎の先端を擦る。

 あっさりと終わり。

 どうしたら屈辱に塗れず終わらせられるか。

 だがそれは所詮勝者の感傷でしかない。

 敗北は敗北。

 きっちりと認めざるを得ない状態にする事こそ、

 後に繋がる。

 恨めしい顔をしながら足掻く眼帯。

 このまま城へ連れて行っても良いが、

 別にそれは今しなくても後でも出来る。

 今しか出来ない事は何だろうか。

 俺は眼帯と向かい合うように座り込む。

「何の真似だ」

「いや何。幾らお前でも俺が本気になれば、城へ連れて行く事は何時でも出来ると理解した筈だ」


 それに対して返答は無い。

 ぐうの音も出ないが、

 負けを認めたくないと言ったところか。

 ならそれで良い。

「では最初の質問に戻ろうか。名前は?」

「……ショウだ」

「ショウ、俺はお前に能力があれば用いるつもりだ。それはギルドで仲間の反対を押し切ってここまで来た事で、お前なら解るだろう?」

 それにも答えない。

 なら勝手に話を進めるか。

「俺は人を必要としている。だが後ろから刺される危険を冒してまで欲しいとは考えていない。その段階では無いというのもあるが、先に話したようにダンジョン奥深くまで潜るとなれば、飢えや乾きに苦しむ事もあるだろう。そうなった時に耐えられるか否かは理屈じゃない。精神的な部分が重要になる。生命維持に危険が生じれば、心が広かろうが狭かろうが同じだ。お前の言う事は理想論でしか無い。心が広ければ命を犠牲にしろというのはお前の勝手な理屈にすぎない。そんな人間と一緒に潜りたいと思う奴が居たらそれは聖人位だろう」

 ショウは足掻くのをやめて俺を真っ直ぐ見ている。

 俺も真っ直ぐ見る。

 説教しようとは思わないが、しっかり理由を説明すれば、

 何故連れていかないのか納得せざるを得ないだろう。

 俺は敢えて答えを促さず待つ事にした。

 日数的にはヤバイけど、

 返答を待つ位の時間はある。

 真っ直ぐ見てただじっと待つ。

「……解った。アンタの言う事に従おう」

「そっか!なら良かった。じゃあショウの実力を見せてもらおうか」

 俺は笑顔でそう言って頷くと、

 立ち上がってショウに手を差し出す。

「手など無くても立てる」

「もう大丈夫なのか?」

「巨人族を舐めるな」

「そうか、だったら良い」

 俺は無理に握手を求めずに、

 踵を返して洞窟へと進む。

 ショウも後から付いてくる。

 どうやらやせ我慢では無く大丈夫らしい。

 一階には何も無い事を確認済みだから、

 二階へと降りて行く。

 何か音が聞こえてきた。

「ショウ、何か来るぞ」

「ああ」

 ショウは俺の横へ来る。

 俺はそれに合わせて相棒を引き抜き構える。

「プギィィイイ!」

 久しぶりに見るイノシシ。

 しかも目が真っ赤。

 何を興奮しているのか。

「俺に任せてもらおう」

「良いけどやり過ぎるなよ?売れなくなるから」

「解った」

 俺は相棒を収めて見守る。

 ショウは素直に俺の言葉を聞いて、

 イノシシを一刀の元に切り捨てた。

 俺は着の身着のまま来たので、

 取り合えずイノシシを引き摺りながら行こうとした。

「待て。そんな物を引き摺って歩くつもりか」

「仕方がない。俺が焦って荷物を入れる物を忘れたからな。なんで引き摺って行こうかと」

「俺に任せてくれ」

「解った。頼む」

 俺はそう告げて手を離す。

 するとショウは懐から袋を取り出した。

 コンビニでパンを買った時に、

 貰う程度の大きさである。

 不思議に思ったが、黙って見守る事にする。

 ショウは俺をチラリと見たが、

 その後その小さな袋にイノシシの足を入れると、

 あっと言う間に吸い込まれた。

「なるほど。それは凄いな!助かるわ」

「一族のマジックアイテムだ。俺達は魔法を使う事も免疫も無いが、マジックアイテムを作る事は出来る。これでも神と戦った一族だからな。神とは別系統で作られているから見た事がないのも無理は無い」

「世界は広いなぁ……。それ中でイノシシは腐らないか?」

「そうだな。清掃はしなければならないが、一両日位なら保存は可能だ」

「それは良い!階層が多いダンジョンにはうってつけじゃないか!ショウ凄いな!」

「俺が凄いんじゃない。一族のものだ」

「巨人族スゲー!」

「スゲーとはなんだ」

「あ、凄いって意味」

「まぁそれほどでもない。それより先へ行こう」

「ああそうだな。ショウ頼りにしてるよ」

 俺は肩に軽く手を置いて先に進む。

 俺もそうだったが、

 大人数でいるよりも二人とか少人数の方が、

 話やすいものだ。

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