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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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大人になるって難しい

「皆お疲れ!」

 俺は取り合えず冒険者ギルドへ降りる。

 すると丸いテーブルにロリーナ以外揃っていた。

「お疲れじゃないわよ」

 アリスが恨めしそうな顔をしてこちらを見る。

「ホントですよ旦那。良い夢は見れましたか?」

 ザルヲイまで嫌味を言ってくる。

「そんなに講義は辛かったのか?」

 そう聞くとリムンとハク以外は、

 全員俺に喰ってかかる勢いで文句を言ってきた。

 何を喋っているか解らない。

 其々声の高さも違うし。

 と言うかこう一斉に聞くと、

 其々の声の高さが混ざって中々悪くない。

 皆キレてるのに強弱付けてるし。

「「聞いてる!?」」

「聞いてる聞いてる」

 話は聞いてないが音は聞いてる。

 珍しくビルゴまで文句を言っているのは、

 面白いと思った。

 恐らくブルームの講師っぷりにではないだろう。

 トラップ解除など実はダンジョンマスターというか、

 シーフは難しい職業である。

 成功率はマスターにならないと完全では無いし、

 勘が悪いのはダメ。

 プレシレーネも恐らく絞られたに違いない。

 鑑定も一歩間違えばパーティを危険にさらす。

 何せ呪いの武器もある訳だし。

「まぁまぁ。ダンジョンは見かけより難しいってことだよ。今回行く所も、何階まであるか解らない訳だし。ロリーナがトップだったのはロリーナの育ての親が優秀だったからだよ。皆なれれば追いつくさ」

 慣れた頃にはロリーナは、

 先に行ってると思うけど。

 敢えて言わないのは、

 皆それ位は理解しているだろうから。

 皆はすごすごと席に戻る。

 そして一同溜息。

 面白い光景である。

「さてと。ザルヲイ、凹んでる所悪いけど、俺達が潜るダンジョンは地下何階なんだ?」

「あ、ええ。実の所全体像は解りません。こちらからあちらに話がある時は、其々の使者を立ててますんで」

「でも一応何かあった時用にある程度までは解ってるんじゃないか?色々な手段を用意してそうだし」

 竜人は竜に次ぐ種族。

 全てのステータスが人を遥かに上回っている。

 向こうが狡猾だとするとザルヲイ側の思惑を呼んで、

 内部に潜り込ませている間者が、

 騙されている可能性もある。

 なので細部までは解らなくとも階層の目星位は

 つくと思う。

 何せ騙すなら所々真実を入れておかないと騙せない。

「まぁ何とも言えませんが」

「じゃあザルヲイの予想で良いから何階層あると思う?」

「裕に30はあるかと」

 わお。

 30とか今までにない階層だ。

「水とか途中で拝借できるかな」

「途中までなら。ただそれ以降は飲まない方が無難です」

「瘴気に当てられてるとか」

「似たようなもんです」

 なるほどね。

 影響下になるとそれはその種族のみが

 取れる物に変えておかないと、

 攻め込まれた時に不利になる。

 まぁ言わば自分の国だから、

 ある程度の防衛はしているだろう。

「一気に行かないと危なそうだね」

「そうですね。引き返した所で次潜る時はもっと大変な事になっていると思いますよ」

「そうなるよなぁ」

 となると食料や水は多くいる。

 この場合持ち帰りはダメっぽいなぁ。

「所で相手の戦力は?」

「竜のみで考えると40人程度で、その他は調べようがありませんでした」

「そっか」

 と言う事は大小様々な敵がいる訳か。

 さてどうしたものか。

 オルソン様の顔を見て、ふと思い出した。

 こういう事に一番適性の高そうな人を。

「オルソン様、ヘラクルスさんはここにきますか?」

 オルソン様は笑顔で頷いた。

 やっと気付いたか位の感じなのかもしれない。

 各地を渡り歩いた英雄。

 冒険大好き冒険野郎と言っても過言ではない人。

 やっぱほぼ初心者集団にプロは一人欲しい。

 ここは一つ説得してみるか。


 俺はその後城へと向かう。

 今クロウディス王と会うのは、

 恥ずかしい限りなんだけどそうも言ってられない。

 ヘラクルスさんの所在を知ってそうな人を

 他に思い浮かばない。

 オルソン様に頼むと高くつきそうだし。

 行き辛い感満載だったが、仕方ない。

「コウ殿ではありませんか!」

 門の前まで来ると衛兵が敬礼した。

 いやいやどんだけ大人物なの俺。

「あの、敬礼とかはしなくて大丈夫ですから」

「いえ!あのクロウディス王に本気を出させた方です!是非握手を!」

 えー。

 握手とかアイドルじゃあるまいし。

 そう思って渋っていると、

 兵士二人に両手を塞がれた。

 すっごい目がキラキラしておる。

 帰りたい。

 負けたのに称賛されるとか嬉しくない。

 俺が辟易しているのを無視して

「どうぞ!中へ入られたら別のものがご案内させて頂きます!」

 と俺を引っ張っていく。

 そして中に入ると次は更に風格ある兵士に敬礼され

「何か粗相は御座いませんでしたか!?」

 と聞かれる。

 俺は苦笑いしながら首を振る。

 そして握手を求められたので握手をする。

 何かご利益でもあるのか。

 まぁ有名税って事なのかな。

 あきらめて俺は城を案内される。

 そしてこの後も何度か握手を交わした。

「何だ随分疲れているではないか!」

 王座の間のでかい扉を開けられ中に入った。

 クロウディス王は俺を見て直ぐに立ち上がり、

 駆け寄ってくると握手を求められ握手すると、

 肩をバンバン叩かれながらそう言われる。

 理由を話すのも面倒だし苦笑いだけした。

「どうした機嫌が悪そうだな。まぁ座れ」

 笑顔で席を引かれて座る。

 鼻をへし折られた相手とどう接すれば良いのか。

 イマイチそこは解らない。

 引きこもり無職にはハードルが高い。

 もともと折られる鼻も無かった訳だし。

 そう考えると折れる鼻があっただけでも

 成長したんだろう。

「今日はその、お願いがありまして」

「お!何だ!?お前の頼みなら聞ける範囲なら何でも聞いてやるぞ!」

 圧が凄い。

 離れているのに。

 まぁそれだけ親しみを

 持ってもらえたなら良かった。

 戦場であれば生きて会えなかっただろうし。

「実はですね、ヘラクルスさんと会いたいのですが」

「ヘラクルスと?何の用事で?」

「ええ、今度ダンジョンに潜る事になりまして。それで力添え頂けないかと」

「それはザルヲイ殿から聞いている。しかしヘラクルスは人に情報を教えるのは巧いが、人に教えるのは苦手だぞ?」

「そうなんですか……でしたら同行して頂けると助かるんですが」

「うーむ」

 クロウディス王は腕を組んで目を瞑り、

 首を傾けてうつむいた。

 何か事情があるんだろうか。

「難しいでしょうか」

「いや聞くのはコウからしてもらうとして、お前も知っての通りあれは宿六だ。捕まえようと思って捕まるものかどうか」

「クロウディス王の元で情報収集に各地を歩いているのだと思っていました」

「それは違うな。アイツは自由人だから、何かに縛られるのを良しとしない。どちらかと言えば情報収集はついでだ。あれは金銭よりも浪漫を追い求める性質なのは知っているだろう?」

「確かに。では色々と声を掛けて探してみます。御忙しい所失礼いたしました」

 俺は席を立ち一礼する。

「こちらでも探してみよう。見つかった時はザルヲイ殿に伝えれば良いかな?」

「はい、有難う御座います!」

「うむ。時にコウ」

「はい」

「負けて悔しいと思えるほどに良くぞ成長した。そして来辛かった我が城へ良くぞ赴いてくれた。お前とはもう酒が飲めないかと心配したのだぞ?」

「そうですね。色々な事を思って来辛かったのはあります。ですが戦場であれば命は有りませんでした。それを思えば甘かったと言わざるを得ません」

「正直な声を聞けて良かった。それでも悔しいであろう?」

「正直」

 俺は苦笑いをしながらそう答える。

 クロウディス王は豪快に笑う。

「良い良い。俺も久しぶりに全力を出した。ゴルド大陸へ行って更なる成長を期待している。ライバルが現れて俺も鍛錬に熱が入っている所だ」

「ライバルなどおこがましいです」

「ならライバルとなれるよう成長せよ」

「ええ、何時かあっと言わせてみせます」

「……良い。実に良いぞ。楽しみにしている」

「では」

「そうだ。出来ればゴルド大陸へ行く前に、また寄ってくれ。国を動かす訳にはいかない状況だからこそ、お前に無理をさせてしまうのだからまた盛大に壮行会を開かせてくれ」

「……解りました。皆を連れてお邪魔します必ず」

「楽しみにしている。また一つ大人になったな」

 俺は相変わらず苦笑いして部屋を出る。

 一国の主にこんな事を言うのはなんだけど、

 ホント大人だなぁ。

 俺も年齢的にあれ位にならなきゃいけないのに、

 上を向いたり下を向いたり忙しい。

 俺は来た道を同じように帰る。

 今度は別の兵士にもみくちゃにされて、

 冒険者ギルドへと戻るのだった。

 

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