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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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再会と適任者と

 何か体がチリチリする。

 帯電している様な感じだ。

 俺はゆっくりと目を開ける。

 取り合えず天井は普通。

 だが光の幕が上に張ってある。

「御目覚めですか?」

 久しぶりに見る顔が眼に映る。

「ああ。世話を掛けたみたいで」

「いえ」

 優しく笑う顔は、

 何処か気品を漂わせている。

 少し逢わないだけで随分変わったな。

「しかし精霊魔法を使うなんて、もうすっかり女王だな」

「気付いてくれたんですか!?」

 パッと顔が明るくなる。

 なるほど、まだまだって感じだな。

 だけどそう言う事で喜べる限り、

 今後も成長していくだろう。

「勿論。生憎と特異体質だからね」

「その様ですね。里の大樹と直結して補充をしている筈なんですが、底なしです」

「そう思うよ。今の俺にはそれは止めておいた方が良い。大樹が枯れる」

「そんなに凄まじい力をお持ちなのですね」

「燃費が悪い技ばかりだから。でも大丈夫。自力で生成する方法を教えてもらったから」

 俺はそう言うと体を起こす。

 そして俺を治療してくれていた姿を見る。

 白地にシルバーの刺繍が首元や袖口、

 胸元などにあしらわれた綺麗なドレスを着ていた。

 次期女王らしい恰好だ。

「起きたのか」

 お供が部屋に入ってきた。

「久しぶりだな」

 ルールは以前の様な黒尽くめでは無く、

 銀色の軽鎧を身に纏っていた。

 護衛なのに相変わらず軽装だなぁ。

 武器も短剣2本。

 表情はそれでも大分緩やかになっているのが

 解るほどだ。

 ルールも成長しているってことか。

「そうだな。相変わらず色々無茶をしているようだな」

「まぁね。そっちはどうなの?」

「こっちは順調だ。国交が始まって、エルフの里は今森に家が多く建ち並んでいる」

「そうか賑わっているのか」

「御蔭様で。お兄様、コウ様にそんな口の利き方は無いでしょう?」

「構わんだろう」

「ルールはこんな感じだと思うよ」

「コウ様まで」

 俺とルールは笑う。

 ルールも暗殺業から足を洗ったようで、

 笑顔も自然になっていた。

「今回は無理を言ってすまないな」

「いえ、本来であれば私が同行したいのですが」

「それはダメだろう。次期女王が里を離れては」

「ですが竜人族ともよしみを結べば、我が里も利益になるとは思いませんか?」

「確かに。女王らしい意見だ」

「ほら見て下さいお兄様」

「何を言ってるんだ。それなら俺が同行する」

「いや無理だろう。今回は正面切って敵陣に殴りこむんだ。うちのパーティ的に脳筋が多すぎる」

「まぁそれはそうだな」

「でしたら私が!」

「ちょっと二人とも何言ってんの!」

 次はロリーナが入ってきた。

「ロリーナ様も王族ではありませんか」

「私は良いんだよ。後継者じゃないしね。それにコウ聞いてよ!私がトップだよトップ!」

「何の話だ」

「ロリーナ様が適正ではトップです」

「マジでか」

「マジマジ」


 意味解って言っているのか甚だ疑問だが、

 どうやらマジらしい。

 そう言えば勉強しないか聞いた時に、

 一人だけ返事をしなかったな。

 まさか一人でいる間に身に付けたとか?

「ロリーナ、一人でいる時何してたの?」

「ん?私はこう見えて行動派だからね。色々な所へ冒険しに行ってた」

 こう見えてってそのボーイッシュ然とした見た目で、

 編み物をしているのを想像出来ないだろうに。

「ちなみに僕は編み物も得意だ」

 なに人の思考を読んでるんだ。

 志井で育ったから色々出来るとは思ったが、

 育ての親が優秀だったに違いない。

「ロリーナ、お母さんに感謝しろよ……」

「え、何でそこで涙ぐむの?」

「お母さんとは話が合うなぁと思って」

「ああ合いそうだね。無駄に心配性な所とか」

 無駄って……。

 ロリーナの男勝りは元々だと思う。

 それを編み物まで出来るように育てるとは。

 さぞや苦労した事だろう。

 俺は見た事も無いロリーナの育ての母親に、

 想いを馳せたのだった。

「いや話し終わってないけど」

「お前は俺の思考を読むな」

「解り易いから仕方ないね」

「あーはいはい。それでブルーム的に見てどうなの?」

「そうですね。後は経験を積むしかないかと」

「そっか……。まぁそれしかないよなぁ。でも今度は竜の住処。本格的なダンジョンになってるんだよな」

「やはり私が同行いたしましょう」

「いやそれには及ばないよ!僕が何とかしちゃうから!」

「いやお前絶対最後は力押しするだろ」

「仕方ないじゃないそれは」

「仕方ない訳ないだろ。ブルームこれホントに良いのか?」

「仕方ないですね」

 えー。

 ブルームまで講師なのに仕方ないとか言いだしたよ!

 ブルームのお母さーん!

 助けてー!

「まぁあの面子では仕方あるまい」

「ルールお前もか」

「何を気分出してるか知らんが、お前のパーティメンバーの事だから一番解っているだろう」

「……現実を知りたくない」

「身も蓋も無い」

 顔を覆う俺にルールは追い打ちを掛ける。

 いやまぁ解っては居たんだけどね。

 どう考えてもうちの面子には、

 慎重とかそう言うのが足りない。

 最後は力押しだもの。

 あれでも俺もそうか。

 そう考えると頭痛しかしない。

「取り合えずコウ様が慎重であれば、後は何とかなるんじゃないかと」

「ブルームも割り切るなぁ」

「無い袖は振れません」

「ソウデスネー!」

 オッサン的に昔のお昼の番組のように合の手を入れる。

 だけど投げやりになる訳にはいかない。

「解った。こうなったらブルーム、ロリーナを徹底的に仕込んでくれ」

「構いませんか?」

「ああ泣き言を言っても基本無視で。ロリーナが泣きを入れるのは大抵嘘だ」

「何でそう言い切るかなぁ」

「前に怪我した時も泣き言を言わないロリーナが、泣き言を言う事自体胡散臭い」

「それはそうですね」

「ブルームまで」

「兎に角出来る所まで頼む。無理な所は他のメンバーから選出するから」

「解りました。ではロリーナさん、お兄様、早速ダンジョンへ行きましょう」

「え!?今から行くの!?」

「当たり前だ。俺達だって何時までもここにいる訳にはいかない。竜人族とよしみを結べると言うから来たのだ。本来ならブルームの言う通り、俺達も同行した方がより利益は多い。だがそうも行かんからとっとと済ませて里に帰る」

 ルールはどこか苛立っているようだ。

 恐らく本音はルールとしては自分だけでも行きたいのだろう。

 俺に借りがあると思っているだろうし。

 妹にダメだと言って自分だけ行く訳にはいかない。

 ジレンマもあるんだろう。

「なら頼む。また夜に冒険者ギルドで」

「はい。お任せ下さい!」

「任せろ。多少使えるようにしておく」

「ブルームもルールも頼むよ。二人が頼りだ」

「えー!?僕は!?」

「ロリーナが一人立ちするのが大前提の話だ。頼りにしてるよ当然」

「そっか!頑張る!」

 現金な娘だ。

 まぁそう言うのと言わないのでは、

 厳しく叩きこまれる本人としてはやる気が違うだろう。

 マジで頑張ってほしい。

「ではまた後で」

「ゆっくりしていろ」

「そんじゃ行ってきまーす!」

 三人は賑やかに出て行く。

 俺としてはその間に皆の様子を見てから、

 自分の修行に入ろうと思う。

 恐らく竜の鱗は並大抵の攻撃では傷つかない。

 気と相棒だけでは俺以外全滅するのだろう。

 それを察してオルソン様は授けてくれたに違いない。

 俺はもう一度ベッドに倒れ込み、

 どうやって修行したものか考えていた。

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