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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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一人で散歩すると、意外と色々考えられるよね

「あっぶなかった」

 運良く横穴を見つけ、

 直ぐ下で拳を叩きつけて止めた。

 落ちない様にしっかりとよじ登り、

 穴に入ると壁にもたれかかって座る。

 よくよく考えると

 ブルームの存在は有り難かった。

 今のパーティのメンツで、

 その変わりが出来そうなもの。

 うーん。

 ……一人しか居ないよなぁ。

 でも年少者に押し付けるのも気が引ける。

 かと言って他に代われそうな者。

 次点でアリスかな。

 アリスも参謀として動くなら、

 トラップの類を見つけられると

 行動範囲が広がる。

 俺も気が緩んでいるのかもしれない。

 師父が居た時は、

 もうちょっとシャッキリしてた気がする。

 親離れしないかバカ者、

 そんな風に言われた気がする。

 気持ちの余裕の無さが、

 皆を苛立たせていたのかもしれない。

 折角頼りになる背中を見せてくれていたのだから、

 今度は俺がそれにならなければならない。

 時にはノリに乗っても良いだろうけど。

「なっちゃいないな全く」

 俺は立ち上がりながら、

 己の不明を恥じた。

 見極め力が足りない。

 パーティリーダーなのだから、

 皆の心の部分をケアしないと。

 年長者でもある訳だし。

 俺は笑顔を作る。

 ここは暗い顔をして戻っちゃダメだろ。

 無理でも笑顔。

「さぁってと。行きますか」

 俺はなるべく飄々と歩く。

 肩に力が入り過ぎてた部分もあるよな。

 緩み過ぎるのはダメだけど、

 ある程度余裕を持っておかないと。

 俺は気をつけつつ奥へと進む。

 特に警戒する気配も無い。

 というかここかなり深いな。

 元々何の場所だったんだろう。

 水が落ちてくる音が聞こえる。

 地下水脈もあるから生息は出来るようだ。

 指にその水滴を当て、匂いを嗅ぐ。

 特に銀臭いとかもない。

 色も普通。

 試しに舐めて見るが、味は無い。

 こういう時に水筒を持ってくると良いな。

 というか長いダンジョンなら水筒持ってこないと、

 水分補給が危ない。

 俺は皆の勢いに任せて、

 ダンジョンに潜ってしまった。

 心は熱く、頭は冷えて。

 中々巧く行きませんよ師父。


 頭を掻きながら先へと進む。

 少し屈んで進まなければならない位、

 道が狭くなってきた。

 しかしリムン位の背丈なら普通に闘えそうだ。

 リムンは140㎝位だから、ハクより少し小さい。

 と言う事はハクはお姉さんのように、

 リムンを気にかけてさっきは声掛けたのか。

 異国の地に来たと言うのに、

 玉藻さんの教育が良かったんだろうな。

 何と言う賢母振り。

 今までほぼ突貫だったから、

 これを機にダンジョンについて、

 キチンと学ぶべきだよな。

 何れ何かを成そうと言うなら、

 資金を蓄えとかないといけないし。

 そうなると、まだ未開の地が残る

 ダンジョンはうってつけだ。

 ブルームの欠員は痛いけど、

 その代わりに今学ぶべき事が解って

 収穫はあった。

 なら今はこのダンジョンの攻略に

 拘る必要は無い。

 俺はそう答えを出して、

 周りを見渡す。穴は真っ直ぐ進んでいる。

 というか一人で暗い所を歩くと、

 何気に良い考えが浮かぶものだ。

 今度からやってみよう。

 この世界に来てから一人でいる事は

 あまり無かった。

 それだけ色々な人に世話になっている。

 そう言う人達が受け皿として必要とした時に、

 俺に何が出来るだろうか。

 仲間がいると言う事は、

 その数だけ責任がある。

 養うには国が必要。

 クロウディス王の単純明快かつ真理をついた

 答えは、凄いなと思った。

 その答えにすんなりと辿り着いた訳じゃないだろうけど、

 それを成し遂げたあの人は凄い。

 偉人では無く一冒険者から始まった、

 あの人の伝説。

 生ける伝説。

 腕だけでなく思考も志も負けていた。

 その上いつも張り詰めていない。

 俺みたいにキレそうになったりもしていない。

 大らかだ。

 器が大きいのだろう。

 年上ではあるけど、そんなに上でもない筈だ。

 追いつけるかなぁ。

 追いつけると良いなぁ。

 今はまだ漠然としている。

 でも師父達と出逢った事で、

 国と言うものが少しだけ見えてきた。

 王として何が民を幸せにするのか。

 まぁそこまで大きな事はまだだけど、

 せめて今は周りにいる人達を幸せにしないと。

 そこから始まる覇業があっても良いんじゃないかな。

 というか覇業って何だ。

 国を乗っ取って統一しようと言う気は無い。

 でもこの世界にはまだ他にも大陸がある。

 そこで非道な行いがあったとして、

 国があれ住む人たちの心が荒れていた時、

 俺はそれをそのままにしておけるだろうか。

 しかしそれだと火事場泥棒になるしなぁ。

 例えば求められたとして、

 俺は王座に就くのだろうか。

「難しいよなぁ」

 答えは直ぐ出ない。

 それでも考える事は必要だ。

 俺も何でか知らない……事は無いか。

 相棒達や師父達の力添えもあって、

 名が知れているようだし。

 他国から助けを求めてくる人も居る。

 となれば無い事も無いのかもしれない。

 だけどまぁ近々じゃないだろうしなぁ。

 ボチボチ考えてみよう。

 俺の作る国、俺の大陸。

 この世界に何故来たのか未だに解らない。

 答えは見つからないかもしれない。

 向こうに帰るという発想は一切ない。

 嫌だからというのも少しはあるが、

 それ以上にここには大切にしたい事が

 多く出来た。

 両親は弟が居れば大丈夫。

 今俺の側にいる人達は、俺無しでもやっていける

 人も居るけど、そうじゃない人も居る。

 置いて行くという事は俺には考えられない。

 だとしたら、行ける所まで行ってみよう。

 そう考えると、少しずつ輪郭だけは見えてくる。

 ワクワクしてきた。

 その為にはもっと色々な事を学ぼう。

 ダンジョンもそうだし街の作りもそう。

 経済の流通もギルドの仕組みも。

 そう言った事の全てを学んで、

 その果てに国があるのなら、

 それは憧れる王の姿なのかもしれない。

「あれまぁ」

 狭い道を抜けると、

 そこは外になっていた。

 見渡す景色はあの時と同じ。

 あの時は二人、

 今は一人。

 二人から始まった旅路も、

 今は増えた。

 傍にいなくても繋がっている人も居る。

 運命か。

 そう考えると感慨深い。

 この景色を見れたのも、

 俺の中での考えが進んで、

 行きたい所が見えてきた今というのが

 余計にグッと来る。

 始まる。

「よし」

 俺はそう言って振り返り、

 元来た道を戻る。

 良いものを見た。

 ファニーに自慢してやろう。

 何と言おうか迷うけど、

 やっぱりこういう。

 運命を見た。

 っていうのはちょっとクサイかなぁ。

 俺も大概ロマンチストだよなぁ。

 色々考えて来た道を進む。

 結局この話は誰にもしなかった。

 一人散歩に出て良いものを見た。

 それだけなのだから。

 

 

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