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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
ダンジョン攻略準備編

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帰って来たら闘技場!

「おおっとこれは飛び入り参加だ!」

 湧きあがるお客さん。

 何でそんな事になったのか。

 竜に乗ってブロウド大陸から

 シルヴァ大陸に帰還した。

 が、降りる場所を考えていた時に、

 ファニーとアリスに突き落とされた。

 俺が何をしたと言うのか。

 当の二人は竜に乗ったまま

 何処かへ行った。

 ハクは俺にしがみ付いてそのまま。

 え、どうすんのこれ。

 マジで碌に寝て無いし、

 出来れば食べ物が欲しいんだけど。

 しかも飛び入り参加とか聞こえたけど、

 参加すんのこれ。

 辺りを見回すと盛り上がっている。

「ブロウド大陸とシルヴァ大陸を救った英雄に挑むものは在るか!」

 久しぶりに聞いたクロウディス王の声。

 一番高い所から歓声を掻き分けて届く。

 唸り声を上げるお客さん。

 えー。

 何で煽ってるのかしら。

 解ってるなら休ませて欲しいんですけど。

 俺はそれに対して異議を唱えようとするが、

「ならば俺が相手になる!」

 何か何処かで見た全身フルフェイスの鎧に、

 鉄製で棘の付いた棍棒を持った人が、

 クロウディス王に煽られて名乗りを上げる。

 マジか。

 マジでやるのか。

 めっちゃ休みたい。

「……私やる?」

 ハクが袖をひっぱりながら言う。

 いやぁダメでしょ。

 やらざるを得ない空気を感じ取って

 そう言ってくれてるんだろうけど、

 ハクを出して俺が出なかったら

 完全に悪者じゃないですか。

「有難う。でも大丈夫だ」

 俺は苦笑いしつつ、ハクの頭を撫でる。

 目を細めニコニコしているハク。

 ああ辛い。

 あの二人には後で説教しなければ。

「では勝負!」

「はいはい。ハク、ちょっと離れていてくれ」

 頭を撫でながらハクに言うと、

 本当にちょっと離れただけだった。

 まぁ違う大陸に着て

 知らない人だらけの中に居ればそうだよね。

 ならさっさと終わらせるか。

「何時でもどうぞ」

「うぉおお!」

 鉄製で棘の付いた棍棒を振り上げて突進してくる。

 どうすっかなこれ。

 まともに受けてもいけるだろうけど、

 しんどいしここは相手に頑張ってもらうか。

 ゴォッと音を立てて俺の横を通り過ぎ、

 地面にめり込む棍棒。

 直ぐ様切り返しが来るも、

 しゃがんで避ける。

 更に振り下ろしてくるが、

 同じように避ける。

 気の薄い膜を張っているので、

 特に破片は痛くない。

 ハクも気を張っているのでノーダメージ。

 冒険者として腕前は中々の人なんだろうけど、

 ブロウド大陸での過酷さに比べると申し訳ない。

 このまま同じ場に居ても良いんだけど、

 地面を掘り下げると後が大変そうなので、

 俺は時計回りに動く。

 俺を追いかけて、

 フルフェイスの人は棍棒を振りまわす。

「はぁはぁ」

 息が上がってきた。

 どうすっかな。

 倒しても良いけど恨み買うのも面倒。

「誰ぞ居ないか!?」

 クロウディス王ニコニコしながら煽る。

 えー。

 もう一回戦ったら終わりにして欲しい。

 帰って寝たい。

 徹夜明けなんですが。

「ならば私が参りましょう」

 客席から飛び降りてきたのは、

 エルフの戦士だった。

 腰にレイピア、背中に弓矢を背負っている。

 恐らく魔法を使うだろう。

「いざ!」

 背中の弓矢を取りだしたので、

 フルフェイスの人とハクから離れる。

 雨霰のように矢が飛んでくる。

 だが実際はタイムラグがあるので、

 避けるのは楽である。

 動かずに避ける事も出来るが面倒くさい。

 するすると反時計回りに動いて避ける。

「おのれ!」

 肩で息をし始めたエルフさん。

 弓矢って体力使うからね。

 今度は一本一本打ってくる。

 スピードは上がったけどそれだけだ。

 師父の槍に比べて少し遅い。

 それだけでも良い使い手なのが解る。

 以前なら間合いを詰めていた所だ。

「チェァ!」

 無駄だと察して向こうから間合いを詰めてくる。

 色々出来るのは便利だけど、

 器用貧乏になってしまう。

 エルフさんは息が上がっている。

 それ故に突きが粗い。

 対して動かなくても避ける事が出来るので、

 割合楽。

「誰ぞ在る!」

 マジでか。

 エルフさんが膝とレイピアを地面に付いたので、

 もう終わりかと思って安心したら、

 クロウディス王が煽る。

 これ謝礼貰えるんだよな。

 ブロウド大陸での活躍に報償はない。

 それ以上に得るものが多かった。

 三略もある。

 でもお金が無い。

 アルブラハさんの大陸へ行くにも

 お金が居るだろうし。

 武器防具とか先立つものも他の皆に必要だし。

 リードルシュさんにお代払ってないし。

 あれ、もしかしてピンチ?

 嫌な汗が出つつ、周りを見回す。

 どうやら誰も居ないようだ。

 ああ良かった。

「ならば我が出ようぞ!」

 湧きあがる歓声。

 ……どう言う事なの。

 王様出て来たらダメでしょ。

 王様倒す訳にはいかないじゃない。

 王様倒したら国が倒れるよ?

「いや遠慮します」

「ならん」

 ならんて。

 どう言う事なのホントに。

「いや王様は出たらダメでしょ」

「王が弱くて国がたつか!」

「たちます。王に求められるべきは公平な采配と英断です。武は将にあっては二の次です」

 師父に言われた様な言い方をしてしまう。

 長い事一緒にいたからついうつってしまった。

「生意気な青二才め!」

「王たるもの、蛮勇を振るっては民に示しがつきません。王は王であれば良いのです。戦士たらんとするのは戦の時のみ。民を思うなら、この一冒険者にどうか報償を頂けますよう」

 俺はなるべくやんわりと言って、

 報償を貰う事で終わらせようとした。

 師父なら俄然煽ると思う。

 そう考えると面白いんだけど。

「いいやならん!」


 クロウディス王は、

 高い所から風に乗って降りてくる。

 魔法か魔術を会得してるんだ。

 流石冒険者王。

 着地するなりショートとロングの中間の長さの剣を、

 2振り引き抜き斬りこんでくる。

 流石に早い。

 カマイタチのような連撃で、

 俺の抜刀ならぬ抜剣させない。

 凄いな。

 あの大陸で鍛錬に明け暮れたのに、

 避けるだけで精一杯だ。

 世界は広い。

 空を見上げて思いながら、

 少しだけ相手をして適当に負けようと

 考えた。

 それならこっちにもクロウディス王にも、

 治まりが良いだろう。

 クロウディス王の剣の返りを見極めて、

 腰に刺した黒隕剣を引き抜き、

 もう一方の返りを見て背中の黒刻剣ダークルーンソード

 引き抜いた。

 そしてつばぜり合いになる。

「どうやら思った以上に腕を上げたようだな」

「有難う御座います、師父が育てて下さいました」

「良い師に巡り逢えたか」

「ええ最高の師達でした」

 それを聞くとクロウディス王は微笑み、

 俺を跳ね飛ばす。

 凄いな。

 力も半端ない。

 師父達で言うと……当てはまる人が居ない。

 別次元で強い。

 英雄とはこういう人なのだろう。

「どうやら増長しているようだな」

「そんな事はありません。頭でっかちになっているかもしれませんが」

「それを増長と言うのだ。ならば見せてやろう。王の力を」

 クロウディス王の体から、

 揺らめく気の様なものが立ち上る。

 そして現れたのは、赤い鳥。

 何だあれは。

 しかも手が生えて羽根を大きくした

 剣のようなものを二つ握っている。

 足は見えない。

「これこそ俺の二つ名の証。ガルーダガーディアン。これを召喚出来るのはそう居まい」

 これマジなのね。

 徹夜明けで空腹なのにとか言ってられない。

 クロウディス王はマジでやる気だ。

 ならこちらもマジでやらないと死ぬ。

 相棒、準備良いか!?


 ―準備完了―


 ――最終制御解除可能――


 なら全力だ!

 俺は丹田に力を入れて、

 持てる気を全て放出する。

 相棒達は粒子を放ち、モードチェンジする。

「そう来なくてはな」

「では」

 俺は短く言うと、直ぐに間合いを詰める。

 クロウディス王は俺の攻撃を、

 一撃目はガルーダと言っていた召喚の

 剣で受けとめ、次に王の剣で俺を押し返す。

 あれは厄介だ。

 次は王が間合いを詰めてきた。

 四本の手があるのと同じ状態で、

 2剣のリズムで受けてたら斬られる。

 俺は回転を上げつつ受け流す。

 だがこのまま行けばジリ貧だ。

 隙をついて最短で急所を狙うも、

 ガルーダが凌ぎ致命傷は与えられない。

 目も同じく増えている。

 こうなったら力で押し返す!

 俺は受け流しつつも、時々力を入れて

 クロウディス王に叩きつける。

 その隙を突かれてガルーダに切り返される。

 コイツ気も発していない。

 かといって幻影でもない。

 そこで俺はハッとなる。

 今の状況は望んでいたものだ。

 これ以上英雄に祭り上げられたら面倒。

 王に負けるのは既定路線。

 しかしなぁ。

「どうやら戦士の血が騒ぐようだな」

「そうです。負けようかと思ったんですがやめました」

 俺は一撃一撃に気合いを入れて、

 王に叩きつける。

 そして綺麗な型から打てるならどんな角度からでも、

 斬撃を繰り出した。

「つぇあ!」

 一瞬の隙間が出来た時に、

 ガルーダの顔面を蹴りあげる。

 素早く回転して着地し王に斬りつける。

 ガルーダが視界を戻して攻撃するまで

 恐らく3秒あれば良い方だ。

 その間にまくる!

 俺は王目掛けて斬撃を繰り出し、

 一気に壁際まで押し込める。

 王が背中を付けた衝撃で壁にはクレーターが出来る。

 もう一押し!

「残念。ご褒美時間の終了だ。千のサウザンドフレイム

 王がそう言うと、 

 ガルーダは顔をこちらに向けながら火を生み出す。

 その火は剣に宿り、これまでで一番早い斬撃を

 繰り出して来た。

 どうする!?

 どう守る!?

 俺は距離を取ろうとして足早に下がるが、

 全く意味が無かった。

 あっという間に詰められる。

 なら剣を破壊する!

 俺は全力で隙を見つけては、

 王の剣に相棒達を叩きつける。

「力も流石だ。前にあった時とは別人のようだぞ。見込んだだけの事はある。だがこの勝負は俺が貰う!千の斬撃サウザンドスラッシュ

 更に倍速で襲い来る剣撃。

 防ぎ避け、受け流すも手が追いつかない。

 キンという音を立てて俺の相棒が手から離れる。

「これで詰めだ」

 俺が背中を壁に付けると、

 王の剣とガルーダの剣が、

 俺の首を撥ねられるように交差させて、

 首に突き付けられていた。

「降参です」

 俺がそう言うと会場は沸き上がる。

 ホントに強い。

 この人一人でも戦える。

「まぁ良い薬になったろう?英雄に名を上げられる者というのは、こう言う隠し玉を持っているものだ」

「はい、良い勉強になりました……」

 とは思うが正直悔しい。

 そう思うのが思い上がりの証拠なんだろうな。

 元々引きこもりがちょっと強くなると、

 調子にのっちゃった感じか。

 すっっごく恥ずかしい。

 お家に帰りたい……。

「お前ももう少し鍛えればこうなれ」

 王の言葉が続いたが、

 どうやら体力の限界である。

 最後までたっていたかったが、

 持たなかった。

 師父……まだまだ修行が足りませんでした。

 俺は流れる景色を見ながら瞼を閉じた。

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