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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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最終決戦の舞台は整った

「あらら、皇帝の思う通りに事が運んでいるね」

 空から明らかに人を煽るような声が飛んでくる。

 見上げると白い虎に乗った緑と黄色の、

 派手な鎧を着た人が跨り飛んできた。

「申公豹……」

「やぁ姜子牙。またこうして戦場で会えるとは嬉しい限りだよ」

「負け戦に来て何が出来るかな」

「そうだね。でもせめて君を苦しめないと僕は楽しくない」

「相変わらず根性が捻くれているな」

「まぁね。君に恨みがあるから」

「しつこいなお前も」

「当り前さ」

「ならここでやるか?」

「勿論そのつもりだけど。ほら、皇帝が出て来たよ」

 申公豹と言う人の指差す方向を見ると、

 皇帝が出て来た。

 悟空さんは居ない。

 皇帝の強さは尋常ではない。

 悟空さんは本気だった。

 だがあの結界内ではやはり皇帝が優位になる。

 あの結界は任意の相手を取り込める。

 取り込まれたらどうすれば良いんだ。

 皇帝を倒さなければ出られないのであれば、

 それは悟空さんを超える力を出さなければならない。

 これは難題だ。

 幾ら地に落とされた状態とは言え、

 斉天大聖孫悟空だ。

 幾ら凄腕の冒険者でも敵うものじゃない。

 それほどの武芸の達人。

 俺も鍛えた頂いたが、

 あの凄さは今思い出しても身震いがする。

 結界に対する手は無いのか。

「コウ、落ち着け」

「太公望様」

「あの結界内はわしらですら破れないだろう」

「打つ手なしですか……」

「そんな事は無い」

「そうだね、あの結界内で皇帝の結界展開力以外のエネルギーをぶつければ、結界を破れる可能性は有る」

「何のつもりだ申公豹」

「さて。でもそれが出来るかは知らない。皇帝の心の中に入るのと同じだからね。彼を縛る心の闇を塗りつぶす力が、そこの君にあるかどうかが問題だ」

「……皇帝が死ぬと貴方も消えると思うんですが」

「死んでも生きても僕らは消える。特に変わりないよ。ただ僕としては君に頑張ってもらって、僕に時間を与えてくれれば良い」

「ケリをつけようというのか」

「それ以外に僕は望みがないからね。別に殺戮は趣味じゃないし、軍を指揮して陶酔に浸ろうという気も無い。僕はただ君の首を取れればそれだけで満足さ」

「太乙真人を連れて来たのは失敗じゃないのか?」

「そうでもない。君にイカれた能力や宝貝がもたらされていれば、二人掛かりは不味いけどそうじゃないからね」

「それはお主も一緒じゃろうに」

「まぁね原典に置いて僕は宝剣とこの開天珠以外もっていない。宝剣はさっき使っちゃったけどね」

「なら分が悪いだろうに」

「そうでもない。僕は皇帝の力を与えられている」

「なんじゃと……!?」

「別に驚く事も無いでしょ。彼の願いは用済みな君達を葬り去る事なんだから。いやぁやっと君をこれで八つ裂きに出来る!」

「申公豹……貴様何をしている」

 皇帝はこちらへ向かってくる。

 挟み撃ちの状態だ。

 俺はこみ上げる怒りを抑えつつ、

 この状況を打破する方法を模索する。

「何をするってショーをやるのさ。皇帝陛下は生ぬるい」

「俺を批評する前に、お前の役割を果たせ」

「勿論そうするつもりだよ。だから君も君の役割を果たすと良い」

「俺に指図するつもりか?」

「僕を消すと君が不利になると思うけど」

「そうでもない」

 皇帝はあっという間に申公豹の前に立つと、

 2振りの剣を振り下ろす。

 これには申公豹も呆気にとられたようで、

 間一髪避けられた。

「ほ、本気でやるつもりなのかい!?」

「使えないなら消すだけだ。お前のような奴を消した所で俺の心は痛まん」

「同じ悪役なのに酷い事言うね」

「無駄口をこれ以上叩くつもりならお前を今すぐ消す」

「そして新しい者を呼ぶ、か。解ったよ。じゃあ早速やるけど君達も巻き込まれない?」

「しっかり狙ってやれ」

「はいはい。で、どうする?あの兵士達は」

「殺戮をしたいのか?」

「……解ったよ。そう凄まないでくれる?」

「ならさっさとしろ」

「あいあい。じゃあ太公望と太乙真人、僕の世界へようこそ!」

 申公豹は手を広げると、太公望様と太乙真人様は、

 沼に吸い込まれるように沈んでいく。

「くっ!」

「やられた……コウ、後は頼みます!こちらもやれる事はやりますから」

「御二人とも気を付けて!」

「まだ戻るつもりでいるなら甘いよ。二人とも確実に消えて貰う。僕の為にね」

 申公豹と太公望様、太乙真人様は地面の中へと消えて行った。

「さて、こちらも用を済ませてしまおうか」

「最終決戦にしては何とも無粋な口上ですね皇帝」

「無粋も何も無い。戦はやるかやられるかのみ」

「僕と貴方の戦いがこの戦の大一番ですが」

「さぁな。人が生き続ける限り、始まりは大昔、終わりは知れない。その流れの中でこの戦いにそれほど意味があると思えん。後の年表に載るかもしれない程度のものだ」

「……人の命が消えているのに貴方はそんな事しか思えないんですか?」

「平和な時なら一人二人、三人で騒ぎになるが、統一前は千人単位で死んでいった事もある。命の価値など解らないほどにな」

「それが上に立つ者であると?」

「そうだ」

「貴方は一体何になりたいんだ?」

「私は皇帝だ。綺麗事を言うつもりは無い」

「……愚かな。貴方に憧れる者はいない。夢見るものもいない。貴方の貪欲さは全てを滅ぼし更に貴方を滅ぼすまで止まらない。貴方はそれを良しとしているが、統治されている民は堪らない。犠牲を無くせというのは勿論無理があるが、最大限の努力をし、民族の繁栄を目指してこそ王の王たる所以ではないのか!?」

「知らん。だが俺は皇帝だ」

「その能力が故に皇帝になれたのに」

「……何だと?」

 皇帝の顔色が変わる。

 なるほど図星のようだ。

 形振り構っていられないから使ったが、

 それを認めるほどの潔さは無い訳か。

「情けない男だ。お前の様な男に我が師父が破れたんじゃ浮かばれない」

「……貴様のような浮遊者に何が解る?」

「そうだな。冒険者だから一つ所に留まらないから浮遊している。だけど俺達は弁えている。自分に不釣り合いな、器から溢れるような事はしない。器に納まると思えば上に立つだろうが。アンタはただ上を目指して見たくないものを見ないで使いつつこの大陸を制覇した。アンタの器から溢れたからこそ、偉人達を地に落とした。もう認めろ皇帝。お前は皇帝の器じゃなかったんだ」

「……ならやってみせろ小僧」

「楽勝だ。アンタには負ける気がしない。直ぐに終わらせる」

 皇帝は般若のような顔をして剣を振りまわし、

 竜巻を発生させる。

 相棒、粒子の貯蔵は?


 ―問題無い―


 ――こちらも問題無い――


 なら問題ない。

 結界を、あの男の自己中心的な世界をブッ潰す!

 俺は皇帝の竜巻にのまれながら、

 師父達との修行の日々を思い出しつつ、

 最後の決戦へと挑むのだった。

 

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