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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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ブロウド大陸のトリックスター

 主戦場から離れた後方では太乙真人と

 申公豹が戦っていた。

 ただこの戦いでは申公豹が有利である。

 宝貝を持っているからと言う事もあるが、

 太乙真人は背後の都市と住民を人質に

 取られているからだ。

 その結果申公豹は若干手を抜きながら、

 太乙真人の相手をしている。

 申公豹は黄色い中華服に身を包み、

 縁は黄色、基本は緑の鎧を着ていた。

 髪も斉天大聖と同じ黄色だった。

 眼は垂れ目で愛嬌がある顔をしている。

 だが愛嬌のある顔とは裏腹に、

 申公豹は物語を掻きまわすのが本業である。

 他人を貶めたり、時には相手を助けたりと

 掴み所が無いロキと同じ悪役でトリックスター。

 実力はあるが、戦う事がメインでは無い。

 その為申公豹は今回の登場の仕方が、

 甚だ気に入らない。

 皇帝リューの思うままになるのは面白くない。

 どうしたら意外性のある事が出来るか、

 宝貝である開天珠を太乙真人に対して

 投擲しつつ考えていた。

 ここで太乙真人を見逃しても良いが、

 それでは姜子牙に天秤が傾きすぎる気がしている。

 皇帝の力は強いが、

 姜子牙が宝貝を出していないのも気になる。

 申公豹的には大団円などは吐き気がする。

 どうしたら爪痕を残して消える事が出来るのか。

「申公豹、遊んでいても良いのですか?」

 申公豹としては太乙真人も気になっている。

 ナタクが宝貝を使っていたが、

 太乙真人は宝貝を出していない。

 彼は発明家であるからナタクに渡した可能性も

 無くは無いと思ったが、あの最後では

 その可能性は低い。

 となるとやはり太乙真人は隠し玉を持っている。

 あれを使われると厄介だと考えていた。

 申公豹が口に手を当てて口笛を吹くと、

 天から白い虎が現れる。

 開天珠を投擲しつつ、相棒である白額虎へ跨った。

 さてどうするか。

 皇帝から言われたのは、

 太乙真人と姜子牙と刺し違える事。

 申公豹はその言葉を自分に良い様に

 解釈する事にした。

 相棒から斉天大聖が皇帝と消えたと聞く。

 ならここでこんな事をする理由は無い。

「太乙真人、日が悪い。戦場を変えない?」

「あの都市を見捨てて行けと?」

 申公豹は流れを変える為に仕方がないか、

 と思い腰に刺している宝剣を街へ向かって投げる。

 次の瞬間に街に立っていた赤い線は消えて行く。

「これで良いかな?」

「どう言うつもりですか?」

「言葉のままだよ。僕は使命を果たすけど、場まで決められていないからね」

「……良いでしょう。どこでやるんですか?」

「僕らだけ蚊帳の外は寂しいからね」

「解りました。貴方の狙いがどうであれ、飲みましょう」

「流石太乙真人!それじゃ行こうか?君はどうやって移動する?」

「ナタクのがあります」

 太乙真人は空を指差すと、

 風火二輪が降りて来た。

「それは結構。ならついてきてね」

 申公豹は太乙真人に背を向けると、

 戦場を移動するべく天を掛ける。

 太乙真人もその後に続いた。


 そこは屍が散らばる戦場。

 空は赤く血の色がしている。

 武器がそこかしこに突き刺さっており、

 戦場特有の禍々しい空気が覆っていた。

「さて高名な斉天大聖と一騎打ち出来るとは光栄だ」

「そりゃどうも。オメェを倒しちまっても良いんだろう?」

 それを聞いて皇帝リューは声を上げて笑う。

「何が可笑しい?」

「幾ら御仏に使える者とは言え、この空間の異常さに気付かんか?」

「だからどうした?」 

 その返答に皇帝は呆れた。

 これは参った相手をあの小僧にするべきだった。

 次は竜人と思ったが、あれも似たようなものだろう。

 標的を変えるか。

 皇帝リューは2振りの剣を構えた。

 最早問答無用という訳である。

 斉天大聖もそれを察して構える。

 先手を打ったのは斉天大聖だ。

 しかし一歩も動かず全て丁寧に捌ききる皇帝。

 斉天大聖の猛攻も歯牙にもかけない。

 体術を織り交ぜられても冷や汗一つ掻かない。

 自分の力が圧倒的過ぎる。

 溜息を大きく突くと、一閃し斉天大聖を下がらせる。

「面白くない」

「そりゃ参ったな」

「お前は考える事をしないのか?」

「考えてどうにかなるならしてるさ。この結界はオメェを倒さなきゃダメなんだろ?」

 皇帝リューはその答えを聞いて、

 少しは考えているのかと思った。

 とすると弱体化し過ぎたと言う事か。

 なら勝負を早々に付けよう。

 申公豹は信用ならない。

 他の者がある程度役割を果たして消えたが、

 あれはそうはしないだろうと読んでいた。

「ご苦労だった。この国の為に大役を果たしてくれた事は礼を言う」

「まだ勝負は付いちゃいねぇ!」

「いやもう終わりだ」

 皇帝リュー、遂に動く。

 一歩進んだだけで隙間ない斬撃を繰り出す。

 斉天大聖は受け流そうとするも、

 全てが追いつかない。

 切り傷を沢山作られる。

 次第に深くなる傷。

 斉天大聖は思う。

 コイツは危険だ。

 以前とは全く別物になっている。

 コウの為に何か打開策を見つけてやりたいが、

 隙も何もあったものじゃない。

 ただ強いのだ純粋に。

「さらばだ斉天大聖。俺は死後に罰を与えられても構わん」

 斉天大聖の胸を2振りの剣が貫く。

「ちぇ。アンタ強ぇな」

「本気の貴方なら勝てはしない。俺のズルがあったからこそだ」

「何でその潔さを国に向けない」

「歩き出した道がこれだからだ。もう振り返るには遅すぎる」

「ホントへそ曲がりだな」

「貴方ほどではない」

「……じゃあな」

 斉天大聖は爽やかな笑顔を浮かべながら、

 光の粒子となり消えて行った。

 そして皇帝は剣を振りまわすと、

 作りだした空間はガラスが砕けるように

 壊れて行く。

 その壊れて行く破片に映る自分を見て、

 皇帝は自分もまた道化だと思い笑った。

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