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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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暗渡陳倉

「関帝様、前方に敵陣確認しました!」

 シレイを出発して首都の横にある兵士供給源を叩く。

 これは弟子の立てた策だ。

 実に良い策。

 何かを貶める事も無く、

 何かを欺くのでもなく、

 何かを嵌める事も無い。

 真っ向勝負で鯛を釣る。

 恐らく敵もコウの動きを察知して

 早馬で伝令を伝えたはず。

 ただしいきなり首都へ向かうのではなく、

 情勢を見極めた上で援軍に

 向かう手筈になっている筈だ。

 敵将は事前情報のままならば大した事は無い。

 だがコウはくれぐれも気を付けてと

 伝令で伝えて来た。

 そして肌で感じるこの不快感。

 向こうから動くのを待つのが上策。

 その隊列が伸びた所を側面から討つ。

 今襲撃するよりも相手が受ける損害は大きい。

 こちらの兵力を温存して

 コウの助太刀に向かえる。

「随分悠長だな関羽」

 側面からの声に反応し、冷艶鋸を立てて防ぐ。

「二度と聞く事は無いと思っていたのだがな」

 この声は懐かしくもあり、

 この我に対して冷静さを奪うにうってつけの

 男を差し向けてきたな。

 皇帝はやはり自分の力を認識したと見える。

 孔雀の羽飾りを靡かせ、

 深紅の鎧に身を纏った男。

 武将としては悪名が轟いているが、

 将軍としての能力はあの時代でも随一の男。

「それは中々寂しい事を言う。こうして再び相まみえたのだから、決着をつけようではないか関羽!」

 あの時所持していた矛とは違う物を振るっている。

 この男に名刀の類は必要無い。

 どの武器を使わせても一流。

 それが今は名刀の類を持っている。

 あの頃とは一味違う。

「どうだ関羽よ!民達がお前達が代名詞として持っているのなら、俺にも無いのは可笑しいと考えて持たせてくれたものだ!」

 なるほど。

 我の伝説が相手も凶暴にしたのか。

 ならば我も魅せねばなるまい。

 弟子の為に関羽雲長の戦いを!

「無口だな関羽よ」

 無駄口を叩きながらも打ちこまれる太刀筋には

 微塵も狂いが無く精密だ。

「皆の者、敵陣へ進め!囲まれるぞ!」

 我は兵士達にそう大声で伝えると、

 兵士達は前進する。

「ほう。察しが良いな関羽」

「お主が相手ならこれ位はしてくるであろう?」

「ふん。神様なぞに崇められる男は違うな。口調まで偉そうだ!」

 我はその言葉に神経を逆なでされたが、

 冷静に位置を変えた。

 この男なら我の動きは察知している。

 なら自軍の兵士を回し我を併撃する

 腹づもりだろう。

「チッ。あのお前の情けない兄弟はどうした?笑顔で腹黒い耳の長い男に、単なる乱暴者は」

 我はその言葉に笑顔で答える。

 我の痛い所を突いたつもりだろうが、

 意味がない。

 大王は天におわし、弟も乱暴者ではあるが、

 それだけではない。

 死した後で深く分かる事もある。

 この男は未だ学習しないのかと思うと

 哀れですらある。

 我の相手ならばあの張遼文遠の方がマシだろう。

「つまらん。実につまらん。御大層な御身分になったから、俺のような悪党とは口もきけんと見える」

「そんな事は無い。ただあまりにも無様なのでな。お前が悪党になったのも、身から出た錆であろう。死したのであれば学んだのではないのかな?」

「おーおー御大層な口を聞くものだ。だが正味の武ならば俺が上よ!それを証明できる良い機会だ!無敵の呂布伝説を作り上げてやるわ!」

 伝説……。

 この男は死しても尚、そんなものに拘り

 自身の生を死に向かわせるのか。

 周りも巻き込んで。

 哀れなり。

 確かに一撃一撃は重く鋭い。

 あの頃と何も変わらない。

 ただこいつは知らなんだな。

 我がどう言う戦いを経て今居るのか。

「何時まで涼しい顔をしているつもりだ!」

「何時までと言われてもな。この戦が終わるまでだ」

「何だと!?」

 剣戟が止まる。

 この男の思考を遮れた。

 我は手で合図をし、不意を突いた自軍に

 突撃させて相手の兵力を削ぐ。

「くっ……!貴様!」

「貴様とは何だ。お主とは戦歴が桁違いになっているのだ。お主が最強であったのは、遥か昔の事だ。今は違う」

「全盛期の姿の俺がお前には敵わんとでも言うのか!?」

「敵う筈なかろう?我はお主が死んだ後も幾多の豪傑と渡り合い、大王の為に戦い続けたのだからな」

 そう我が言うと男は笑い声をあげる。

「ああそうだったな。実に間抜けな城攻めをしたものだ。孫権の小僧に良い様にやられた揚句、蜀とかいう孤立した国を崩壊に押しやったのだからな」

 なるほど。

 死しても固執していてくれたのは有り難い。

 だが結果を局地的に見ているのは

 戦略眼が狭い証拠だ。

 陳宮が居なければ何も出来んのは変わらず。

「まぁお主程度ならそう見えるのだろうな」

「……おのれぇええええ!」

 怒りにまかせた攻撃は重さを増している。

 だが体に染みついた武芸は剥がれない。

 実に良い武将だ。

 だが時節を読めないのが哀れだ。

「俺の馬を奪った上に俺を愚弄するのか!」

「愚弄などしてはおらん。ただお主程度ならその位の戦略眼しかないから仕方がないと肩を持ってやったのだぞ?感謝こそされても怒られる覚えは無いが」

「貴様ぁあああ!」

 しかしどうするか。

 この男の動きは怒りで多少力が入って入るが、

 動作は効率的だ。

 体力の消耗を狙うにも、

 それがあるのかも疑わしい。

 それは我も同じではあるが。

 しかし不気味ではある。

 我が皇帝であれば、この男だけを

 差し向けるのは考えられん。

 しかし皇帝の手駒にこれ以上の者は

 居らん筈だ。

 だがどうも腑に落ちん。

「ほほぅ。流石に呂布では関帝は抑えられないか」

 背後から声が聞こえ、

 直ぐ様背を逸らす。

 矢は通り過ぎ、キンという音と共に

 地面に落ちた。

「まさか……」

「俺様の事を知っているのか?光栄だな」

 その立ち姿はまさに魔王。

 しかし武に武を足して圧倒するとは

 皇帝は何を考えているのか。

 さてこの偉人二人を相手にどの程度持つのか。

 我は二人の間では無く、

 二人と相対するように赤兎馬を進める。

「我を討てる好機であったのに」

「必要無い。俺一人でお前如きは十分だ。悪童、下がれ」

「何だと……!?」

 解り易い展開であるな。

 この二人が連携して戦う事など考えられない。

 だがそれだけに功を競ってこられれば、

 動きが読めない。

 ここは煽って相討ちを狙いたいところだ。

「さっさと去れ。見逃してやる。我はその偉人と勝負だ」

「関羽貴様……!」

「ほらさっさと去らんか。お前如きは俺達と肩を並べるには至らん。そこら辺の雑兵相手に威張り散らしているのがお似合いだ」

「劉邦にいたぶられたのに死んでも治らんとは、お前も噂ほどじゃない」

「別に俺様は構わんぞ?お前から片付けた所で、別に手間は変わらん」

「良かろう!」

 二人は相対す。

 こ奴らは何しに来たのか。

 我は腕を組みつつ耳は兵士達の動きへ向け、

 眼は二人の偉人の動きを見つめた。

 

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