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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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3領主会談【アットホームな職場です!離職率0!】

「はい次の方」

「失礼します!」

「貴女……失礼しますじゃなくて失礼いたします、でしょ?そんな受け答えでわが社に務められると思っているの?もう一度やり直し!」

「ひっひゃい!」

「そういう可愛らしい表現は要らぬ」

「すみません……」

「あのねぇ貴女ねぇそういうねぇ謝り方はねぇダメよねぇ?」

「申し訳ございませんでした!」

 太公望です。

 3領主会談を開いた筈が

 圧迫面接をし始めたんです。

 一人一人突っ込みたいけど、

 突っ込み人員が不足してます。

「あのねぇ太公望さんねぇ私ねぇ御酒が欲しいのよねぇ」

 太公望です。

 特に左端の馬鹿猿が御年寄の真似をしていて

 腹立ちます。

 殴りたいです。

「貴方……コウさんの師父でしょう?面接官に対して何かもてなしは無いの?」

 太公望です。

 右端の妖怪がむかつきます。

 封神したいです。

 でも妖怪なので退治します。

「……太公望殿。それでコウの師を名乗るなど恥を知れ!」

 太公望です。

 関帝は関帝でした。

 封神したいです。

 あ、出来そうなんで封神しときます。

「太公望様落ち着いて下さい。皆様は私の将来を考えてこのような事をしてくださっているのです」

 太公望です。

 公主が長いものに巻き込まれて

 頭の回転が止まりました。

 どうしよう。

 え?

 どうしたらいいのこれ。

 どいつもこいつもぶん殴りたい。

 そもそもの発端はなんだったか。


 3領主会談を開催する為、

 わしは3領主にあくまでも丁寧に

 弟子の願いの為、この先の展望について

 今一度この地に落とされた者同士、

 一度腹を割って話し合おうと書簡を出した。

 期日は返答を待つつもりであったが、

 アリス、ファニー、アルブラハに持たせて

 3人とも領主を連れてきた。

 悟空はこの街だから解るが、

 玉藻と関帝は暇なのか?

 と驚いたが良い機会となったので

 秘蔵の酒を振る舞いながら会談を始めた。

 コウの策について勿論完ぺきではない故に、

 皆で協力する事が不可欠であると言うと

「当然であろう。コウの助けを得ているのはこの国なのだから」

「言われるまでも無い。我が弟子を見届ける」

「そりゃ当然だろ」

 と当たり前だと答えた。

 有り難い事だ。

 だが玉藻には言いたい事は山ほどある。

 それを飲み込んでわしは弟子の為、

 もてなした。

「時に太公望。お主は公主を指導しているそうじゃの?」

「そうだが」

「流石じゃのう」

 意味ありげな言い方に、わしは我慢我慢と

 自分を言い聞かせて耐え笑顔で返す。

「ならばわらわ達がその成果を試しても構わぬな?」

「確かに。この国の未来を託す人物になり得ているのか、我も知らねばならぬな」

「オラはどっちでも良いけど」

 どうしようキレそう。

 こいつら酔いが回ってるのか?

 わしはまぁまぁと言いつつ酒を注ぐ。

 特に玉藻にその様な事を言われる筋合いも

 試される覚えもない。

 国を滅ぼした分際で何を言うのか。

 玉藻と名を変えても、元は同じ

 災厄の権化である九尾の狐の癖に。

「何か言いたい事があるのかえ?」

 明らかな挑発である。

 乗るはずもない。

「まぁ時期が来れば存分にするが良い。公主はこの国の後を託す者。そのようになるべく今は鍛錬中の身」

「あらぁ?自信が無いのかしら?」


 思い出したわしの所為じゃん。

 だが冒頭の流れを誰が予想していたのか。

 て言うか出来るか!

 こいつら領主としてしっかり各領土を

 収めているのだからそう言う才は持ち合わせている。

 特に玉藻は毒気が抜かれているようにも見えた。

 だが戦場と領土以外に関してはダメ人間だ。

 いやそもそも人間ではないのか。

 というか何これ。

 どこの世界の話なの?

「コウ助けてー!」

 わしは堪らず叫ぶ。

「「「やかましい!」」」

 3領主から怒鳴られる。

 これもう怒って良いよね?

 弟子よ、不甲斐ない師父ですまぬ。

 わしもう限界よ。

「貴様らー!」


 こうして3領主会談は酔っ払いの喧嘩で

 幕を閉じる。

「何をやってるんです太公望」

 その声に目を開けると、懐かしい顔があった。

「おう太乙真人。久しいな」

「……久さしいなじゃありませんよ。何をしてるんですかこれは」

「やってられねー」

「……全く貴方は。コンロン山に引き篭もる生活からやっと抜けだしたかと思えば、酒に溺れ喧騒に身を任せるとは。俗世に塗れすぎじゃないですか?」

「いやまぁ……」

「この世界に降り立った時から、私達は私達であって私達では無い。昔の記憶を引き摺って音頭を取れないというのであれば、貴方の利口な弟子を呼ぶしかありませんね?」

「太乙真人のお眼鏡に適った訳か」

「貴方の教えをしっかりとコウは吸収して、風を吹かせる方法に苦しんでいると言うのに貴方と来たら……」

「太乙真人が肩を持つとは余程じゃな」

「太公望」

「解っておる。というかまぁ結果としてはこれで良かったのかもしれん。憂さが晴らせたと言うか、互いに思う所はあったじゃろうし。意味は有った」

「好意的に見ればね」

「わしには相変わらず辛口じゃの」

「当たり前です。特に今は貴方の弟子が弟子として立派にやっているあの健気な姿を間近で見ればこそ、苦言を言いたくもなります」

「ははっ。流石我が弟子」

「仕方ありません。コウを呼び戻します」

「必要無い」

「この有様で何を」

「太乙真人よ。ここに居るのは矜持のある者達ばかり。そして元々群れを成すものではない。各々が力を示し、コウという点に対して線でつながっている事が確認できたのだ。それ以上のものは必要無い。コウがしっかりと作戦を立て実行に移れば、その後は勘で動く。こちらの規律で縛る者達ではない」

「理論に頼るのではなく勘ですか」

「勘こそあの皇帝に挑むのに一番必要なものだと思う。それ以外の事はわしと弟子とで補えば良い」

「確かにそれはそうですね。あれは将帥としてだけでなく、人としての魅力も増してきました。面白い人材です。先が楽しみになってきました。私としては本音を言うと、この国なんてどうでも良いんですよね。コウが大した人間でなければ、適当に教えて困らせて苦しませて頓挫させようと思っていました。この国は他大陸への侵攻をした所で、恐らくは勝てない。皇帝がこの大陸に及ぼしている力は、他大陸では意味を成しませんからね。だったらこの国の人間が自ら選んだ道を進ませた結果を見るのも悪くは無い。ですが今は私の目的は変わりました。何れ誕生する偉大な者の練習場としてこの戦を使います」

「何時になく良く喋るな太乙真人」

「ええ、貴方なら当にご存知でしょう?私は興味深い対象を見つけると、血が騒ぐ。そして今度は生きたまま、生き抜いてもらう為に私の研究を使う」

「実験動物では無いぞコウは」

「実験動物に肩入れするほど私は暇ではありません。ただ今一度大地を踏み、立った時思ったのです。太公望、貴方に力を貸そうと決意した時とは違う、今度は誰も不幸にならない方法で力を貸したいのです。そうしてこそ、私もナタクも今度こそゆっくり休む事が出来る」

「……そうか」

 太乙真人とナタク。

 わしを助けるために、犠牲になったのだったな。

 ならばわしも全力でやらねばならぬな。

「太乙真人、始めるとしようか」

「ええ。私達が居るべき場所へ気持ち良く戻る為の戦いを」

 わしは友の手をかりて起き上がる。

 鼾を掻いて寝ている3領主を置いて、

 太乙真人とわし、コウが置いて行った娘達と共に、

 4領土の帳簿などの整理をした。

 何れ訪れる決戦の為に。

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