引きこもり、謎の世界で美女と逢う
引きこもりを1人加えた
3人の引きこもり達。
その先の物語に進む前に、
一言言いたい人が
出てきたようで……。
「ちょっと起きなさい」
俺はその声に反応し起き上がり
直立不動になった。
「どこだここは」
目の前に広がっていたのは雲の中の
様な光景だった。
ついに死んだか!? と思ったが、
死ぬような事は思い当たらないし
死んだところで天国に行けるはずもない。
とするとこれは夢か。
「夢では無いわよ」
どこからか声が飛んでくる。
女性の声だが威厳に満ちた声に
直立不動が解けない。
「お行儀が良い子は嫌いじゃないわ」
声が届いた次の瞬間、深紅のドレスに身を包み、
それが映えるほど真っ白な肌。
床に突くほどの長い黒髪に
整った顔立ちと宝石のような瞳。
絶世の美女が目の前に現れた。
クレオパトラを映画に出すなら、こういう美女が
配役されるに違いないと思うほどだ。
「ふふ、ありがとう坊や。
そんなに褒められると照れるわ。
まぁ美しくないと、
好きな相手に失礼じゃない?」
「はっ!」
俺はそう問われて同意以外出来ず、
何故か敬礼していた。
「まぁそう硬くならず……
と言っても仕方が無いか。
今回は特例だしね。本来逢うはずのない
私達ですもの。
仕方ないと言えば仕方ないわね」
「はっ!」
「もうそれ飽きたから止めて頂戴。
しつこいのは嫌いよ」
澄んだ瞳に炎が灯った気がして
直立不動を背筋が痛くなるほど
全力でしつつ、口を開かなかった。
「まぁあんまり長く接していると、
坊やの精神が参ってしまうから手短に。
貴方の剣、あれを使う時は
もう少し慎重に使いなさい。坊やは元々の力が
あるのだから、人族獣族程度なら捌けるわよ。
武器に頼る前に体の使い方を学ぶのが先ってこと。
あの剣はジョーカーなの。毎度毎度ジョーカーを
切れるゲームなんてないでしょう?」
俺は高速で頷く。それしか出来ない。
「解ればよろしい。ネーミングセンスが
イマイチだけど、解り易い部分は買うわ。
大事に使いなさい。私が気まぐれで
祝福を与えて誕生した、
あの世界に置いてきたどの剣より強い剣。
あのダークエルフが言ったように、何でも
斬れるんだもの強いはずよね」
「ありがとうございます!」
俺は何とか頑張って感謝を口にした。
すると絶世の美女は眼を丸くし、口を開けた。
「……凄いわね坊や。私を前にして口を
利けるなんて。面白いわ。
坊やがあの世界で生きていけるかどうか、
これからも楽しみにしています。
今回は特別サービスとして、
リスク無しで戻れるようにしておくから。
また逢いましょう……
なんて気軽に言える立場じゃないけど、
縁があると良いわね」
妖艶に微笑みながらそう俺に言うと、
俺は雲の世界から暗闇へと戻った。
謎の世界での
出会いを終えて現実に戻る。
おっさんの自分を
坊や扱いするあの美女は
何だったのか。
この出会いが
今後どのような影響を
与えるのか。
引きこもりはそう暗闇の中で
思いつつも思考は停止した。




