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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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戦略の始まりは

 関帝にお帰り頂いた後、

 俺達は悟空さんの酒場に戻り、

 修行の話をした。

 ファニー達の顔は話が進むにつれ

 顔が険しくなり、最後には泣きそうに

 なっていた。

「コウ……よく頑張った」

「アンタ偉いよ!」

「コウ殿、私は貴方を尊敬します!」

 あれ可笑しい。

 俺が泣きそうになってるんだけど。

「コウはよく耐えた。時間の流れがこことは違う中でな。もう二度とやりたくないじゃろ」

 師匠にそう言われ俺は即答しなかった。

 そして俺が脳筋になりつつある事を悟り、

 何とも言えない気持ちになった。

「太公望も相変わらずえげつねぇなぁ。そんなんだから弟子取ろうとしても逃げられんだよ」

 悟空さんが料理を運びながらそう咎める。

「愚か者。楽な修行なんぞ修業とは呼ばん。これを耐えられてこそ、得るものがあるのじゃ」

「で、師匠。ここからの話ですが」

「うむ」

 俺は明日から諸領を回って様子を窺いつつ、

 領主達と話して蜂起を促そうと思っていると伝えた。

「確かに悪くはないがな」

 師匠は難色を示した。

「やはり私が兵を率いると言う部分が問題でしょうか」

「うむ。お主が今のままでは武だけは示せても、兵の信頼を勝ち得るには少し足りない。ましてや策を用いて皇帝と相対するという大事をやろうというのじゃ。一兵も指揮した経験が無い指揮官や軍師に誰もついてこんじゃろう」

「そうですね……」

「何より急いではならん。急いては事をし損じる。事コレに関してはし損じる訳にはいかんのだ。お前の策をしくじれば、この国は更なる混乱を招き、お前が皇帝と同じ国を苦しめる元凶となってしまう」

「はい」

「何より今は地固めが重要。幸いにして関帝が味方になってくれる。関帝の元へ赴き、馬上の戦い方と兵の率い方を学び、先ずは将帥として一人前になれ」

「心得ました」

「で、わしは娘子達と、甚だ遺憾ではあるが、トウショウで統治について仕込んでおく。内政についても心得が無ければならん。特にシン公主は今後の事もある故特にな」

「わ、私も太公望様に教えを請えるのですか!?」

「仕方あるまい。コウの策の肝でもある。だが先に断っておく。わしは女子供だろうと男だろうと区別せず同じように鍛える」

「我もか!?」

「私も!?」

「当たり前じゃろうが!……いやまぁコウに今後付いて行かないというのであれば、学ぶ必要はない。コウにコンロン山で修行した際に色々と話をしてみたが、都市機構などに関してはお主たちが思う以上に知識がある。そして仮の話もしてみたが、中々興味深い仕組みなどもあった。だからこそ内政よりも将帥として磨く事を優先している」

「うぬぬぬぬ」

 ファニーは唸り、アリスはこちらを睨んでいる。

 まぁ確かにそう言う話を詳しくした事は無いけどね。

 そういう状況じゃなかったし。

「文句があるならシン公主のみで良い。わしも暇ではない。ある程度進めば、コウに戦場での戦術を教えつつ、戦略を組み立てる方法を伝授せねばならん。嫌なら手間が省けて結構」

 太公望様は料理をガツガツ食べながら、

 しかし口にモノを入れて喋らず、

 一回一回飲み込んでは話を繰り返した。

 流石名師。

 お腹が空いててもその作法は一流。

 そして怒らず理由を述べつつ、断れば良いと言いつつも、

 断り辛い方向へと向けていた。

 なるほど、勉強になる。

 俺が頷いていると、太公望様は俺にだけ解るように、

 口元を人差し指で掻いた。

 思い返せばこれも、コンロン山で滝に打たれるという

 修行をした時に声が聞こえなかったので

 作ったサインである。

 ”それで良し”

 結局滝に打たれる修行は何の意味も無いと言われ、

 語る事も無かったのだが、このサインを会得した

 だけでも価値があったのかもしれない。

 俺は頬笑みで返す。


 結局ファニーとアリスは渋々納得して太公望様の教えを

 受ける事となった。

 その夜はその後は皆黙々と食事をし、

「やっとお主の呻きから解放されると思うと嬉しくて仕方ないわい」

 と言う太公望様の別れの言葉を聞いて

 就寝し、朝早くシレイの街へと旅立つ。

 俺は唸りはしなかったものの、未だに

 浅い眠りを繰り返す感じで、熟睡していない。

 なので何時起きても問題無いのだが、

 あまり別れを惜しんでも居られない。

 時間が掛かるのに時間が無い。

 なら後に多く時間を取る為に、

 非情ながらも先を急ぐ事にした。

「オラだけの見送りだけど、まぁ仕方ねぇな」

 朝早かったので、トウショウの北門までは

 悟空さんだけが見送りに来てくれた。

「では悟空さん、また」

「ああ、キッチリ強くなって帰ってこいよな!」

「はい!」

 握手を交わし、俺は馬を走らせた。

「ではコウ、行くか」

 いつの間にかアルブラハさんが合流してきた。

「アルブラハさんの用は済みましたか?」

「であれば問題無い。ここは竜と縁がある大陸だ。使者と会うにもシルヴァ大陸よりは容易い」

「国の方は如何でしたか?こちらに時間が掛かってしまい申し訳ないのですが」

「であろうが、お前が兵を率いても強くなれば、我の国も助かる可能性が高くなろう。また策も実ればそれは我が国に利益をもたらす」

「武人としても関帝と矛を交えたいのでは?」

「であるぞ!生憎使者とあっていなければ我が駆けつけて一勝負したかった所だ!」

「それは叶いましょう」

「であるか!胸が高鳴る。そしてお前とももう一度相対したい」

 そう目を輝かせて俺を見るアルブラハさん。

 ホントこの国には武人しか居ないんじゃないかと

 思えてくる不思議。

 俺は笑ってごまかし、俺とアルブラハさんは

 シレイの街を目指して途上に位置する首都を迂回しつつ、

 北上した。

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