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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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元始

「うぎぎぎ」

「コウ、全身に力を入れるでない」

 そう言われて力を抜くと、直ぐ解けた。

 そして太公望様の持っている書物をが

 頭を直撃する。

「そうではない。丹田に力を入れて気を抜くなという事じゃ」

「丹田」

「臍の下じゃ。下っ腹に力を入れて集中せよ」

「はい」

 とは言うものの、どうしても力が入ってしまう。

 というか今夜中なんだよなぁ。

 寝れずに唸っている状態である。

 太公望様から方法を教えてもらって数日経つが、

 イマイチ上手くいかない。

 一息つけば解除される。

 黒隕剣の状態とは全く別の様だ。

「こう毎晩やられては、わしも眠れぬ」

「すみません」

「はぁ……仕方が無いのぅ。こうなったら最後の手段しかない」

「最後の手段ですか?」

「そうじゃ。取り合えず維持しつつ、意識を深く潜れ。それで解けても今日は問わん」

「良いんですか?」

「良い。明日もっと厳しい目にあうのじゃからな。今日くらいわしもお主もゆっくり休もう」

「はい」

 俺はそう言われると、維持しようとするが

 睡魔が直ぐに襲い掛かり、眠ってしまう。

 だが俺にとっては数秒しか経っていないと

 思えるほど早く

「起きろ!」

 という太公望様のその声に目を覚ます。

「はい!」


 俺は寝床から起き上がる。

 そして前を見るとそこは雲の上だった。

 俺は一瞬まだ寝ているのかと勘違いしたが、

 太公望様に小突かれてハッとなる。

 どうやら寝ている訳ではないようだ。

 あのアーサーとの戦いの後などの、

 気を失った時のような状況なのかな。

「姜子牙、それがお主の弟子かえ?」

 後ろを振り返ると、そこには竜をあしらわれた

 玉座に座り、小さな冠を被り袖で手を隠した

 老人が居た。

 明らかに偉い人だと伝わる。

「はい、毎晩うなされる弟子に参っておりまして、参上した次第です」

 太公望様は膝をつき、右拳を隠して頭を下げた。

 俺もそれに習い頭を下げる。

「ほほほ、確かにのぅ。時があればもう少し初歩からこなすべきものを、三段飛ばしで身に着けさせようとしたのだから、仕方あるまい」

「はっ、そこで元始天尊様のお力をお貸し願えないかと」

「どれどれ……」

 元始天尊様は玉座を降りて俺に近付くと、

 目を丸くして髭をさすりながらまじまじと見た。

 それはその瞳に囚われて身動きが取れない。

 そして血の一滴に至るまで覗き見られている感覚が、

 俺の体から伝わる。

「ほほう。これはこれは。英雄の相が出ておるな」

「はい、稀に見る男だと思われます」

 太公望様と会話をしている間も、細胞の一つ一つを

 チェックされている何とも言えない感覚があり、

 早く終わらないかと思った。

「すまんなコウ。もう少し我慢しておれ」

 そうおっしゃり笑う元始天尊様。

 しかし俺は笑えない。

 このむず痒いような何と言うか。

 どうも辛抱するのがシンドイ状況何とかならないかな。

「ふむ。宜しい」

 そうおっしゃると、俺の体が解放されたのを感じて

 一息吐く。

「姜子牙、竜を育てるには骨が折れるものじゃ」

「とおっしゃいますと?」

「そのままの意味じゃよ。端折るような事をすれば、それは妨げにしかならない。じっくりと教え込め。竜は賢い。時を経て育てばそれは大きな竜となる」

「夜安眠するのは当分先になりそうですな」

「じゃが時間は無い。後数日した後、コンロン山を降りよ」

「何か下界で異変が?」

「あまり宜しくないの。太乙真人から連絡を受けたが、どうもな。三蔵の身が危ない」

「それは早急に向かわねば。三蔵も皇帝同様自説を曲げぬ男です」

「解っておる。じゃが竜を育てるのが先じゃ。あれも物語になり崇められねばここにはおらなんだのにな」

「定めですな」

「うむ。そしてコウは今物語の中心に居る。それを育てると言う事は、物語をキチッと先に進める為に避けては通れぬ道。今ここで学ぶ事は、この先コウが直面する危機に対応する為に絶対に必要なのだ。これはお主にしかなし得ぬ、この世界での定め。わしはただ見守り加護あらんと祈るのみ」

 そうおっしゃった後、俺の意識は薄れて行く。

「と言う訳なんじゃよ」

「いやどういう訳なんですか」

「聞いた通り。急がねばならんが、直ぐにはどうにもならん。下界は待ってはくれないが、お前が育つには時間が居る」

 そう言われて俺は何とも釈然としない気分だった。

 どうすれば良いのか。

「元始様のおっしゃる通り、数日経った後コンロン山を降りる。それまでは同じ事を繰り返す」

「安眠は遠いですね」

「眠りたければ維持せよ。一流の武将とはな、戦場で居眠りをしても不意打ちを退けるものだ。それは気で自らの範囲を広げているからこそ気付き打てる。お主も満足に寝続ける事はもうこの先無いと心得よ」

「思ったより大変だ」

「甘かったの。前までの戦いと、ここでの戦いは全く別物。馬で例えるなら仔馬と駿馬位の差がある。戦いの流れも数もお前の一瞬の遅れが敗戦につながる。一騎で切り開ける道も局面を変えるには至らん」

「心得ました」

「なら起きようか」

「え」

「え、ではない。もう朝じゃ」

「ウソでしょ」

「嘘なものか、見てみよ朝日が昇っておるわ」

 こうして俺は寝たか寝ないか解らない状況のまま

 日課をする事となった。

 そして数日後、俺と太公望様はコンロン山を降り、

 トウショウへと向う。 

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