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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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コンロン山へ

 俺が眼を開けるとそこは宿では無かった。

 左右を見るが見覚えが無い。

 ただ下の方が賑やかなのは直ぐ分った。

 と言う事は悟空さんの居酒屋の上の階か。

 俺は一息吐く。

 倒せたという感じでは無いな。

 毎度毎度倒れて居たら、

 一撃で倒さなければならない。

 皇帝は俺の技を耐えるだけの

 気迫が恐らくある。

 外せばお終い。

 となるとやはりコントロールを学ばないと

 ダメだな。

 俺は腕を組みながら天井を見る。

「よう、目が覚めたみてぇだな」


 左側から光が漏れる。

 悟空さんがお盆に何かを乗せて

 入ってきた。

「お手数おかけしたみたいで」

「いやいや、オメェを運んだのはオメェの仲間だ。後で礼をちゃんと言っておくんだぜ?」

「はい」

 俺が短く答えると無言が続く。

「あの勝負は勝ちか負けかで言ったら」

「負けですね俺の」

「辛く言えばな。オメェの力はスゲェ。それはオラも認める。だけどそれじゃあの皇帝は倒せねぇ」

「その為にコンロン山に行ってきます」

「へぇ!ちゃんと解ってるんだな」

「いえ、玉藻さんに言われて」

「玉藻か。あの姉ちゃんも腹黒ぇからなぁ。細かい事を言わなかったのは自分で体験して来いってことだな」

「そう思います。恐らく力のみではなく、知略も磨く為に」

「まぁオラはオメェも知ってると思うが、ああ言う者達が苦手だ。ただその筋においてはオラよりも優れてる。生憎オラは細けぇ事は教えてやれねぇ。オメェはそれでも身に付けるだろうが、それじゃあ時間が掛かり過ぎる」

「ですね。虎の穴に飛び込む他無いですね」

「そういうこったな。オラは悪いけどついて行ってやれねぇが、仲間はオラの所で預かっておくな」

「良いんですか?」

「一人で行くべきだろう。あの山の者は皆小難しい連中ばっかだしな。仲間を連れて行けば、いらねぇ嫌みを言われかねねぇ」


 悟空さんは苦い顔をしてそう言った。

 俺はそれが面白くて小さく笑う。

「仲間にはここでこの国の大体の事情を、オラの仲間から聞いて整理して、オメェが帰ってきた時にオメェ以上に状況を把握させておくから、安心して行ってくるといいぜ」

「恩にきます悟空さん」

「いいってことよ。オラも何かしなくちゃいけねぇとは思ってはいるんだけど、苦手なもんは苦手だしな。それがオラらしいと言えばそうなんだけど。だからオラは拝まれる者に窮屈さを感じてたわけだ。こうして人間達と言葉をかわし生活をする事で、自分で言うのも何だけど師匠と旅していた頃よりは更にマシになったと思うぜ」

「法師様は?」

「師匠はああ言う人だから、一つ所に留まらねぇ。この国を憂いて諸国を回っているはずだ。だけどオラは心配で仕方がねぇ。何せあの人は時にオラより過激だしなぁ」

「天竺を目指した方ですからね」

「そうそう。当時は誰もがそうは思っても出来ねぇ事を、やり遂げちまった人だから。だけど驕り高ぶっても居ない。一人でも多く救う為に旅をしているのさ。でもあの人が皇帝に説法しようとしたら不味いわな」

「確かに。有無を言わさせなさそうですね」

「間違ったら斬られかねねぇ。オラとしてはオメェの策を聞く前に、力をつけて欲しいとは思ってるが、急かす訳じゃねぇんだけど」

「解っています。なるべく早く戻ります」

「すまねぇな。オラはここから動けねぇ。だけどオラも玉藻も力を蓄えている。縛りを多少緩められるようにな」

「解りました。一休みさせて頂いたので、早速出ます」

「……ホント悪いな。でもまぁこれだけは食ってけ」

「これは?」

「粥に薬膳をタップリ混ぜて魚醤油で煮込んだものだ。精力が付く」

「薬膳に隠し味がありそうですね」

「まぁな!餞別だと思ってくれ。オメェにはオラの苦手な人達に会ってもらわないといけねぇからな」

「有り難く頂戴します」


 俺は悟空さんの御盆から器を受け取り、

 粥をレンゲで掬い口に含む。

 魚醤油の独特な味のお陰で、苦さが際立って出ておらず、

 食べ易かった。

 そして粥の暑さなのか汗がぶわっと出てきた。

「新陳代謝を高め、気の通りを良くするものを入れてある。体力も回復しているはずだ。オラが師匠から教わった特別な薬膳だからな!」


 悟空さんは胸を張る。

 それを横目で見つつ、俺はあっさりと粥を平らげた。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした。早めに帰って来いよ」

「頑張ります」

 俺は悟空さんを握手をし、そのままその部屋の窓から

 外へ飛び降りる。

 そして近くの馬を引いて店の前に戻ると

「ここから東に行くと、漢字の山みてぇな3つの頂きがある山がある。その真ん中の雲が覆われている先に居るから。気ぃつけて行って来い!」

「はい!」

 俺はシンの部下達を真似て右拳を隠して頭を下げる。

 悟空さんも同じようにしてくれて、再会を誓い

 俺は一人コンロン山へと向かうのだった。

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