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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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引きこもりから御大臣て身分差激しくて疲れる件

「やっと着いたか」

 俺は船首に登り、ブロウド大陸を眺める。

 街並みはエルツやグラディエとは違う。

 ネットで見た昔の中国の街並みの絵と

 似た雰囲気のする。

 歩く人達も中国服を着ていた。

 いやぁワクワクするなぁ。

 どんな風習とかあるんかな。

「何とかは高い所が好きらしいな」

 背後から失礼な言葉が飛んでくる。

「船室で七日間のびてた奴のセリフかそれは」

「ふん。空を飛ぶならまだしも、海を行くなど非効率だ」

「へーへー。で、その人達何してんの?」


 ファニーとアリス、アルブラハさんを囲むように、

 シンとお供達が膝を突き右拳を隠して

 頭を下げていた。

「お前が降りんから待っておるのではないか」

「……え、俺待ちなの?何でそんな事になってるの?」

「うつったのよ」

「何が」

「馬鹿が」

 ファニーとアリスはハモリながら言う。

 何だよ馬鹿って。

 俺は確かに賢くないけれども。

 馬鹿は言い過ぎじゃね?

「コウ様、ここはウンチャンの街で御座います」

「ここはコウ様がおっしゃられた通り、首都との間に天然の要害が御座います」

「身を立てるならここが最適かと存じます」


 ……様って誰だ。

 俺はファニーとアリスを見るが、

 手招きするのみだ。

 俺は項垂れながら、船首から甲板へ降りる。

「良かろう皆の衆。ここから我らは始まる!いざ行かん!」

「はっ!」

 俺は関ヶ原に攻め込む勢いであさっての方向へ

 剣を抜き放つ。


 ……あれ。ボケたつもりなのにスルーされた。

 しかもファニーとアリス、

 めっさ白い目して俺を見てる。

 君たちツッコミ要因だよね?

 ボケたらツッコまないと成立しないじゃないのさ。

「上陸の準備をせよ!」

「コウ様の渡る場所に敷物を!」

「準備に手間取るな!急げ!」

 わーお。

 誰も突っ込んでくれない上に、

 めっちゃ気合い入ってるんですけど。

 どう言う事なの?

 あれか。

 ここから先ボケたらダメなんか。

 ボケたら放置されるんか。

 ボケ殺しなんか。


 こうして俺はボケを盛大にスルーされた揚句、

 赤い豪勢な敷物の上を歩いて船着き場へと降りる。

 うわーめっちゃ周りの人見てるよ。

 てかこれ出航前にやったやつだよね。

 同じボケ2度したらダメじゃね?

 左右を見るが相変わらずスルーする

 ツッコミ要因。

 アルブラハさんは気にも留めない。

 こういう展開は予想して無かったわ。

 ツッコミ要因連れてくるべきだったか。

「コウ様、取り合えず宿を取って参りますので、暫しお待ちを」

 お供の一人が俺とシンに頭を下げて

 足早に去る。

 何か体中がムズムズする。

 

 俺は頭を掻いて空を見る。

 同じ空なのに何か冷たいよここ。

 

 などとボケを通すのはここまでだ。

 降りたらそれはもうスタート。

 相手は統一を成し遂げた男。

 さて先ずはこの街について調べないと。

「取り合えず道具屋にでも行きますかね」

「いや家来が帰って来てないわよ?」

「家来ってなんだ家来って。家来なんて言葉この世界にあるんかい」

「私の上司は多趣味なのよ。色々教えてもらったわ」

「いらん知恵を増やすな。それに家来とか居ないわ」

「コウ様、お待たせいたしました」

 その声の方向を見ると、

 そこにはお供一人に衛兵20人と団体さんが居た。

「これはまたエライ歓迎の仕方だな」

「そうね」

「あーまだ我は気分がすぐれぬのに」

「であるな。どうもゆれてる気がする」


 マジッすか。

 ぐだぐだ過ぎじゃね?

 こうなったら俺一人でも。

 俺は意を決して構える。

 だが次の瞬間、衛兵20人も武器を置き

 お供の一人と同じように膝を突き右拳を隠して

 頭を下げた。

 えー。


 それから某ランドの行進のような目立ちっぷりで

 街を闊歩する羽目になった。

 これ嫌がらせじゃね?

 もう視線が痛くて堪らない。

 どうすんのこれ。

 情報収集とかどうすればいいの?

 某ネズミみたいに愛想振りまけばいいの?


 マジかよ。

 頭痛しかしない。

 ただでさえ異国人だから

 出来ればひっそり行動したかったのに。

 でもそれももうダメだな。

 てことはここで頭を切り替えよう。

「コウ様、ここが今日の宿で御座います。質素な所では御座いますが、ご容赦くださいませ」


 あー解る解る。

 それすっごいフリだよね。

 ボケてるんだよね。

 明らかにこの街並みの中で

 超ド派手な装飾と歓迎とか

 看板立ってるんだけども。

 質素って言葉から突っ込んだらいい?

 俺は見るが

 ツッコミ要因は何事も無かったかのように、

 宿っていうか小さな御城みたいな所へ

 入っていく。

「コウ様、行きましょう」

 シンすらその扱い。

 えー。

 もう何回えーって言ったか解らないけど

 何度でも言う。

 えー。


 いや他にえー、って言いたい人が居るのは解るよ。

 解るけども、何の流れでこうなったのか、

 俺には理解出来ん。

 つーか物語が進まない。

 もう強引に行くしか無い!

「誰か。この街を統治している人物に会いたい。繋ぎを付けてくれるか?」

「はっ。私めが参ります。宿でお待ちを」

 お供の一人が俺の前に来て、

 片膝を突き右拳を隠して頭を下げると、

 足早に去っていく。

 もう良い。

 もうツッコまない。

 この大陸ではこういう流れで行くのね。

 あー解った。

 行ってやる。


 俺はもう開き直って宿、

 ではなく小さな城へと入る。

 入口に腰かけるとお供がすかさず駆け寄り、

 俺の鎧の脚の部分を丁寧に取ると、

 俺の素足をお湯で洗う。

 そして布で綺麗に拭くと、

 頭を下げて下がる。

 ……ス・ト・レ・ス。

 俺はそう思ってフッと笑う。

「馬鹿やってないでさっさと行くわよ」

「はようせよ。我は気分が悪い」

「である。コウよ早く来い」

 先を歩く俺の仲間たち。

 仲間だよなあれ。

 すっごいイーッてなるわ。

 ホントマジ戦い始まったら暴れたる。

 

 部屋へ案内されると、

 俺だけ別の部屋でアリス達は同じ部屋。

 アルブラハさんも居るのに同じ部屋。

 もう良いの。

 突っ込まないって決めたもの。

 コウ、負けない!


 俺は力むも直ぐに止める。

 ボケてもスルーされるからなぁしょうがない。

 すると扉をノックする音が聞こえる。

「コウ様、宜しいですか?」

「どうぞ」

「では失礼いたします」

 お供の一人が入ってきた。

「名は何と言うのかな」

「ハオとお呼び下さい」

「ではハオ、どうだった?」

「はっ。繋ぎをつけようとしたところ、どうやらコウ様の読み通り、不穏な動きをしているようです」

「だろうね。こんな行列を許す位だ。何処かで練兵中かな?」

「はっ。そのようです。どうやら要害の近くで練兵をしつつ、何かをしている様子で」

「ならハオ、探りを入れてみてくれるか?」

「心得ました」

「一つだけ。身の危険を感じるまでする事は無い。遠目からで良いから兵の動き、指揮官の動き、配置や設備などを控えて来てくれ。こちらの動きを察知されると面倒だ」

「はっ。必ず」

 そうして頭を下げてハオは去っていく。

 キビキビしてるわ。


 俺は考える。

 一気に立場が変わってやりにくいが、

 何とか皆に働いてもらって、

 情報という武器を先ずは手に入れよう。

 そしてどう皇帝を釣り上げるか考えないと。

 俺はふかふかの布団の上に寝転びながら、

 初めて見る天井にこれからの戦いを思うのだった。

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