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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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船出

「我はコイツと一蓮托生である」

「私の方がその意味合いは強いのよ?」

「いや僕らも同じだよね?」

「私も納得がいきませんわ!」

「アタチも行くんだのよ」

「私も異国の技術をですね」

 女性陣は其々主張している。

 俺はその輪から外れてボーっと眺めていた。

 ボッチである。


 そんな俺の肩に手を置き、

「行け、コウ」

 そうクロウディス王は告げた。

 リムンが輪に加わっていたので、

 シン・タオも外に出ていた。

 申し訳なさそうな顔をしている。

「シン、申し訳ないと思うなら、さっさと片付けるぞ」

「……ウン。有難うオッサン」

 えー。

 シンにまでおっさん呼ばわりされるんか。

 俺はがっくりしつつも、シンの手を引き

 ゆっくりとその場を離れる。

 闘技場の入口まで来ると、走り出す。

「シン、船はどこだ?」

「私が案内するヨ!」

 今度はシンに手を引かれ、

 船着き場まで走る。

 街は相変わらず賑わっていた。

 皆笑顔のまま。

 この街に国の住人とロマン溢れる冒険以外

 必要無い。

 俺はそれを護りたい。

 俺ももっと冒険したいんだ。


 街の東を走り抜けると、

 そこは船着き場だった。

 川に船が何艘も並んでいた。

「シン、どれがブロウド大陸行きの船なんだ?」

「エト……」

 シンは辺りを見回す。

 そしてそこにはこの国の恰好では無い一団に出くわす。

「おだやかじゃないな」

 俺を見てそいつらは一斉に拳を構えた。

「皆!連れて来たよ!オッサンが力を貸してくれるって!」

 シンはそいつらに近付こうとしたが、

 俺が押し止める。

 殺気をまき散らしている。

「大方シンを連れて助っ人を探すふりをして、この国の内情を探りつつ、俺をやりに来た訳だ」

 と解説する。

 その一団は構えを崩さず俺達を囲む。

「シン、悪いが自分の身を護る事だけに集中しろ」

「エ……」

 信じられないという顔をしているシンをよそに、

 俺は囲まれた時の破り方を実践する。

「でやっ!」

 囲んでいる中で一番偉そうな相手に突っ込む。

 流石鍛えられている。

 俺の不意打ちを難なくかわした。

 シンと戦っていなければ、

 そいつが繰り出した突きをかわせなかった。

 俺は流れるようにそれをかわして

 背中で腕を取り、両腕で挟んで

「どうする?お前なら解るはずだ。このまま力を入れれば折れる。反対なら曲げられたろうが、この方向なら折れる」

 そう告げると俺の体を叩き、

「……御見それ致しました!」

 俺が腕を解放すると、俺を囲んでいた全員が、

 右拳を左手で包み、膝を地面に付けて

 頭を下げた。

 えぇー。

「ちょっ、やめて!恥ずかしいから!」

「そうは参りません!我らの無礼をお許しくださいませ」

 俺は一人一人に言葉を掛けるが、

 誰もおなじ事を言う。

 何これ、新手のイジメなの!?

 周りの人達がヒソヒソしてるし!

 人が居ない時間を狙って出た引きこもりに対する、

 近所のオバハンみたいなのが回りに

 出来始めてるし!

「ホント勘弁してください!」

 何故か解らないが俺が土下座するハメになった。

 意味解らん。

「お止めくだされ英雄殿!」


 今度は頭下げていた人達に囲まれ、

 宇宙人捕まえました的な感じになった。

「英雄殿、どうか、どうか頭を下げないで頂きたい」

 情けない声で俺を捕まえている人達は言う。

 てかそう思うのは解るが離してくれないかしら。

「皆、ビクリしたヨ!」

「姫、姫が見定めた方ですから疑う事は無かったのですが、我らもその腕見てみたかったのです。ですが無用な事をしてしまいすみません」

「ソウだヨ!」

 シンと仲間たちは笑いあう。

 違うよね。

 俺のこの姿を見て笑ってる訳じゃないよね。

 うん、解ってる。

 解ってるんだけど何か切ない。


「帆を張れ!」

 俺は甲板で体育座りしている。

 元気良く出港準備を急ぐシンの仲間たちから離れて。

 ヤバイおっさんなのに泣きそうである。

「あのーオッサン」

「おさっんだが名前がある……」

「コ、コウ。何を落ち込んでるか知らないケド、元気出すヨ」

 俺はその言葉を聞いて顔を膝にうずめる。

 やってられねー。

 英雄とかの扱いじゃないだろ。

 確かに英雄の扱いとかされたいわけじゃないけど、

 雑!

 雑はミニマムハートにとって傷付く。

「ちょっとアンタ!このオッサンの扱いは慎重にしてよね!」

「そうだぞ!この年で幼子並の傷付きやすさなのだ!」

 

 酷い扱いである。

 元の世界よりダイレクトアタック激しい!

 俺は声の方向を睨む。

 すると其処には声からしてアリスとファニーは解ったが、

 何とアルブラハさんが二人を背に乗せて浮いていたのである。

「で、何をしているのだコウ。俺を倒した男が」

 いや戦いとかじゃなくてスマートに雑に扱われるのは

 シンドイの。

 ガラスハートなの。

 壊れやすい心抱えて走れないの。

「皆着てくれるノ!?」

「である。我も他国を視察したい。そして一人の剣士として、タオの一族の強さに興味があるし、そこへ何の策も無く乗り込む男の行方も気になるしな」

「アルブラハは竜人族だ。我は正真正銘竜であるから、言わば偉いのだ」

「私はコウと契約してる者だしね」

 あーはいはいそうですね。

 皆の中では俺は強い人扱いだものね。

 解りましたよ。

「アルブラハさんお供は?」

「であれば置いてきた。お供を連れて行けば怪しまれよう。最もこの面子でも十分怪しいがな」

「そうっすか。でもホント責任持てませんよ?」

「であろうな。だが胸が躍る」

「やれやれ」

 俺はしょうがないなぁと思いながらも、

 嬉しく思った。

 後先考えない、国を敵に回すかもしれない

 死地に喜んでくるとは。

 アルブラハさんも物好きらしい。

「なら行きますか!タオの一族の国へ」

「応!」

 俺たちはこうして未知の大陸である

 ブロンド大陸へ向かう船旅が始まった。

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