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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
戦いの道-タオ・ヂャンー

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旅立ちへ

 女の子の名前はシン・タオと言うらしい。

 ここから船で1週間ほどした所にある

 ブロウド大陸のタオ一族の一人だと言う。

 タオ一族の女性には特別な力があり、

 一番強い力を持つ者が女王として

 夫である王を選ぶと言う独自の選定方法を

 取っているらしい。

 それでシン・タオの母親を助けられないとは

 どう言う事なのかと言うと、

 その選んだ夫である王が、母親を幽閉し

 兵隊を徴兵し他国へ攻め入ろうとしている。

 元々鎖国状態だったタオ一族が、

 攻める動機になったのは、

 どうやら俺がぶち上げた

 アーサーへの一撃が発端らしい。

 

 あれはタオ一族の力である気の集合体であり、

 それを放てるものはタオ一族以外有り得ない

 という考えを持っていた王は、

 その光に動揺し自らの一族の矜持を

 取り戻す為攻め入る覚悟を決めたと言う。

 何と言う厄介な事を。

 俺は核か何かか。

「で、俺が行って解決する問題なのか?」

 そう問いかけると、シン・タオは俯いた。

 だろうな。

 俺が行った所で俺が放った技は切っ掛けでしか無い。

 今は目的は他国へ攻め入る事になってるのだろう。

 そしてコレも想像だが他国を侵略し、

 領土を広げる口実になった。

「想像だが、シン・タオは世界を見て、この国を見て、アルブラハさんや俺を見て、自分の国が勝てないと感じたんだな?」

「……ソウネ。この国の設備や街で普通に売られている物、ドレも私の祖国ではお金持ちだけが持つ事が出来るモノばかりネ。それを知った時、私はこのままだと私の国、滅ぶと思ったヨ」

「シンは賢いな。そう言う所からその国の国力を測れるのは、御世辞でも何でもなくキチンとした眼を持っている。お母さんの教えが良かったんだな」

 そう俺が言うと、涙をポロポロとこぼしながら笑った。

 まぁこれだけでも胸は熱くなるし、

 腹の底から何か燃えたぎるものが溢れそうになるが、

 猪突猛進した所で解決にはならない。

 徴兵を始め他国へ攻め入る決心を固めている王。

 それをどうやって変えるかが問題だ。


 王を倒す事が出来ればどうにかなるという問題では無い。

 それは頭が変わるだけだ。

 王一人だけが徴兵と戦乱への意思を固めた訳では

 ないだろう。

 どうやって止めるか。

 俺は思案する。

 グラディアス国に頼るのは下策だ。

 それは戦争を意味する。

 となるとそれは除外。

 そうなるとやっぱり俺かぁ。

「シン、徴兵を始めてどれ位になる」

「……一月ネ。皆も困惑していたけど、今はタオの力を見せつけるってやる気になてしまったネ」

 そうか。

 だが徴兵から訓練を経て兵士として

 戦場に出せるまでには少なくとも3カ月はかかる。

 この計算は恐らく国民の間で拳法が根付いているという

 仮定に基づくものだ。

 どちらにしろ、もう迷う暇も考える暇もない。

 行かなければ多くの人が死ぬ。

 向こうで打開策を見つけるより他ないな。

「シン、急ごう。時間はあまりない」

「イイノ!?」

「女の子に泣かれるとおっさんは弱いんだ」

 俺は頭を掻きながら答える。


 俺は喜んでまた泣き始めたシンを

 皆で宥めている間に、部屋を出る。

 そこには全員居た。

「で、コウ。どうする?」

 ファニーに問われ、俺はまた頭を掻く。

「シンの国に行く」

「やっぱりそうなるか。僕はそうじゃないかと思ったけど」

「ですわね」

「……止めても聞かないでしょう?」

 アリスに言われ頷く。

 未知の大陸へ行くのは恐怖があるが、

 行かなければならない。

 止める力があるのなら、

 全てを救う事は出来なくても、

 女の子一人くらいなら救えると思う。

「悪いが今回ばかりは誰も連れて行かない。未知の大陸だし、ぞろぞろと他の大陸の人間が入り込めば察しられて、引き金になりかねない」

 俺は強く告げる。

 これは俺が決めた俺の問題だ。

 死ぬのも一人で良い。

 というか護れる自信が無い。

 皆俺の顔を見たまま黙っている。

 言いたい事はあるだろうが、解ってくれたのか。

「兎に角俺とシンはこれから直ぐにブロウド大陸に渡る。こっちの事は皆に任せた。何かあった時は相談して決めてくれ」

「我は共に行くぞ」

 ファニーは当たり前のように言う。

「だから今回はダメだって」

「私も当然行くわ。参謀がいなくちゃ攻略のしようが無いじゃない?」

「アリス、俺は今回ほど自信が無い事はないんだ」

「責任を取れなんて言ってないわ。寧ろ私は貴方と契約しているんだから同行は当然」

「いや、一人認めると皆認めなきゃならないんだが」

「俺とリムンも行くぞ?」

「ビルゴまで……」

 俺は困惑する。

 未知の戦いで俺が死ぬのは構わない。

 だが誰かが死ぬのはダメだ。

 ここにいるのは信じられる仲間だが、

 こと他の大陸では勝手が違いすぎる。

 

 俺が頭を悩ませていると

 クロウディス王が王妃を連れてきた。

「コウ、お前の言うとおりだ。他の者の同行を認めない」

 王はそう厳しく言う。

「お前達も知っての通り、ギルドの所属すると言う事は、この国に所属すると言う事だ。ぞろぞろと乗り込んでは我が国に戦う気があると思われてしまう。アイゼンリウトの王位継承権を持つロリーナ殿、教会の一員であるウーナ、ドラフト族のビルゴ、鍛冶屋のプレシレーネ、お前達は出国を認めない」

「王様、それはないでしょ」

「そうですわ」

「従えぬと言うのであれば、拘束しても構わんぞ?国の一大事になりかねんのだからな」

「やると言うのか」

「やる。我が国が戦禍を被る訳にはいかんのだ」

「コウは良いという根拠は?」

「俺の使者として行ってもらう」

 クロウディス王がそう言うと、皆押し黙る。


 王の前に王妃が出てきて、

「皆戦火を広げない為に単身で乗り込むのが、コウにとっては一番安全なのよ。ウチの人は王様として悪者になる覚悟で言っているけど、コウの思いも解ってあげて」

 と間を持ってくれた。

 有り難い。

「それは国にとっても一人の犠牲で安心と言う事でもあるな」

「否定はしないわ。でもどうにか出来る可能性を秘めているのはコウしかいない。それは今までの実績が示している。貴方達の力を過小評価するつもりはないけど、解決策や行動そして結果をもたらしたのは誰でもないコウなのよ」

「あい解った。ロリーナ達はそのようにしてくれ」

「え!?」

「そう言う事。私とファニーは元々この国に属したつもりはない」

「アリスまで!」

「俺の話をだな」

「「アンタは黙ってなさい」」

 ファニーとアリスに口を封じられてしまった。

 俺はしょんぼりしつつ成り行きを見守る事にした。

 

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