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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
のんびり冒険者譚

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タオの秘術

「でやっ!」

 俺は咆哮が止むと、直ぐに間合いを詰めて

 斬り込む。

 だがアルブラハさんの緑の炎によって、

 直接ダメージが与えられない。

 これは不味いな。

 ただでさえダメージが通り辛い体が

 更に硬くなるとは。

「では」

 そう言うと、大剣をナイフのように振りまわし始める

 アルブラハさん。

 俺はそれを紙一重でかわす。

 というかナイフみたいに振りまわしているから、

 最小限でかわして次の攻撃をかわさないと

 間に合わない。

 恐らく相棒達で受け止めれば、

 そのまま腕を持っていかれる。

 そうなったら勝負にならない。

 どうにかならないものか……。

 太刀筋を見極めつつ、対策を考える。

「神の息吹ゴッドブレス

 俺は隙を突いて黒刻剣ダークルーンソード

 掲げアルブラハさんを引き下がらせる。

 ここしかない!


 俺は黒隕剣と黒刻剣ダークルーンソード

 重ねて頭上に掲げ、

 相棒、力を集めてくれ!

 と念じる。

 それに答えるように、相棒の元に光の粒子が集まる。

 問題はここから先だ。

 粒子を力に変換して、叩き斬ると

 恐らくアルブラハさんが真っ二つ出し、

 アーサーの時のような威力だと、

 闘技場のお客さんも巻きこんでしまう。

 となると叩き斬るのは不可。

 何か策は無いか。

 俺は無い知恵を絞り、凶悪だがこれが一番

 被害が少なく終わり易いであろう方法を取る事にした。


 相棒、体内に振動を送る事は可能か?


 ――可能だ――


 なら頼む。

 剣を交えた瞬間がチャンスだ。

 だけどある程度手加減は頼むぞ。

 

 ――出来るだけしてみよう――


 頼んだ。

 俺は別にあの人を殺したい訳じゃない。

 だが膝を文字通り屈して貰わないと、

 この戦いは終わらない。

 あの人は納得しないだろう。

 俺が手を抜く事も望んでいない。

 だとしたら、もうこの手しか

 被害を最小限に食い止める方法が無い。

 あの緑の炎はうちの黒刻剣では消せないだろう。

 アリスが言うようにこの大陸で生まれた剣では。

 だとすれば、魔法などではなく生物として

 ダメージを与える方法を使えば良い。

 強い振動を体内へ放てれば、

 どんな生き物だろうと倒れる。

 これも引きこもり時代に通販で買った

 漫画で読んだのだが、中国拳法では

 浸透勁というだ。

 発勁の一つで、通常強く押せば下がり、

 弱く押しても下がらない。

 浸透という字からして解るように、

 その対象を動かさずに体内に勁を送って

 振動させ変化を起こすというものだ。

 生き物の体内には必ず水分が存在する。

 それを外部からの振動で揺さぶり、

 ダメージを与えると言うものだ。


 まぁ理論的にはそうである。

 引きこもりだったので、中国で発売されていた

 本も取り寄せて暇つぶしに訳しながら読み、

 鍛錬をした事もある。

 本物の拳法家ほどではないが。

 しかし毎日続かないのが引きこもりで無職たる

 所以である。

 だがやるしかない。


「うぉおおおああああっ!」

 俺は相棒を掲げながら突っ込んで行き、

 アルブラハさんと剣を交える瞬間に、

 右足で地面を思い切り踏みならし、

 相棒2振りを叩きつけた。

 インパクトの瞬間アルブラハさんの体へ

 衝撃波ではない振動が剣から体へと

 流れ込んで行く。

 最初は俺と力比べをしていたアルブラハさんも、

 次第に冷や汗を掻き始め、

 力が弱まってきた。

 そして俺はそれを見逃さずに壁際へと押し込む。


 流石竜人。

 俺程度の浅知恵一つじゃ倒れないか。

 俺は一かバチか、黒刻剣ダークルーンソード

 背中の鞘に収めると、空いた手で

 アルブラハさんの鳩尾に

 右足で大地を踏みならすと同時に

 右手のひらを鳩尾へと当てる。


「まさか……」

「え?」

「まさかお前がタオの一族の技を知っているとは……」

 そうアルブラハさんはつぶやくと、

 そのまま俺にもたれかかってきた。

 俺はそれを受けとめて、闘技場の地面に寝かせる。

 

「オマエ何て事するカ!」

 壁の上の観客席から、訛ったような言葉が飛んできた、

 と同時にこの国ではあまり見かけない恰好の

 小さな女の子が飛び降りてきた。

「アアト、何処仕舞ったカ」

 身の丈より大きなリュックを下ろし、

 中を漁っている。

「アッタ、コレヨ」

 俺に本を見せる。

 応急処置書って書いてある。

 でもこの国で見ない字だ。

「応急処置書で大丈夫なの?」

 俺は不安になって尋ねる。

 それにカチンと来たのか

「ダイジョブヨ!私の一族の秘伝ネ!」

 と怒られてしまった。

「有難う」

「マッタク。素人がそんな技ツカタラ可笑しな事になるネ」

 そう言うと書物を見て

 アルブラハさんの上半身を起こし、

 背中に手を当てて

「ハッ!」

 と気合いを入れた声を出す。

 するとアルブラハさんは咳き込みながらも

 意識を取り戻した。

「取り合えずコレでダイジョブネ。後は薬草を煎じたコレを飲ませれば」

 女の子は筒を取り出し、アルブラハさんに

 飲ませた。

「不味い!」

 アルブラハさんはそう叫びながら、

 目を開けてむせ出した。

「アタリマエネ。良薬は苦しヨ」

「助かったよ有難う」

「……お前ヤッパリタダモノじゃないネ」

 女の子は筒と書物をしまうと俺に対して

 構える。

「いや、ちょっと」

「今度は私と手合わせしてモラウネ」

「何でまた」

「私もその為にココに来たヨ」

「意味が解らないんだけども」

「知りたいなら私を倒すヨロシ」

「ええ!?困ったなぁ」

 俺が戸惑っているうちに、

 女の子は瞬時に俺の間合いへ

 飛び込んで突きを繰り出す。

 足場に窪みが出来ている。

 アルブラハさんとは違った強さを持っている。

 俺はその突きを黒隕剣を脇に差し

 両手で受けとめる。

 だが次の瞬間、反対側まで吹っ飛ばされた。


 あの姿のどこからこんな力が。

 俺が愕然としていると、更に女の子は

 攻撃を仕掛けてくる。

 これは相当な使い手だ。

 俺は意識を切り替え女の事の立ち合いに

 望むのだった。


 

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