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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!

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引きこもり、初クエストの準備をする

引きこもりにとって

苦手な人物2人にあり、

部屋へ戻るなり気を失った

引きこもりのおっさん。

そして迎える朝から話は始まる。

「あいつ何だよ」

「気持ち悪い」


 小学校の頃、同級生達が体育座りで

見ている中で、俺は一生懸命登り棒をし、

一番で下に降りた。

先生は他が登り切れて無かったので、

俺にもう一度登るよう言う。

するすると登り、また降りてくると

もう一回登れと言われる。

そしてまた登って降りる。

結局授業が終わるまでやらされた。

あの時の経験から、例え上手く出来たとしても

目立ってはいけないと悟った。

クラスの人気者を差し置いてするする登る

俺を誰も称賛しなかった。

それから中学生になって孤立は続いたけど、

弱いと更に虐げられる

と思って登り棒を見つけては登ってたっけなぁ。

 

「はひゃぁ!?」


 俺は寝覚めの悪さにしかめっ面をした後、

何気なく横を向くと

ファニーの顔が間近にあった。

それで女性の様な悲鳴をあげてしまう。

驚くだろう。

親以外に隣で寝ていた事なんて

20年以上ないのだから。


「ん……目が覚めたのか?」


 ファニーは上半身を起こし、

右手で目をこすりながら俺にそう尋ねた。

俺は顔を横に向けたまま硬直していた。

何と言って良いのか解らない。

普通なら役得だと思うだろうが、

俺の場合見た目は完全に思いっきり

ファニーの方が下なのである。

同年代だってビビる。


「さぁ朝ごはんを食べて路銀を稼ごうぞ」


 ファニーは何事も無かったかのように、

俺のベッドから出て背伸びをしている。


「そ、そそそそそうだよね」


 俺は動揺を隠したかったが、

口は正直だった。

機械のように上半身を起こし、

カクカクしながらベッドをから出た。


「何とか歩けそうか?」


 ファニーがいつの間にか横に来ていた。

 凄い緊張するな。


「あ、ああ。な、なんとかいけると

思いますです」

「ん?」


 おかしな口調になっている

俺の顔を覗き見るファニー。

俺は首がグキッと音を立てるほどの

速さで顔をそらす。

そして悶絶した。凄く痛い。

これは今日一日響きそうだ。


「歩けるのなら下に行こう。クエストに

向かわねばならんからの」

「そ、そうだねぇ……あははは」


 俺は自然にしようとしてまた不自然になり

乾いた笑いをしつつ、部屋を出る。


「あらおはよう二人とも」


 階段を下りるとミレーユさんの声が届く。

 綺麗な女性は声も綺麗だ。

 嫌な夢を見た後だから、余計に清々しく感じ

 やっと朝を迎えられた気になる。


「おはよう」

「おはよう」


 俺とファニーはミレーユさんに

挨拶しながら椅子に腰かける。


「朝は軽めが良いかしら」

「それで。昨日色々あったから

サッパリしたものが良いな」

「我もそれで」

「はい、今すぐ用意するわね。

その間に依頼内容を確認して頂戴」

「了解」


 ミレーユは奥へ下がり、俺はカウンターの

上に置かれていた

依頼内容の紙に目を通す。

昨日の出来事で依頼内容の紙を

俺が持っていないだろう事を

考えて準備してくれていたのだろう。

気が利くなぁ。

モテるだろうな、きっと。

俺は微笑を浮かべつつじっくりと読む。

依頼内容はこうだ。


 ”スライムが大量発生して移動する為、

 付近の畑に被害が出ているので追い払って欲しい”


 なるほど。スライムっていうのはぷにぷにした

グミのような感じを想像していたが、

畑に被害が出ると言う事は

粘液を出し地面を移動し易くして

移動しているのだろう。

部屋に置いてきたリードルシュさんに

貰った剣なら問題ない。

実際に試してみるなら恰好の相手だ。


「大量と言う数が解らんが、

まぁコウなら余裕だろう」

「確かに数が解らない点は不安だけどね。

ファニーに火を吐いてもらうのも手だけど、

そうなると焼け野原になるしね」

「うむ。我も何か武器を持った方が良いな」

「そうだね。今後の事も考えると何かあった方が

良いけど、ファニーの力に耐えられるものも

中々ないんじゃないかな」

「我自身武器を所持した事が無いから、

加減が解らん」

「爪と炎だけでいけるからね竜は。

取り敢えず安めの武器を幾つか手に入れて

試してみるのも良いか」

「後でリードルシュの所へ寄ってから

クエストに出ようぞ」

「了解」


 結論が出たところでミレーユさんが

戻ってきて、焼いたパンの上にハムが

乗っているものと小さな器に入った

野菜が出てきた。

この世界にもパンがあるのか。

人が出す結論は世界が違っても

変わらない点が多いな。


「依頼内容は大丈夫かしら」

「勿論。ミレーユさんに気を使って

もらったのが解る内容だった」

「ふふふ。そう言ってもらえると何よりだわ」

「ミレーユさんはこの仕事長いの?」

「そうね小さい頃から手伝っているわ。

今は父が隣街に出向いているから私がメインに

なっているけど、普段はギルド長の父がメインよ」

「そっか……そうなるとお父さんが帰ってくると

ミレーユさんは、サポートになるのか」

「安心して頂戴。貴方達は私が受け持つから。

他の冒険者とは少し違うようだしね」

「それは有り難いね」

「うむ。知らない人間に多く会うと、

コウは人酔いするからの」

「そうかもしれないわね」

「酷いな二人とも」


 俺とファニーとミレーユさんは笑いあう。

引きこもりネタも意外に役に立つ事もあるもんだ。


 俺とファニーは食事を済ませ

二階で身支度を手早く済ませると、

ミレーユさんに挨拶をして冒険者ギルドを発つ。

その足でリードルシュさんの店に顔を出すと


「昨日のはやはり貰い過ぎだ。

ムチにブーメラン、

剣に斧も付けておく。

その娘の力加減を試すのには支障あるまい」


 と言われて武器を色々渡して来た。

 俺が遠慮するとどれかその娘に

合ったものがあれば

定期的に購入してくれれば良いと

言われ押しつけるようにして

渡されてしまった。

そしてこうも付け加えられた。


「お前の防具に関しても色々考えておく。

俺としては久々に怠惰の衣を

脱ぎ捨てる気になったんだ。

稼いでもらう為の先行投資。

ダンディスの言い草ではないがな。

とにかく稼いでおけ。今度は出来に見合った

金額を頂く事になる。覚悟しておけよ」


 そう言われほほ笑みながら送りだされた。

リードルシュさんが本気で作る防具。

俺はそれが楽しみであると同時に

怖くなって依頼先へと急ぐ。

大金を用意しておかないと、

リードルシュさんの気持ちを

裏切ってしまう。

ああいう良い人を裏切りたくない。

自分がされた事を人にしたくない。

気持ちも足も速くなり、ファニーに

首根っこを掴まれて文句を言われ

ファニーに合わせて踏みしめるように

歩いて街を出るのだった。

 

ついにギルドから受けた

正式な依頼によるクエストに臨む、

引きこもりのおっさんと竜の少女。

そこではどんな事が

待ち受けているのだろうか。

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