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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!

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引きこもり、人混みで夕飯をとる

冒険者ギルドに登録した

引きこもりのおっさんと

竜の少女。

宿も冒険者ギルドの2階になり

根城を確保する事に成功した。

 俺とファニーはミレーユさんに

案内された部屋のベッドで

別々にくつろいでいた。

俺は先ず渡された資料に目を通す。

ギルドのルールとしては以下の事が書かれていた。

 


 1.窃盗・殺害・クエストの妨害は冒険者憲章に

  照らし合わせ処分される。


 2.クエストを他者へ譲り渡すことを禁ずる。


 3.戦争が起こった際は各冒険者の判断に委ねる。

  迷いがあれば冒険者ギルドへ。


 4.クエスト外の宝に関してはギルドは

  関知しない。ただし窃盗になれば

  1.に帰する。


 5.冒険者同士の争い事はギルド委員会において

  調停を申し立てる事。



 ギルド証のカードに書かれていたのは

この5つだった。カードの大きさに書ける

必要最低限のみの事だが、解り易い。

冒険者という性質上あまり縛られる事は

好まないという理由もありそうだけど。


「コウ、我は腹が減った」


 隣のベッドからファニーが

気だるそうに俺に言う。

この世界に来てから色々あり過ぎて、

お腹が空いたという事を忘れていた。

というのは無い。実は緊張の連続で

気が張っていたので、牢屋に閉じ込められた後から

何も食べていないのを、ベットで横になった事で

緊張が緩和されて急激に腹が減ったことで

思い出した。


「行こうか」


 そういって俺はよろけながら

ベッドから起き上がる。ファニーが急いで

俺によって来て肩を貸してくれた。


「ありがとう」


 俺は力なくほほ笑むと、

ファニーは照れたように笑った。


「いらっしゃっせー!」


 階段を下りて冒険者ギルドのカウンターに

辿り着くと、威勢の良い声が飛んでくる。

そして声の主が駆け寄ってくると


「新しい住人の方っすね! 初めまして!

オードルと言いまっす!」


 空腹と疲れで耳が痛いと感じるほどの

元気さを浴びせてきた。

オードルと言った青年は、

頭の上にキツネの耳のようなものが

付いており、リードルシュさんとは違う

種族だと言う事が解る。


「ど、どうも」


 引きこもりの苦手な人種だと感じて

挨拶もおざなりになる


「ささ、何をご注文になりますか!? 

当店自慢の一品としては

エッドガモのソテーのセットがありますが!」


 そんな事をお構いなしにセールスして来た。

やはりどうも苦手だ。


「ではそれを2つと飲み物を酒以外で

おすすめを頂こう。

我らはあいにくと疲れておる」

「了解しやした!では少々お待ち

下っさいませー!」


 ファニーが俺の気持ちを察してくれたのか、

さっさと追い払うべく適当に注文した。

オードルはそれを聞いて素早く立ち去る。

かなりSAN値が削られた気がして

ドッと疲れが上乗せされた。

俺はカウンターの上に突っ伏した。


「お待たせしました」


 先程と違った優しい声が突っ伏した

俺に降り注ぐ。

正気度が多少戻った。

顔をゆっくりと上げるとミレーユさんが

エプロンと三角頭巾姿で

目の前に立っていた。癒される。


「うむ。コウは疲れておる」

「と思ったからオードル君には他のテーブルを

任せて来たのよ。コウはああいうの苦手でしょ?」

「はは、解る?」

「ええ。でも悪い子では無いのよ?」

「それも解る」


 コウ、と呼ばれた事で親しみがわき、

ついタメ口になってしまった。

ミレーユさんはそれを快く思ってくれたのか、

鼻歌交じりで食事を並べていく。

ご飯と似た穀物と、

鶏肉のようなエッドガモのソテーが、

バターでこんがり焼かれた様な

匂いがして堪らない。皮がカリカリ

していそうで本当に美味しそうだ。

この世界に来て初めて食べたいと思った。


「おかわりしても良いわよ?

サービスしておくから」

「ありがとう!」


 俺は言葉を聞き終わる前に

そう言って、がっついた。

喉が詰まるとミレーユが飲み物を

差し出そうとしたが、

ファニーが自分のものを差し出して来た。

本来なら自分のものを飲むべき

なのだろうが、急を要したので

それを飲み込み食べ物を胃袋へ押し込む。


「美味い!」


 いつ以来か解らないほどの幸福感に包まれた。

笑顔で天井へ向けて叫ぶ。

暫くすると、後ろの方から笑い声が起こる。

振り返るとそこには多くの者が居た。

誰もかれも冒険者なのだろう。

鎧を着て武器を携えつつ、食事をしていた。


「ありがとうコウ。

さあおかわりを持って来ましょうか」

「ど、ど、どうも」


 気恥ずかしくなり縮こまる。

こんな人混みの中で食事をするのも

覚えが無いほどだ。

急にどう食べたものか戸惑ってしまった。

みられていると思うとどうも気になって

食べ方すら忘れてしまった。


「落ち着け。確かに物珍しくて見られては

いるが、敵意は感じない」

「あ、あ、ありがとう」


 ファニーにそう言われ、一旦深呼吸する。

苦手、ではすまされない。ここからは

一人で生きているのではない。

年長者として男として、ファニーを

支えこそすれ支えられてはダメだ。

 

 そう念じて目を開けるとそこには

先程のエッジガモのソテーと、ご飯の様な

穀物のおかわりが来ていた。

湯気を立たせ匂いも食欲を湧き立たせるもので、

俺はがっつきたい気持ちを抑えながら

ゆっくり丁寧に口に運び噛み締める。


「よう新人さん、随分賑やかだな」


 折角食事を味わっているところに、

男が話しかけてきた。

その声の主はカウンターの横の席へ

腰かけてこちらを向く。


「アンタも冒険者だろ?俺はビッド。

誉れ高きドラフトの剛戦士だ!」


 屈強な男は、頭部の両端から真っ直ぐ

二本の角が生えていた。

また一般人よりも2回りほど体が大きい。

そして声も。

なんでこうも今日は苦手な人間が

次々とわいてくるのか。

改めて引きこもりではない事を実感する。

引きこもっていた事が懐かしい。


「ドラフトとはドワーフに近い種族で確かに

腕力が自慢の種族だな。それは解ったが、

コウは疲れておる。

話はまたの機会に願いたい」


 ファニーは俺の心を読んだのか、

そう言ってビッドと名乗る男に

席を外すよう促した。


「いやいや、お前さん達は俺の話を

聞かねばならん!

何しろ俺は誉れ高きドラフトの

剛戦士だからな!」


 俺はそれを聞いて食欲が無くなる。

ここまでくると、オードルの方がマシな気がする。

無理な人物だ。きつい。部屋に帰りたい。


「それは解ったと言っておる。

名乗りは聞いてやったのだ。失せよ」


 ファニーはゴブリンを威圧し、

リードルシュさんを威圧した時よりも

更に激しい威圧感を放った。

周りは賑やかさから、唾をのむ音が

聞こえそうなほど静寂に変わる。


「なるほど、今日のところは引きさがろう。

だが、お前さん達は俺の話を聞かざるを得ない」

「くどい。その自慢の胴と首を永遠に

一体とさせなくしてやろうか?」

「解った。また逢おう!」


 SAN値がガリガリ削られる。

ファニーの威圧も凄いが、

それでも譲らないビッドに辟易した。


「コウ、取り敢えず部屋へ戻ろう。

顔色が悪すぎる」

「そうだな」


 俺は美味しかった料理を残し、

御代を払おうとすると

ミレーユさんが戻ってきていて首を横に振った。

でも、と言おうとしたが、

体調が戻ったらキチンと払おう。

俺は頭を下げてよろけながら部屋へと歩き出す。

ファニーがすかさずまた肩を貸してくれた。


「ごめん」

「謝るでない。我らは一心同体だ。

相手が困っていたら肩を貸すのは当たり前の事だ」

「ありがとう」


 俺はげんなりしてうなだれながら、

何とか感謝を口にして部屋へ戻る。

そしてベッドに倒れ込んだのは覚えていたが、

それから気を失った。

引きこもり体質が

いきなり改善される事は無い。

しかしビッドの言う聞くしかない

という話とは一体何なのか!?

引きこもりたちはすんなりと

クエストに赴けるのか!?

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