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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!
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引きこもりを、これで止めました!

 日がな一日天井を見続けて

何時間経つだろうか。

生活に必要最低限の事だけを行い、

ただ天井を見続ける日々を過ごしている。

よくこんな状態で生きていられるものだ。


 両親も最初は叱ったり、

聞こえるように陰口を言っていたが、

その内空気のように

俺を居ないものとして扱った。


 弟は出来が良く、根気強く仕事をして

幸せに暮らしている。

何時から間違ったのだろうか。

いや最初から間違っていたのだろう。

生まれた時に死に掛けていた俺を、

蘇生させたのがそもそもの間違いだったのだ。


 幼稚園時代から死に掛けたことを盾に

無理やり水泳やサッカー、

野球などをやらされ泣きながら抵抗したが、

それでもやらされ続けた。

 

 小学校に上がると、親が恥ずかしくないように

と高い服を着させられ、それを弄られても

何も言えず、次第に虐められ始めた。


 不登校したくても親がどんな目で

見られるか想像してみろと言われ、

泣く泣く登校した。

休み時間になればトイレか屋上に行き、

息を潜めるように過ごす。

体育の授業なんて最悪だった。

 

 想像し易い光景がそこにはあり、

いつまでも慣れないまま

悲しい思いだけを残して小学校を卒業した。


 その後中学は転校し、

ここからはと思ったがそこでも空気のようで、

同級生からお前居たの?と言われる始末。



 この頃から共働きになったこともあり、

登校する振りをして家に帰り引きこもった。


 担任が訪問し親に不登校がばれた時、

しこたま殴られた。

だがここで俺は反抗に出た。

親に勝てる訳も無かったが、

気を失うまで抵抗した。

今思うとよくそんな気力があったと思う。


 この前後に弟が生まれ、

両親は次第に俺を視界に入れないように

し始めた。弟を俺に近付けないよう、

なるべく早めに何処かへやろうと

毎夜話していた事を子守唄代わりに

聞いていた弟は俺のようにならないよう、

着る物は質素だけどボロくないものを、

習い事は好きな事をやらせてもらい、

伸び伸びと育った。


 人気もあった為家に友達を呼びたいと

弟が親に話した時に、

うちには何かいるからダメだと

優しく諭していた。


 俺がダメになった方法を避けた結果、

弟は高校を卒業すると

都内の有名国立大学に入学するという

快挙を成し遂げ、

1人暮らしを親に援助してもらいながら

大学生活を満喫し、社会人になって

お正月に家に顔を出すだけになった。


 その頃から俺にまた目が向き始め、

攻撃が始まった。

だが親も老いる。

俺が口汚く罵るとそれ以降は陰口になり、

それも聞こえているぞと言えば無視を始めた。

幸い冷蔵庫に食べるものはあったので、

勝手に食べて勝手に寝て勝手に起きていた。

長々と自分のダメさ加減を語った上で、

本題に入ろうと思う。




「汚ねーおっさんだ!」


 そう、自分は今異世界に居た。

気付いたのは3日前。

何時も通りの生活を送り眠った。

寒さに布団をかけ直そうとして

目を閉じたまま探したが何もない。

ついに両親が布団さえも奪ったのかと思い、

仕方ないと考え二度寝をしようとするも、

背中が痛い。ゴツゴツしていた。

ついに外にでも捨てられたのかと

目を開けて見ると、そこはうっそうと

茂った森の中だったのだ。

体を見るといつもの汚いパジャマ。

これは本格的に外に捨てられたと思い、

のっそり起き上がりタラタラと歩いているが

森から抜け出せない。


 もしかしてここは富士の樹海か!?

と慌てた。暫く平坦な森の中を

歩いていると、デカイイノシシと目が合う。

ここは何処の田舎だ!?

しかも見た事のない大きさのイノシシだ。

ゲームとかに出てきそうな位の。

あっけに取られていたが、

イノシシのフギィィィィという

雄たけびと共に

突進してきたので全力で逃げた。


 しかし所詮引きこもり。

全力で走ろうにも体力が無い。

終いにはよろけながら闇雲に進み、

足に何もない事に気付いた時には

落ちていた。


 幸い落ちたのが深い川でもがき

辿り着いたのが、小さな農村だった。

捨ててあった藁で編んだ敷物らしきものに

身を包み、街頭で座り込んだ。

 

 同じ位置に居続けること3日目。

子供に石を投げられ、

通りがかる人には憐みの目で見られた。

引きこもりが出来ていたのは

有り難い事だったんだと思い涙が出る。

そんな状態でも親切な人が

食べ物を分けてくれたりする。

このままこうして朽ち果てて行くのかと感じ、

暮れて行く空を見上げた。

石が当たった腕が痛い。

 

 3日目も過ぎようとしていた夜中。

大きな鐘の音に目が覚める。

そして悲鳴と怒号が飛び交う中で俺は見た。

人間ではないが二足歩行の怪人が

人々を襲っている。

怪人が持つ武器は次々と町の人を

無差別に駆逐していく。

それは地獄のような光景だった。


「ココニモエサガイルゾ!」


 俺を見つけた怪人が仲間を呼ぶ為

声を挙げた。ついにここで命が

終わるのか。何もせず終わるのか。

それで良いのか?誰も知らない

なにも居ない状態なら、

ここからやり直せるのではないのか?

どうしたらいい!?

最初に俺を見つけた怪人が襲い掛かってくる。

振り下ろされた斧のようなものを

ギリギリでかわし、力いっぱい殴りつけると、

怪人が吹き飛んで建物の壁にめり込んだ。


 ありがちなことだけど、有り難い。

力がある。

体力はないが力がある。

これなら生き抜く事が出来るかもしれない。

俺は覚悟を決めたのだった。

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