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06 先達

 リーチェが連絡を入れ、相手を問い詰めた結果。

 

 管理はできていない、という事が判明した。


「ええい、何が『問題は無いから気にするな』よ! そんなワケにいかないでしょうに」

 憤慨した様子でリーチェは、通信を切られた相手に文句を言う。

 俺はため息を漏らす。ゆっくりすることはできないと確定したわけだ。


「リーチェ。とりあえず、その相手に会いに行くぞ。いくら問題無いって言われても、管理がされてないダンジョンを放置はできん」


 言いながら席を立ち、俺たちは店を後にした。多くの人通りの有る商店街を足早に歩く。


「そのダンジョンは今は俺の管理下に無いって言っても、俺の担当区域に有るダンジョンだ。もし、それが原因でマナ災害が起きたら俺の責任になりかねん。いやそもそも、なんで天使がダンジョンを管理することになったんだ?」

「あ、いえそれはよく分かってないんです。ただエレナが――あ、管理するって言った天使ですけど、生まれたばかりのダンジョン・マスターに任せる訳にはいかないダンジョンだから、素人じゃなくなるまでは私が管理するって」


 隣を追いかけてくるリーチェが答える。どういうことだろうか?

「生まれたばかりのダンジョン・マスターに管理を任せるより、実質的に管理のできない天使の自分が管理者になった方がマシって事か? そんな理由なんてあるのか?」

「え? さあ、分からないですけど、エレナがマナ災害が発生しかねない状況を看過するとは到底思えないんです」

「だから、そのエレナから自分がダンジョンの管理者になるって言われてすぐに納得したのか?」

「ええ、そうです。エレナはとても真面目で優秀な天使ですから」


 リーチェの力強い頷きに、俺は一つ頷く。彼女がそれほどの信頼を置く相手ならば、それなりの理由はあるのだろう。

 けれど、放置もできない。ダンジョンの管理はダンジョン・マスターの職分であって、天使に出来ることではないからだ。

 もし、エレナという天使が別のダンジョン・マスターの手を借りていたのなら、まさに生まれたばかりのダンジョン・マスターである自分が口出しする気など起きない。

 けれど、リーチェが通信で問い詰めた結果は手を貸すダンジョン・マスターの存在は無かった。


「とりあえず、直接話しを聞くしかないか。リーチェ、適当な人の視線の無い場所に行ったらすぐに俺を連れて転移をしてくれ。そのエレナの今いる場所にな」

「分かってます。きっちりと問い詰めないと気がすみません!! 私の拳が唸りをあげますよ!」

「殴り込みじゃなくて、話し合いをしに行くんだがな」

「分かってますよ!」


 ブンブンと中空に拳を振るうリーチェが分かってるとは思えない。まあ、相手はリーチェの知り合いらしいから問題はないかと放置することに決める。

 足早に商店街を抜けていき適当な路地裏へと入る。周囲を見回し、人の目が無いことを確認する。


「此処でいいな。リーチェ。移動を頼む」

「了解! 【天使スキル瞬間移動使用。同行者ダンジョン・マスター、キシカワ・ユウ。目的座標、天使エレティエーナ至近。瞬間移動、発動!】」

 

 起動ワードが終わると同時にリーチェの身体から光が放たれたと思った瞬間、周囲の光景は一変した。


 街中の路地裏だったのが、暗い石造りの部屋の中に俺たちは移動していた。

 広い円形の部屋の中央にはダンジョン・コアが設置してあり、他に物を置いてない殺風景な部屋だ。そしてコアの前に一人の少女がいた。

 俺が立てたわずかな足音に少女は振り返る。金髪碧眼のリーチェと似た顔立ちの少女だ。リーチェと同じ白い服に背中に見える白い翼から彼女がエレナという天使だろう。リーチェに比べると、髪は短くやや目つきが鋭い。そして見た目の年齢はリーチェより年上に見える。大体十四、五歳あたりだろうか。


「リーチェ?」

「エレナ! 貴女一体何をやってるのよぉ!?」

 

 驚きの声を上げるエレナに、リーチェはいきなり飛び掛かった。


「え!? リーチェ!? 何で殴りかかる!?」


 拳が唸りを上げるって比喩表現じゃなかったのか!?

 リーチェの拳はエレナの顔に向かって振るわれる。人間をはるかに超えた身体能力を存分に活かした、人間には視認出来ないであろうストレートだ。

 しかし、リーチェの拳は当たらなかった。エレナは慣れた様子で腕を払い、その拳を綺麗に受け流す。勢いに体の流れたリーチェを軽く押しのけ、二人の距離が離れた。


 まずはリーチェを止めないとと俺は踏み出す。


 ――が、

「いきなりなにすんのよ! このバカリーチェ!!」


 エレナの飛び蹴りがリーチェに放たれた。


「は……?」

 

 あっけにとられて足を止める。何故天使が反撃に肉弾戦を選ぶ? あ、いや、そう言えばリーチェも天使だったか。


 エレナの蹴りはリーチェが空中に浮かび上がる事で避けられる。

「馬鹿は貴女でしょう! エレナ!」

 

 中に飛んだままの反撃に、エレナも空を飛んで避ける。それからはまるで戦闘機のドッグファイトの様に低い天井にぶつからない様に縦横無尽に飛び回る。互いに攻撃を放っているのに、決して当たることはない。


「えっと……。まあリーチェの知り合いだがらな」


 そういう事で納得する。あの二人のことは放って置いて、俺は部屋に有るダンジョン・コアへ向かう。ついでに情報ウインドウを呼び出し、現在位置を表示させる。

 現在位置は担当区域にあるダンジョンの位置と重なった。


 ならば、ここのダンジョン・コアは俺がいずれ管理することになる、今問題となっているダンジョンの物だろう。

 

 俺はダンジョン・コアに触れ、スキルを使用する。


「【ダンジョン・マスタースキル使用。ダンジョン情報の全開示】」

 

 わずかな感触と共にダンジョン・コアと接続。制御権を掌握した後にコアへ命ずる。

 途端に周囲に大量の情報ウインドウが出現する。コアが表示したそのウインドウには、このダンジョンの情報が記載されている。


「うあ!? 何だこのダンジョン!?」


 コアは情報ウインドウと同時に俺に対して直接ダンジョンの情報を送り込んできた。その結果として瞬時に理解できたこのダンジョンに、俺は驚愕の声を上げた。


「あ、アンタ何やってんのよっ!」

「ん? うわっ?!」


 怒鳴り声が聞こえ、そちらへ視線を向けて。慌ててしゃがみ込む。俺の頭上をエレナの鋭い蹴りが通過した。人間ならば首が吹っ飛ぶほどの勢いだ。


 離れた場所にいた俺へと蹴りを放っために、勢い余って数メートル通りすぎる。追撃を受けないように俺は身構え――


「エレナ! ユウさんになにやってるんですか!」


 その間にリーチェが割り込み、気勢を上げた。まるで子猫を守る母猫のようなリーチェの行動に、子猫扱いされてる気がして微妙な気持ちになった。


「なにって……!」

 

 エレナは反論しかけ、途中で口を閉じる。周囲に浮かぶ大量の情報ウインドウと俺へ交互に視線を送ると、大きなため息をついた。


「わかったわよ。もうあなた達に攻撃をしたりしないわよ。だからリーチェももう殴りかかってこないでよね」

「ええ、それはいいですけど……」

 

 先に殴りかかったお前がすぐに納得するのか。リーチェに向けた呆れた視線にエレナは気がつく。


「あの程度、ただのじゃれあいよ」

「そうなのか?」

「まあ、そのようなものですね」

 

 やや自慢げな様子で肯定するリーチェに、ドッと疲れが増したような気がして俺は一つため息を漏らす。

 俺を観察するように見るエレナが聞いてくる。


「それで貴方がリーチェのサポートを受けてる、新しく生まれたダンジョン・マスター?」

「ああ、岸川 夕だ」


 自己紹介する。エレナは訝しげな様子でジロジロと俺を見る。


「事前情報では黒髪黒目だったと思うけど……?」

「あ。此処に来る直前まで街中に居たからな。変装スキルを解くのを忘れてた」

 

 スキルを説いて、黒髪黒目に戻る。変装スキルを解くと重い上着を脱いだかのような感覚を覚えるのは仕様なのだろうか?

 俺の前にいるリーチェも変装スキルを解いた。

 

「たしかに確認してた顔ね。それで何のようなの?」

「決まってるでしょう! エレナがダンジョンを管理できないから、なんとかするために来たのよ!」

 

 リーチェの言葉にエレナはため息をつく。


「だから、さっきの通信でも言ったでしょう? ダンジョンになんの問題もないって」

「今は問題なくても、問題が起きた時に全く対処出来ないのは問題でしょう!?」

「……」


 リーチェの指摘にエレナはまゆをしかめて黙りこむ。


「あー。エレナだったか?」

「エレティエーナよ。貴方に愛称を呼んでいいって許可した覚えはないわ」

「了解、じゃあエレティエーナ。君も天使にはダンジョンを管理なんてできない事は分かっているんだろう?」

 

 分かっていなかったら、リーチェの指摘に黙りこむ事は無いはずだ。


「なのに、なんで天使の君がダンジョンを管理する事になったんだ?」


 質問に、エレティエーナは俺を睨みつける。だがすぐに視線を外して深いため息をついた。


「私が管理してるのは、管理権限が貴方に移る前に、私がリーチェを言いくるめてかすめ取ったからよ」

「え?」

「なんの為に?」


 エレティエーナは周囲に浮かぶ大量の情報ウインドウを見回し、そして大きなため息と共に答えた。


「貴方に、この世界における一般的なダンジョンの情報を知られたく無かったからよ。

 もう貴方は知っちゃったようだがら、私の行動は無駄だったけど」

「え? どういう事なの? エレナ?」

 首を傾げるリーチェ。


「リーチェは今までダンジョン・マスターのサポートについた事は無かったでしょう? だからリーチェはダンジョン・マスターの悲哀を知らない。


 生まれたばかりのダンジョン・マスターでも、敏い者なら、このダンジョンを見たら、それに気がついてしまう。

 だから、悲哀を知らない天使をサポートに付けて、このダンジョンの情報を知られないようにした。


 そうすれば、気付く事はないでしょう? 

 少なくとも、知られる前までは。生まれたばかりのダンジョン・マスターが悲哀に暮れる事を防ぐことができる」


 物憂げなエレティエーナに俺は生暖かい目を向けた。


「アンタ、とんでもなく過保護な天使なんだな……」

「なぁ!?」

 

 彼女は一気に顔を紅潮させる。


「エレティエーナが言う、ダンジョン・マスターの悲哀っていうのは――」

 と、俺は周囲に広がる情報ウインドウの一つを指さす。それにはここのダンジョンのモンスターに関する情報が記されている。

「この、大量のベヒーモスを作る羽目になった事だろ?」

「ベヒーモス!?」


 リーチェが驚愕の声を上げる。ベヒーモスはダンジョン・マスターが作れるモンスターの中で最強のモンスターだ。


「ベヒーモスなんか作ってどうするんですか!?」


 リーチェの言葉ももっともだ。ベヒーモスはあまりにも強すぎるモンスターだ。国家の総力を上げても討伐などできない。群れではなく一匹相手の話だ。ダンジョンにおびき寄せた冒険者を始末するにはあまりに無駄すぎる。人一人殺すのに拳銃ではなく核ミサイルを持ち出すようなものだ。

 

「ちなみに数はざっと二十万匹だ」

「正確な数字は二十一万と跳んで三百五十八匹よ」


 俺とエレティエーナの言葉に、リーチェは絶句する。今にも倒れそうだ。が、なんとか踏みとどまり、絶叫した。


「そんな数のベヒーモスを作るなんて世界を滅ぼす気ですかっ!」

 

 この数のベヒーモスを放てば、複数回は世界を滅ぼせるだろう。だが、そんな目的で作られたわけじゃない。ダンジョン・コアから情報で俺は理解しているし、エレティエーナもわかっているのだろう。リーチェだけが分かっていない。


「世界を滅ぼさないために、こんな数のベヒーモスを作る必要があったのよ」


「え?」

「さっきオレがレストランで言っただろう? このダンジョンは周辺のマナ濃度の調整のために、大量のモンスターを確保してる可能性があるって」

「それは分かってます! けど、ベヒーモスなんて危険すぎるモンスターにする必要ないでしょ!? しかもこんなに沢山作ってるなら私達天使がマナ対策に奔走する必要も無いくらいに大量のマナをつかってるはずです!」

 

 ベヒーモスは最強のモンスターだ。当然生成するためには大量のマナが必要になる。だがその必要とするマナの量は、ゴブリンやオークなどの通常のモンスターとは桁違いに多い。


「そのとおりよ。けど、私達天使が奔走する必要が有るくらいに、今の世界にはマナが溢れている。

 これだけの量のベヒーモスを作る、大量のマナを消費したにもかかわらず、ね」


 それは、本来ならばベヒーモスを作る際に消費されたマナが世界に溢れていたということ。

 

 もし、二十一万匹以上のベヒーモスを形作るマナが解放されたとしたら、どれほどの被害をもたらすマナ災害になるだろうか?

 地球の太古において、恐竜を絶滅させた巨大隕石の衝突程度で済むだろうか?


「エレティエーナ、一つ聞きたいんだが」

「なに? もう何でも答えるわよ。あ、それとエレナでいいわよ。長いし言いにくいでしょう? 私も貴方の事をユウと呼ぶし」


「じゃあ、エレナ。このベヒーモスの数は、ここのダンジョンだけの数だよな?」

「……ええ。私が前のダンジョン・マスターから預かってる他のダンジョンも、似たような数のベヒーモスを保管してるわ」


 エレナは諦念の様子で言う。

 

 確か前任者が残したダンジョンの数は、三七個だったはずだ。


「な、な……。ベヒーモスがもっといるの? 何でそんなに大量のベヒーモスが……?

 いえ、それより。何でそんなに大量のマナを使ってるのに世界からマナが無くなってないの?!」

「それは簡単よリーチェ。私達天使が必死になって消して回ってるマナは、地上にあるものだけなの。

 マナは生き物の体内以外、世界のどこにでも存在している。当然、地面の下にもマナはある。


 いえ、正しくは違うわね。地面の下の方が大量のマナが存在しているのよ」

「何で地下の方がマナが多いんだ?」

「単純に地上より、地下の方が空間的に広いから」


 俺の質問にエレナは一言で答えた。


 この世界――と言うより、この惑星というべきだろう――の地上と称される空間は地面の上から空気のなくなる宇宙へと出るまでだろう。つまり、この世界の地上とは、この惑星の大気圏内のことだろう。

 この世界の惑星がどうなっているのかは知らないが、地球を例として考える。

 地球の大気圏は地表から約百キロメートル。対して地球の地下は、地表から地球の中心点まで約六千三百キロメートルだ。


 エレナは続ける。

「地下深くでは今でもマナ災害が起こりまくってるらしいけど、小規模のマナ災害に収まってるらしいわ。

 それにあまりに地下深いから地上まで影響が及んでないだけなのよ。

 

 けど地下浅い所でマナ災害が起きたら地上の被害が洒落にならない。

 そして私達天使には地面の下のマナを何とかする方法が無い」


「その代わりに、俺たちダンジョン・マスターが地下浅い所のマナを、モンスターの形にして移動並びに保管してるって事か」

「ええ。そうしてくれば天使が、地下のマナを消せるようになるからね」


「それで、これだけのベヒーモスを作っていても、世界のマナの量は減ってないのか?」

「ええ、微増してるのが現状ね。


 ここまで言えばダンジョン・マスターの悲哀がどう言うものかわかるでしょう?


 世界の危機を何とかするための種族なのにもかかわらず。そのためには、世界を滅ぼせるようなモンスターを大量に作らないといけない。

 それなのに、世界の危機は一向に小さくならない。そして手元には世界をいくらでも滅ぼせるようなモンスターがひたすらに増えていく。


 ここの前任者はそんな現状に嫌気が差してダンジョン・マスターを辞めたのよ。今は元気にはっちゃけてるみたいだけど、あんなのただの現実逃避でしょうね……」


 悲しげにため息を漏らすエレナに、俺もつられて深いため息を吐いた。


「この世界、マジで滅亡寸前じゃないか……」

「この世界で生まれたばかりの貴方に、そういうふうに思ってほしくは無かったら、私が前任者のダンジョン管理する事にしたのよ。

 この地域なら、二、三年は地下のマナの事は気にしないで済むから。

 

 リーチェもしばらくのんびりしていて欲しかったから教えて無かったのだけど……。

 なんでこんなにすぐに殴りこんでくるのかなぁ?」


 エレナは呆れた様子でリーチェを見やる。


「え、だって! 管理できて無いダンジョンの中でモンスターが暴走とか起こしたらマナ災害が起きるかもってユウさんが言ってたから!」

「少なくともこのダンジョンに関して言うなら、その心配は無さそうだな。ベヒーモスは強力なモンスターだが、一匹づつ完全に隔離されてるし、常に冬眠状態になってる。暴走も殺し合いも起こりようがない。後百年はこのままだろうな」


 周囲に広がる情報ウインドウを見ながら、俺はリーチェに教える。


「あ、じゃあ……本当に問題はないの?」

「だからそう言ってるでしょ。

 あと、そうね。もう私が管理し続ける必要もなくちゃったから、ユウに全部ダンジョンの管理権限を渡すわ」


 言いながらエレナは情報ウインドウの操作を始める。


「はい、これで今まで閲覧できなかったダンジョンの情報は全部ユウが見られる様になったわ。

 それぞれのダンジョンを管理下に置くためには、直接それぞれのダンジョン・コアにアクセスしないと行けないけど、それはそっちでがんばって」


 俺も情報ウインドウにアクセスし、管理下になったというダンジョン情報を確認する。今まではアクセスできなかったそれに、なんの問題もなくアクセスできた。

 しかし、エレナの軽い様子に、面倒事を丸投げされたような気分になる。


「いいのか? 俺はダンジョン・マスターとしてド素人と言っても過言じゃないんだぞ?」

「私たちは、生まれた時からその役割を十全に果たせるように作られているわ。そんなのリーチェを言いくるめるためのただの口実。

 それに、私としても忙しいからね。定期的にダンジョンを見て回る必要がある管理は無い方が楽なのよ」


 確かに天使であるエレナが実際にダンジョン・コアのある部屋に足を運んで管理するよりも、俺がダンジョン・マスターの権限でそれぞれのダンジョン・コアから情報を送らせた方が楽に管理ができる。


「だったら初めからダンジョンの管理なんて名乗り出なければいいのに……」

「生まれたばかりのダンジョン・マスターが、心置きなくお仕事ができるようにするのは先輩のお仕事よ。

 もっとも余計なお世話だったみだいけど。


 じゃあ、私はこれで失礼させてもらうわ。仕事が差し迫ってるしね。

 ユウ、悩みが出来たなら相談に乗るから気軽に声をかけてね。リーチェ、ダンジョン・マスターのサポートは頑張りなさいよ。

 それじゃ、またね」


 エレナはこちらの返事を待たず、瞬間移動スキルを使って姿を消した。


「言いたいことだけ言ってあっという間にいなくなったな」

「エレナはいつもそうです。自分が良かれと思う事なら、強引にでも行って、それでいて立ち回りが上手なんです」

 

 すねたような様子でリーチェはいう。


「リーチェは、エレナの事が嫌いなのか?」

「そんな訳ありません。エレナは優秀で真面目なとてもいい子です。けど……」


 そこで口ごもるリーチェを軽い調子で促す。


「けど、何だ?」

「――いつまでも先輩面するのが不満なだけです。私はもう一人前の天使なんですから」

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