20 エピローグ
魔王と天使が降臨し、国王が魔王と契約を交わしたその日から、王都は徐々に変化を迎える事となった。
当日の王都は、それこそ暴動が起こらんばかりに騒然としたものとなった。
魔王の圧力に国王が屈したとみなされたのだ。しかしそれはベヒーモスによって破壊された市壁の姿に、自然に沈静化していくことなる。
国王が屈しなければ王都は今頃どうなっていたことか。魔王は戦いになれば、積極的に王都を巻き込まむような口ぶりだった。天使の守護があろうとも、自滅を覚悟した魔王と天使の戦いに巻き込まれればただではすまない。
だが人々が不安に思う問題は、街中に出現したというダンジョンの出入りの存在だ。
大量の石材を放り込み、出入り口を潰す事はできない。それは魔王との契約を破ることになり再び魔王の降臨を呼び起こすことになりかねない。
王都住人の不安を鎮めるために騎士団ができる事は、ダンジョンの出入り口を監視することだけだった。
ダンジョンへ潜ろうとする人間を止める事もできず、魔導具を手に入れ上機嫌で出てくる人間を止めることもできない。
騎士団ができる事は、そんな人間たちの馬鹿にするかのような視線に耐えながら、ダンジョンよりモンスターが出てこないかを監視することだけだった。
しかし、天使が最後に告げたとおり、モンスターがダンジョンから出てくる事はなかった。
その事実は人々に、『王都には天使の加護が存在する』と思わせるには十分な出来事だった。
やがて、王都の人々は落ち着きを取り戻していった。
破壊された市壁の修復が問題として残っていたが、その事以外では、王都は日常の姿を取り戻していった。
けれど王都には、小さいながらも確実な変化が訪れていた。
血の気が多く貧しい男たちの多くが、ダンジョンへと潜り多くの魔導具を持ち帰るようになったのだ。
商人たちはそれらを買いあさり、多くの人々の手に渡ることになる。使用した人々はその利便性に驚きと共に受け入れていった。
また、魔導具と共に手に入れる事ができきる金貨も多く取引されるようになった。
その金貨は金の純度が非常に高い為に、最高位の金貨として重宝されうようになる。
描かれている図柄から、魔獣金貨。もしくは手に入れることのできる場所から迷宮金貨、魔王金貨と呼ばれることになる。
ダンジョンも訪れる人の数が増えるにつれて姿を変えていった。当初、街中に出現したダンジョンはそれぞれに独立していた。長い通路に部屋が一つという構成だった。
しかし廊下が分岐するように伸び、個別のダンジョン同士をつないでいった。
人々はうわさした。魔王はこれらのダンジョンを一つにまとめるつもりなのだろう。と。
しかし、個別のダンジョン同士をつないだ程度で、ダンジョンの成長は止まらなかった。さらにダンジョン内の通路は無秩序に伸びてゆき、無数の部屋が追加されていく。更に地下へと潜る階段も発見されることとなる。まさに複雑怪奇な迷路で構成された、迷宮へと成長することになる。
人々はやがて、王都アルヴェントの事をこう呼ぶこととなる。
迷宮都市アルヴェント、と。
第一章終了という事で一旦〆とさせていだだきます。
続きは展開が思いついてからになります。気長にお待ちください。