7話 剣術~信頼
クラスタを出て少し経った頃、枯れ木と荒れ地のみで構成された景色はお世辞にも美しいとはいえなかった
食べられそうな食物も見当たらず野宿の準備をいつもより早く終えた一行は、暇を持て余していた
「レイナ、そろそろ俺に剣術を教えてくれ」
レオンは先の戦いでまともに剣だ当たらなかったことを気にしていた
「いいわよ、どうせ食べ物も見つからないしね」レイナは剣を持って立ち上がる
(雄が雌に教えを請うなどと、恥知らずだな)フンと荒い鼻息をもらしながらサイファーが語りかける
「あら生意気な馬がいるわ、今日はこの馬を的にして教えるわ、夕食も確保できて一石二鳥よ」レイナは極上の笑みを浮かべながらサイファーに近づく
(この女は恐ろしい冗談を平気で言うから困る)などと言いながらさすがにサイファーも後ずさる
「おいサイファー!逃げろ!!こいつ目が本気だぞ!?」レオンはあわててサイファーに教える
(・・・俺は遠くで夕食を済ませてくるとしよう・・・・・・後は頼んだ!!)サイファーはあわてて逃げだす
「逃がしたわね?」レイナは剣の切っ先をレオに向ける
「さすがにやりすぎだ、無理やり恐怖を植え付けるなよ」レオンはため息をつきながらレイナをなだめる
レオンは素振りの方法だけ教えてもらうとレイナに筋力トレーニングを言い渡されていた
「魔法は練習する方法とかないのか?」レオンは息を切らしながらレイナに聞く
「あるわよ、今から教えるわね」
「ああ」
「まず契約よ、これにはそうねぇ・・・今回は危険もないし貴方の血液でも使いましょうか」
「血液使ってる時点で俺は命の危険を感じるが」
「でも意外と血液ってお手軽なのよ?死ぬまで使えるし、生きている限り生成されるでしょ?」
「お前はおれに死ぬ限界まで魔法を使わせるつもりか?」
「だって今はほかに思い浮かばないし、使うのもほんの少量だから心配しないで」
「で契約ってどうするんだ?」
「最初は別の魔術師にやってもらうべきだから今回は私が助けてあげる」
「で、俺は何ができるようになるんだ?」
「この間やった硬化よ、叫んで使ったりするわけじゃないから呼び方は何でもいいわ」
「おお!あの反則技か!これで無敵だな」レオンはムフーと鼻をふくらませた
「残念だけど最初から私みたいに全身硬化したりはできないわよ?しばらく練習して木の棒一本ってとこかしら」
「木の棒くらいかぁ、じゃあ腕のここからこの辺りまでかな?」レオンは実際に落ちていた枝を自分の腕に当ててみる
「だから木の棒とか剣とかよ、いきなり体に魔力なんて流して弄ったら貴方人間の姿じゃいられなくなるわよ?」
「うっ、それは嫌だ、でどうすりゃお前みたいにうまく使えるようになるんだ?」
「これから毎日、時間場所を問わずに私が貴方に練習用では無い剣で不意打ちさせてもらうわ」
「俺はそれを剣で受ければいいんだな?」レオンは剣の柄を握る
「あなたが使うのは木の枝とかその辺に落ちているものよ、柔らかいものに{硬化}を使う練習よ、私は一太刀だけ貴方に奇襲する、もちろん寸止めはしないわ」
「なるほど、剣術の稽古も兼ねてるのか、でも失敗したらやばくないか?死ぬことは無いだろうが」
「そうね、腕が切断されたぐらいなら治してあげるわ、でも貴方私にむやみに魔力を使わせたくないんでしょう?がんばりなさい」
そうしてレイナはレオンの契約の儀式を済ませサイファーが戻ってきたころに眠りに就いた
その夜サイファーの嘶き声で二人は目を覚ます
レイナへのわびだと言ってサイファーが見張りを引き受けていた時であった
すでに夜盗の一人はサイファーの近くで倒れていたが今回は少しばかり数が多かった
レイナが常人を超えた速さで次々となぎ倒していくがそれでもサイファーの裏から近づく男を倒すのには時間が足りなかった
男がサイファーに向かって剣をつきたてる、しかしサイファーにとっさに剣をよける動きは取れなかった
剣からおびただしい量の血液が滴り落ちる、しかしその血はサイファーのものではなくレオンのものであった
レオンは剣で貫かれたまま相手にも自分の剣を突き刺す
男はそのまま倒れこんだ
「大丈夫かサイファー?」レオンは顔を青くしながらサイファーを気遣う
(お前が大丈夫じゃないだろう!?そのままだと死ぬぞ!?)
「大丈夫俺は死なない、死ねない体だからな」レオンはそう言うと気を失った
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(大丈夫だろうか?)
ふとそばから声が聞こえる
「大丈夫よ、こいつ死なないから」レイナはサイファーをなだめながらそう言った
「う・・・・ん」レオンはようやく意識を取り戻した
「おお!治ってる!悪かったなレイナ」レオンは刺された場所をさすりながら言った
「無茶するな!って言いたいところだけど今回はサイファーに免じて許してあげるわ」
「それじゃあサイファーに感謝だからな夜盗よりレイナのほうがよッぽど怖い」
(その、助かった・・・・礼を言う)
「それはお互い様さ、サイファーも1人倒してたし俺たちを起こしてくれたし、俺が最初に襲われた時なんてレイナが戦ってるのを遠くから小さくなって見てることしかでき
なかったからな。大した度胸だよ」
(レイナもありがとう私の傷まで治してくれて)
「仲間を助けるのは当然よ、って今の時代だと逆なのよね」
「じゃあ今まで寝かせてもらったから今度は俺が見張るよ」
(助けあう・・・はじめての経験だが、悪くない・・・むしろ心地よいものだな)
「私もあいつに教わったのよ誰かと一緒にいるって強さを、あいつは気付いてないみたいだけど)
レオンが見張りをしている間2人は信頼につ当て語り合うのであった