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ライオンハート~獅子の心~  作者: れおん
すべてはここから
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3話 代償~強襲

王都を出てから幾日めかの夜、レオンとレイナは二人で集めた薪に火をつけていた。


「魔法が使えないと外で火をおこすのも一苦労だな」レオンは額の汗をぬぐいながら呟いた

「魔法が使えても苦労してる人が隣にいるってのによく言うわね」レイナはため息をつきながらそう答えた


レオンに雑用を命じていた割にレイナは事あるごとにレオンの作業を手伝いアドバイスを与えていた。


「慣れるまでは、ね」と言ってなんだかんだ手伝ってくれるのだ


確かにレオンは王都から出たことはなかったが下層区民の生まれ、文明の力を使ったり整った生活を送ったことなどなかった。

レオンにとって外での生活は屋内か屋外かの違いでしかなかった。


しかしレイナは、今まで子供たちと過ごしていた生活を二人だけで過ごすようになったレオンの姿、気持ちを人事だと割り切ることなどできなかった。


これから旅をするパートナーであるという以前に、同じ境遇になったレオンを他人とは思えなかった。

結果を言えば、レイナが生きることを望んだレオンを助けたということになったが、レオンに課せられた束縛は多すぎた、あのまま子供たちのもとに逝かせてやったほうが良かったのでは、という思いが心の奥底に確かにあったのだ。


レイナはレオンと旅をはじめて彼の手助けをする中でレオンの運の悪さに驚いていた。

ある時「服を買う時に貸してくれたお金の礼を」とレオンが言ってきた時があった、そのとき返してもらう時にポケットから財布を取り出したとたんスリにあったのだが、彼はなれた手際で取り返していた。


聞くところによると買い物に出ると必ず狙われるらしい、それが原因で自給自足の生活を送っていたという。

旅に出た後も事あるごとに彼は運の悪さを発揮していた。


その夜、獣よけに火を焚いたまま寝るか、夜盗を警戒して火を消すかとレオンがレイナに聞いていた。

「たいたままでいいわ、物より命のほうが大事だしね。それに、夜盗なら私が対処するから」レイナはフフンッと得意げに言った。

王都からはもうすでにかなり距離がある、よほどのことがない限り夜盗にはあわないはずだった


レオンはレイナの腕を信じていないわけではなかったのだが、いやな予感が頭から離れなかった。

(こいつ、元お嬢様で、元聖女なんだろ?それに見た目がこれだしなぁ、剣士より踊り子のが似合うんじゃないか?)


「なぁ、お前ほんとに強いのか?」レオンが疑惑に満ちたまなざしでレイナをみる

「普通の荒くれ者よりはね、私の場合剣術はおまけなの、もともと魔法が専門だから、この前も話したと思うけど自身の体を強化制御して戦うのよ」

「そんなこといってたな、俺も自分の身くらい守りたいんだが、そろそろ教えてくれないか?」

「そうね、あなたなぜかすごい運が悪いみたいだしね、そろそろ剣を渡しておくわね」


そう言ってレイナは荷物からひと振りの剣を取り出した。


「あのさ、レイナ・・・切れないぞ?この剣」レオンは頭に?を浮かべて訪ねた

「それは練習用よ、刃がないのよ、さすがに突いたら怪我するでしょうけど、私と殺しあいしてもしょうがないでしょ?」

「まぁな、でも荷物増えると旅するの大変じゃないか?」

「ハァ・あなたはそもそも旅するための筋肉がついてないじゃない、ほんとに農作業してたの?魔法でだって強化する元の筋力が必要よ?」


「そんなこと言われてもな、子供たちが自立しても生きていけるようにって皆で作業を分担してたんだ、子供たちも結構な人数がいたからな、1人分の作業量はあまりなかったんだ」


「そうだったの、でも強化する筋力はつけなくちゃね、それとちゃんとした剣は自分で見つけるのよ」

「わかった、まぁ剣術は少しずつ覚えるとしてもさ、魔法はすぐに覚えられるのか?呪文とか覚えられる自信ないんだが」

「魔法のほうが大変よ、それに私は呪文なんて使わないしね」


そう言ってレイナは説明し始めた。


「そもそも魔法は便利な道具じゃないわ、使うにはそれなりの代償が必要になるの」

「代償?魔力のことだろ?それならお前から・・・


「それは前提よ、魔法の世界に入るための入国証みたいなもの、それがないと魔法の話をすることそのものが無意味になる。

代償は人それぞれ、例えばさっきの呪文もそう、呪文は言葉を代償にしているの、日常で火や水を口にすることはない?」


「あるけど?」レオンは何を当たり前のことを、と聞き返した

「口にした瞬間に火や水が出てきてしまったら?」

「不用意にしゃべれなくなるな、うっかり死ねなんていったら大変だ」

「そういうこと、それに{死}みたいに大きな現象はそれに見合う魔力と代償が必要になる」

「もし言ってしまったらどうなるんだ?」

「魔力が足りれば殺すことは可能だと思うわ。でもそんな人はそうそう存在しない、たいていは{死}が実現される前に魔力がつきるわ」

「魔力が尽きると精神が壊れて死ぬんだよな?」

「そう、死ぬのは術者のみよ。相手を殺す方法がないわけじゃないけれどね」

「??どういうことだ?」

「言ったでしょ、代償が有ればいいのよ、例えば自らの死とか」

「なるほど、どんなに強い奴にも相討ちにはもちこめると」


(ん?じゃあレイナの代償ってなんだ?何かしてる様子もないし)レオンはふと疑問を口にした


「じゃあレイナの魔法の代償って何なんだ?俺を助けてもお前は生きてるよな?」

「あなたと同じよ、私も時間・・・・というか私の家系は、ね」レイナは悲しみを思い出しながら答えた

「じゃあ家族全員不老不死なのか?それに代償ッて自分で勝手に決められるのか?」レオンは驚きを隠せなかった


「不老だけよ、怪我もするし普通に死ぬわ、代償は魔力を使ってその現象と契約するの、制限はわからない、失敗は死を意味するから、誰も研究しないわ」


「でもそんな簡単に不老不死になれるのになんでみんなならないんだ?」

「実際に世界に何人かはいるでしょうね、でも多くの人は自ら死を選ぶわ」

「・・・?不死なんだろ?死ねるのか?」

「一つだけ方法があるのよ・・・魔力の枯渇、さっきも話したでしょ?」

「そもそもなんで死のうとするんだ?」

「あなたと契約した時に話したでしょ、孤独に心が耐えられなくなるのよ」

「そうか・・・そういやお前も不老なんだろ・・・・いま何歳なんだ?」

「ふふっ、あなたの知ってるすべての人よりは年上よきっと」レイナは怪しい笑みを浮かべた

「まじか、信じらんないな」


「この際話しておくけど、私の家族が殺されたのもその不老が関係しているの」

「いきなりどうしたんだ?辛い話なら・・・               

レイナはレオンの言葉を遮った


「あなたにも関係あるの、黙って聞いて、長い年月生きていれば世界の歴史や文明を自身で経験することになるわ。世界を支配できるほどの兵器だってないわけじゃないし、

これから生み出されるかもしれない、それらの情報という物は金品で無理やり買うことはできないわ、人によってはあらゆるものより価値があるのにね、だから脅したり拷問したりするの」


「でも、それは話さなければいいだけだろ?最悪の場合自害すれば秘密は守られる」レオンは何を当たり前のことを・・と聞き返した

「いいからきいて、そこで魔法よ、どんな代償を契約したか知らないけど、情報を得ることが可能でないなら、私の家族が狙われることなんてないわ、私たちは世間から離れて暮らしてたから、普通の人たちに聞いても存在が知られることは無かったの」レイナは唇をかみしめた


「つまり、そのうち俺たちも狙われるかもしれないと?」レオンは身を強張らせる


「そうよ、十分気をつけてね。長い間話しちゃったわねそろそろ交代で寝ましょう」レイナはそう言って立ち上がった


「レイナが先に寝ていいぞ、俺はさっきの話を自分の中で整理したいから」レオンはたき火に薪を投げ込みながら言った

「そう?何か起きたら言うのよ?」レイナは心配げに言う

「わかった」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗い平原の道から大分離れた場所にレオンとたき火が見える


それを静かに眺める二人の大男とそのはるか後方に一匹の狼がいた、かれらは荷物も持たず手に錆びた剣とナイフを持ち、ゆっくりたき火に近づていた。


「眠くなってきたな」レオンは音の無い平原で静かに鳴る焚き火の音と温かさに眠気を感じていた


その時、草と土を踏みしめる音が聞こえた、レオンは身を強張らせながら鞘に入ったままの剣でレイナをつつく

「レイナ・・・レイナ!」できるだけ声を殺しながらレオンは声をかける


「う・・ん・・何?・・!!誰かいるわね」レイナは起きてすぐにそう言った

「レオ、よくできました、ちょうどいい機会だからあなたがさっき心配していた私の力を見せてあげる、あなたが覚えたがっていた魔法よ!地味だけどね、よく見てなさい!」

そういうとレイナは立ち上がり悠然と剣を構えた

「まずは、基本からね{筋力強化}よ。これだけでたいていの人間は倒せるわ」

レイナはそういうと一瞬で暗い闇の中に消えていった。そして間もなくふたつの野太い叫び声が聞こえてきて、何事もなかったかのようにレイナは帰ってきた


「レオ、ただい

その時レイナの後ろから狼のような獣が飛びかかってきていた!

「!後ろ!!!」レオンはとっさに叫んだ


「!!くっ」レイナは振り向こうとする

次の瞬間レイナは狼に見事に横っ腹をかみつかれていた

レイナの死はレオンの死を意味する、レオンは剣の鞘ごと狼に飛びかかった!

「うおぉぉぉ!!!」

「まって!!言ったでしょう?見てなさいって」レイナがレオンをなだめるように言う

よく見ると必死にかみつく狼に対しレイナは平気な顔で「やれやれ」とつぶやいた

「はぁあ!!」レイナの声とともに狼の死体が転がる

レイナの横っ腹は洋服が食いちぎられていたが、体は傷一つついていなかった。

「え!?なんで?おまえ、それ・・・え?」レオンは困惑した様子でレイナを見た

「これが身体操作の応用{硬化}よ、その名の通り硬くなるわ」

「お前無敵か!?ずるいだろそれ!!」

「別に無敵じゃないわよ?この状態で切られて怪我したことだって幾度となくあるわ」


「すごいんだな、、戦いも慣れてるみたいだったし」

「あなたも一応初の戦いだったんじゃない?どうだった?」レイナは優しくレオンに聞いた

「・・・怖かった、剣だってかなり重いし、いきなり誰かが死んだりさ、不意打ちだって普通にしてきて」レオンはうつむいたままそう答えた

「戦場は怖いものよ、いつまで続けても楽しい感情なんて生まれない。剣だってそうよ、剣術は美しいものじゃない。剣の重みも、剣術の動きも生き物の命を絶ち切るもの、

そこに善と悪なんて言い訳は存在しないわ、剣を握った時から命を捨てる覚悟と命を奪う覚悟をしなさい、それは実力を磨く前にしなくてはいけないことよ」

「…レイナは人を殺して恨まれたことがあるのか?」


「…あるわ、それに私の旅の目的もそう、でも殺して、殺されたからって結果0になって消えるわけじゃない、奪った命すべてが私の人生にのしかかってくる、それはあなたにも言えることよ」


「でも俺は望んで旅をするわけじゃない!生きるためにはお前の近くにいなくちゃいけない、お前は俺に殺しを強要するのか?」レオンが訴えかける

「そんなことはしないわ、いやなら隅っこで縮こまってればいい、それに貴方だけが強要されてるなんて思わないことね、私だって好きで殺してるわけじゃない、

どちらかしか生き残れない状況は世界中にたくさんあるわ。1人しか食べられない物を2人のうち1人が食べて生き残ったら、貴方はその人に仕方がなかったあいつは死ぬしかなかったんだって言うの?」


「それとこれとは話が違う!!」レオンは下層区での似た体験を思い出していた

「違わないわ、誰かが生きていたはずの時間を奪うのに正当な理由なんて存在しないわ、だれも仕方ないなんて言ってくれないのよ、護りたいだけじゃ剣を握る資格なんてない!!・・・・・・・・覚悟ができるまで剣の稽古はしないわ、しばらくは魔法の勉強よ」レイナは悲しそうにそう告げた


「さぁ、もう寝なさい、次は私が見張るから」落ち着いた口調でレイナは言った

「・・・・・・ごめん、でも理解はできても納得はできないんだ」申し訳なさそうにレオンが言う

「あなたはとても優しい人、それは貴方を助けた時から知っていたわ、すぐに人の死を背負える人なんていない


貴方が、自分の意思で決断して人を殺さなきゃいけない時は、私たちの旅の目的上、どこかでぶつかる問題よ、護るために殺さなきゃいけないときは必ずくる。それまでに答えが出ればいいわ、そのための力なら私が手助けしてあげられる」レイナはいつもと違うレオンを慈しむような声でそう言った


「・・・ありがとう、お休み」

「ええ」

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