2話 別れ~旅立ち
~レオン編~
目が覚めると見知らぬ天井が目に浮かんだ。
「ここは・・・?」レオンは体に異常がないか動かしてみながら呟いた
(ん?・・ところどころ服が切れてる?)
「気がついたみたいね、ここは宿屋よ」全身汚れた衣類に包まれた人物がそう答える。
(だれだ?女・・・か?顔すら見えないな)
「あんたは?」警戒心むき出しでレオンは問いかけた
「私はレイナ、あなたに聞きたいことがあるの」
「そうか、レイナ悪いけど急いでるんだ」焦りの混じったこえでレオンが答える
「・・・あなたの家ならもうないわよ」落ち着いた声でレイナが窓に向って呟く
「何?」
「子供たちもあなたと一緒にいた奴らもみんな・・・殺されていたわ」
「なんでお前にそんなことが分かる!!」レオンは怒りにまかせて怒鳴りつけた
「あなたを助けた時に・・・ね、あなた瀕死の重傷だったのよ?」
レイナはドアの前を気にするように見てからレオンに「しー」と人差し指を立てた
「助けた?・・・・・!救世主!!」
「あなたそいつに会ったんでしょ?どんな奴だったの?」レイナは真剣なまなざしで問いかける
「白い服で帯剣していた、かなり若かった、それに恐ろしく強かった、まわりのやつらが一瞬で殺されていて」レオンは恐怖を押し隠してゆっくり答えた
(白い服に剣・・情報と一致するわねそれに強いなら探してみる価値はあるわね)
「ねぇ、あなた名前は?」
「レオンだ、レオンハート」レオンはぶっきらぼうにそう答えた
「レオン、辛いかもしれないけど今からあなたの家に行かない?子供たちも弔ってあげないと」申し訳なさそうにレイナは言った
「・・・ああ、そのつもりだ。犯人の手掛かりも欲しいしな」
レオンの家までの雑踏の中でレオンはふと疑問に思った
(そういや俺どうやって助かったんだっけ?)
「オレどうやって助けられたんだ?」
「私の力で…よ、人に聞かれるとまずいし今は目立ちたくないからしばらく黙ってついてきて」
人ごみの中をマントにフードで全身覆われた人物となぜかいたるところが破れた服の青年が歩いていく
かなりの視線が集まっていたのは、言うまでもない
(俺も人の事言えないけど、この女は自分が目立ってるって自覚がないのか?)
「なぁ、その前に服を調達させてもらえないか?お前の話だと家に帰っても替えの服はなさそうだし、それにお前の格好もかなり目立つぞ?」
「私はできるだけ姿を見せたくないのよ、人の記憶に残りたくないの。それと、自己紹介したんだから名前で呼んで、誰のこと呼んでるのかわからないわ」
「その恰好だと怪しすぎて逆に目立ってんだよ!隠れたいならせめて一般人になりすませよ」
「わかったわよ、でもあなたお金持ってんの?財布持ってないみたいだけど?」
「俺はこの街の下層区民だからな、そもそも金なんて持ってない、自給自足の暮らしだったんだ」
「じゃあ、なんであんたから買いに行こうって言いだすのよ。まぁいいわ、貸してあげるから買ってきなさい、買い終わったらあなたの家に集合ね」
「わかった」
そして二人は店の中へはいって行った
(あんなに入ってると思わなかった。財布あけてびっくりしたぜ、合流したらお礼言わないとな)
通り慣れた道を進むとレオンは驚愕した、言われてはいたが、それは無残な有様だった。
胃からいろんなものが逆流してくるのを抑え子供たちの墓を造りに行くと
そこには、見たこともないような美女が灰と土に汚れて墓を造っていた
(まさか、あの布ぐるぐる巻き女・・か?)
「レイナ?」
「ん?遅かったわね、買い物はもっとてきぱきこなしなさい、旅をするうえで大事なことよ」
「何言ってんだ?俺は旅なんて・・
「するのよ、あなたと私には契約の縛りがあるからね。いかなる契約にしろ術者と一定以上離れると契約破棄されるわよ?」
「いやいやまてまて、いつ俺とおまえが契約した?それにお前魔法なんて使えるのかよ?」
「質問はいろいろあるだろうから、順番に説明してあげる、子供たちのお墓作りながらね」
「あ、ああ、ありがとな、あいつらも喜ぶよ」
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「つまり、俺は一回死にかけて、お前に助けられて不老不死の体になったけどお前と離れすぎると契約が切れて死んじまうと?」
「そうよ」
「じゃああの聖女のような声はおまえだってのか?」
「そうよ」
「信じられん」
(とてもじゃないがこいつからあの声が出るとは思えん)
「どれくらい離れるといけないんだ?」
「わからないわ、知りたければ試してみてもいいけど、結果を知ることはないでしょうね」
「さっきも言ったけれど、どの道あなたはこの街に住み続けることはできないわ、この子たちの敵を探すまでついてきても問題ないんじゃない?」
「そうだな、まぁあんた帯剣してるし、護られるのは俺のほうだろうから役に立つとは思えないけどよろしく頼むよ」
「なにいってんのよ、あなたも戦うのよ?剣もちゃんと買っておいたしね、それに不死身なんだから盾くらいにはなるでしょ、あと雑用係ね」
「意外と多いな、まぁがんばってみるよ、そのかわり俺に戦い方を教えてくれないか?」
「剣術のこと?いいわよ?」
「魔法はだめか?」
「いいけど、私は魔力を自身の体に使って体を治したり筋力を増加させたりする治癒師よ火が出したいとかなら別の人に頼んでね」
「いや、俺頭良くないからその筋力のやつだけでいいや、俺でも使えるか?」
「大丈夫だと思うけど、持ってる魔力によって使える回数に限度があるから気をつけて」
「それ以上使おうとするとどうなるんだ?」
「精神が壊れるわ、死ぬってことよ、まぁあなたの場合私の魔力が流れ込んでるからその心配はないでしょうけど」
「じゃあ二人でずっと魔法使い続けると二人とも死ぬってことか?」
「そうよ、あはは全然バカじゃないじゃない、一回死んで馬鹿も治ったのかしらね?これなら回復術も覚えられるかもよ?」
「お前知り合ったばかりなのに言いたい放題だな・・・」
そうこうしているうちに墓も作り終わり、二人は救世主の手掛かりを探し始める。
「結局手掛かりはないな」
「そうね、・・・?・・・いや待って!私あの時血に染まったマントを確かに見たわ!」
「でも、俺が見た救世主はちゃんと白いマントをつけていたぞ?」
「どういうことかしら、着替えたのかそれとも二人いたのかしら?」
「レイナの見間違いじゃないのか?」
「確かに見たわ、あのマントがなかったらあなたを見つけることもなかっただろうしね」
「そうか、でもないみたいだぞ?誰かが回収したのかな?これ以上は無駄みたいだな、どうする?」レオンは子供たちの墓に別れの挨拶をすませるとレイナに言った
「とりあえずこの街の酒場にいってそれから一番近くの町へ行きましょう」そう言いながらレイナは歩き出した
目的地はここ王都アージェトラムからはるか西、商業の街クラスタ
こうして二人の旅は始まる