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ライオンハート~獅子の心~  作者: れおん
精霊と知らない大陸
17/24

16話 黒の一族~精霊王

今宵は月さえ顔を背ける漆黒の夜


空から見えるは明りに群がる羽虫のごとく


その渦中にあるは守護者の証を持つ子供と


誓いを失った守護者



求めるは唯一の残り香


求めるは命より重き誓いの証


求めるは真実


求めるは平穏



多くが蠢く一晩の逃亡戦


守護者が守るは



~多くの民か~


~誓い盗みし子供か~


~仲間か~


黒き剣は誰の手に



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「お~い!!」

レオンは大声で子供を探す

「ちょっと!?大声あげたら気付かれちゃうでしょ!」

「だめなのか?だって明かりついてるしさ、隠れてるわけじゃないかもしれないぞ?」

「いや、人の剣奪って逃げたら普通は隠れるでしょ!?」


「扉見つけたらいきなり叫ぶのはどうだ?子供だしびっくりして何かしら音立てるかも」


「勝手にやってなさい、丁度いいわ二手に分かれましょう。まさかクラーケンに勝てて子供に殺されることはないでしょうから」

「僕はどっちについていけば?」

「私よ、もう一度1階を探すから手伝いなさい」

「わかりました!」

「私達は静かに探すからね?騒いだら殺してって望みたくなるくらいの拷問をするから」


(可哀想に・・・どこかの国家を相手にするよりレイナを怒らせたほうが怖いんじゃないか?)

「じゃ、じゃあ気をつけてな」レオンは苦笑いをしながら2人を見送った


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


明るいが無人の屋敷の中、レイナは遠くでカタカタという音が聞こえた気がした

「今・・・何か音が」レイナはじっと物音をたてないように耳を澄ました

「ぼぼぼ、僕じゃないよ!?」マークはあわてて声を上げる

レイナはキッとマークを睨みつけると再び耳を澄ました

「まさか、サイファー?中に来たのかしら?しかも音からして急いでるみたいね」

「な、何かわかった?」

「何か外に異常があったみたいね・・・!そうだ・・・マーク!頭の中でサイファーを呼ぶのよ!大声でね?何かに追いかけられてるかもしれないから声には出しちゃだめよ?」

「わかった」

(まずいな・・私は階段が登れないというのに、全員で2階に行かれては伝えられんし・・・・・ん?)


(・・・ファー!!・・・・イファー!!・・・・・・・サイファー!!!)

(マークか!よかった1階にいるみたいだな)


「よかった気がついたみたい、音が近づいてきてるわ・・・・?なんか別の音も聞こえるわね」

「それってやっぱり・・」


その時扉を突き破ってサイファーが部屋に飛び込んできた


(ここにいたか)

「言えば開けてあげるのに・・・ノリノリね」

(フム・・・確かにな・・・クラーケンの時よりあわてていたように思うな、はっはっは)

「フフ、馬鹿ねぇ」


「ちょ、ちょっと!?なにかあったんでしょ?笑ってる場合じゃないって!!」

(いやレイナの言う通りだ、あわてるだけ無駄だった。ちょっと村人に追われて居てな)

「何それ?、村人に追いかけられる鞍のついた馬って!アハハ!!」

「いやそれ笑い事じゃないから!!逃げないと!俺たち魔法使えないんだよ?」

「なにあわててるの?あんたは使えるでしょに」

「そういえばそうだった!でももう作れないから大事にしないと」

「でもさすがに殺しちゃまずいわよねぇ?でも後ろから刺されるのも勘弁だし」

(これを使えばいい)

そう言ってサイファーは扉の前から縄を咥えてきた

「でも一人二人じゃないのよ?」

「じゃあさ!一旦身を隠して」

「却下!そうしたら負担が全部レオンに行っちゃうじゃない」

「最後まで聞いてって!多分全員が全員2階に行くわけじゃないと思うんだ・・・むしろ入口さえ固めておけば1階からしらみつぶしに探したほうが効率がいい。これが計画的なものだとしたら連中だってそのくらいわかってるはずさ、それに馬を追いかけてきたなら1階から探すにきまってる。

だから1階の部屋で待ち伏せして少しずつ捕まえて行ったほうが安全さ!なんたって僕たちはこの大陸の人がちゃんと剣で戦ってくれるかさえ分かってないんだから」

「でも」

(ここはマークの言う通りだ、連中は俺たちが剣を所持しているのを見ていたはずだ。それでもここに来たってことは何か勝算があるとみていいだろう)


「・・・そうね」


「迂闊に移動したら計画も失敗だしこの部屋で待とう。僕とサイファーでおとりをするから、レイナは1人ずつ気絶させていって」

「はぁ、全く・・・野党相手のほうがまだ楽ね」


(まぁそう愚痴るな、村人に襲われるのも貴重な経験だろう)

「・・・来たわよ!」レイナは最大限抑えた声で2人に伝えた

その瞬間サイファーがぶつかった衝撃でゆがんだ扉が凍りついたと思ったら炎によって吹き飛ばされた


「なるほどね、そりゃあ剣相手でも臆しないわけね」

「え?え?なんで?」

(魔法・・・か)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


レオンハートには気になっていることがあった


それは窃盗なら森に逃げずに売ってしまったり隠したり色々できる

それにただほしかったのならあんなみんなが見てる前で盗まなくてもよかったのではないか?と

ただでさえ相手は子供、よほどの力自慢でも子供に剣は重いはずだった


それでもあの子供は剣を大事そうに抱えて走って行った

まるで自分のもののように・・・


(・・・考えすぎかもな。でも1対1で話しかたかったからみんなと別行動になったのは助かったかな)


宣言通りレオンは扉を見つけると「見つけた!!」と叫んでいた

孤児院時代に学んだかくれんぼの必勝法だったが、本人も別の大陸で窃盗を働く傷だらけの子供に通じると本気で思うほど楽観視はしていなかった。まぁなにもしないよりは、と律儀に続けていた


「見つけた!!!」


・・ガタッ・・・・・・・


(まさか本当に見つかるとは・・・レイナに自慢してやろう)


音が鳴った扉は厳粛な雰囲気漂うこの屋敷内でも異質なものだった

(なんというか十中八九子供部屋だな)


扉には落書きや家畜をかたどった木の板などが張り付けてあった


(だまってはいったほうがいいのか?ノックとかしたほうがいいのかな?)

「・・・まぁしないよりはしたほうがいいよな。入るぞ~?」


そこは子供部屋やまして普通の部屋とは思えないくらいほど広く、扉からは想像できないほど何もなかった

中央に豪華なベッドがあり小刻みに震える布にくるまれた物体があった


(隠れてるんだよな?…あれ。なんだかんだいってまだ子供か)


「・・・おーい、でてこいよ。何もしない、怖くないからさ」


するとベッドの震えが止まり勢いよく布がこちらに飛んできた


(ねらってやがったな?)

レオンは急いでベットの上から降りたと思うとまたベッドに腰かけ子供と向き合った


「・・・・」

「で、出ていけ!!!こ、これは僕の父さんのものなんだ!!他の物なら勝手に持っていけ!!けどこれだけは渡さないからな」


子供は恐怖で歯をガチガチと鳴らし、自分の背丈ほどもある黒の剣の切っ先をレオンに向ける

しかし子供の腕力では持っていることそのものがつらいのであろう、剣の切っ先は子供の心をあらわすようにふらふらとさまよっていた


「・・・・重いだろう?」レオンはようやく口を開いた


下から爆発音が聞こえてきた、何か問題でも起きたのだろう


(まぁ、レイナがいれば何とかなるだろう)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そのころ・・・・



「やばい!やばいって!」

「落ち着きなさい!!このままじゃあこの屋敷が壊されちゃう!生き埋めになりたくはないわ、外で戦うわよ!!」


(2人とものれ!やつら刃物は持っていない、全速力で外まで突っ切るぞ)

「だめだ!村人全員だとしたらさすがにサイファーが持たないみんなこっちへ!!」


マークは懐からカードを取り出し扉の反対側の壁に駆け寄る


「みんなはなれてて!」

そういうとカードから紫色の煙が出てきて煙に触れた木材が腐食して溶け落ちた


(毒ガスか?また危険なものを室内で)


「旅の途中で見つけた植物を腐敗させるガスなんだ!」

「無駄話はあと!!行きましょう!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「お、重くなんてない!!」子供は息を荒くして汗を大量にかきながら叫んだ


「いや、その剣は重いさ。今までたくさん訓練してたくさんの人と剣を交えたが・・・・それは相手に一番大事なもの・・・・命を奪うものだ、軽いわけがない」


「い、命なんか奪わないさ!!父さんだって言ってたんだ!!これは守るためにあるんだって!!」


~~~~「お前は俺に殺しを強要するのか?」~~~~


~~~~「俺はこの剣と婆さんとお前に誓う、俺はこの手で大切なものを護る、誰も殺さないと」~~~~


(これは、なんとも・・・・きついな・・・・・この子供はこれから現実を知るか・・誰も殺すことなく自ら死ぬのだろうか・・・・・レイナもこんな気持ちだったのか・・そりゃあ怒鳴りたくもなるな)


「お前の父親は・・・勇者なのか?」


「そ、そうだ」


「確かに俺はその剣を勇者から直接受け継いだわけじゃない・・・お前に返してやってもいい」


「えっ」


「だけどな・・・お前が勇者の息子だからってその剣を受け継ぐって言うなら勇者がこの剣で殺した命とその大切な人たちの憎悪や悪意、すべての責任をお前が背負え」

「な、なんで!!勇者は悪者しか倒さないんだ!!悪者の命なんか背負わない!!」

「ならその剣は返してもらう、力ずくでも、だ」

「わ、わかったよ!背負う!背負えばいいんだろ!?」

「お前は何も分かっていない、やっぱり剣は返してもらう。お前に命を背負える覚悟ができた時、必ず返しに来てやる、だから今はあきらめろ」


「な、なんだよ嘘吐き!!せおうていっただろ!?」


「じゃあ、今ここで私は多くの人間を殺しましたと言え!!!」


「な、なんでそんなこと」


「お前には背負えやしない、気がつかないとでも思ったのか?お前が意図的に殺すと言わずに倒すと言ったのを!」

「!!・・い、意味は同じだろ!」


「じゃあなんで魔王の話をしないんだ?正真正銘魔王は、魔王の家族も魔王の配下も全員勇者が殺したんだぞ!!?」


「そ、それは・・魔王は悪い奴だから・・・」

「でも殺した・・・お前の父親は世界を救う代わりに人を殺したんだ」

「う、うるさいうるさい!!それ以上言ったら本当に刺すぞ!!」


「やっぱり言えないんじゃないか。それに、俺を刺したらお前も晴れて人殺しだな」


「お前が、お前が悪いんだ。う・・うわあああぁぁぁあぁあぁ!!!」


その時扉がチリチリと音を立てて赤く染まっていた

扉の前には勇者の息子が立っている。逃げようと少しずつ移動していたのだろう


(まずい!火か!?)

とっさにレオンは扉に向かって飛び出した


ドゴォン!!という大きな爆発音とともにレオンと子供は吹き飛ばされた



ぽた・・ぽた・・と気絶した子供の顔に液体が滴り落ちる

「う…うぅん・・・・・う、うわぁっ!!」

子供はガタガタと震えながら這ったまま後ずさった


目の前の男は剣が刺さったまま動かない

その位置はどう見ても心臓を貫いていた


「ぼ、僕じゃない、ぼくじゃない、ぼくじゃない、あ、あっちから勝手に」


扉から見慣れたはずの男が

「お前が殺したんだよ!!お前の握っていた剣が刺さっているのが見えないのか?」


「ぼ、僕じゃない!お、お、お前だ!お前が悪いんだ!」

「お前はだれかに守られてばかりだなぁ?母親もお前を守って死んだ!お前のせいでみんな死んだんだ」

「僕の、せい・・で」子供の目はすでに焦点が定まっていなかった


「お・・・・お前のせいじゃない・・・ぞ」


「え?え?」子供は心臓に剣が刺さったまま起き上がる男を見て歯をガチガチ鳴らしながらおびえていた

「ごめんな、本当に怖い思いさせるつもりは・・・ゴフッ・・・なかっ・・・たんだ」

「ふん!死にぞこないが!!心臓に剣が刺さっていて何ができる!!もうじき死ぬんだよ」

「悪いがその期待には応えられそうにないな、お前らに俺は殺せやしない」


「好きなだけ言ってろ!!忌まわしきものの子よ!!お前で最後だ、その穢れた魂を主への贄としよう。お前は父親のせいで死ぬのだ!!怨むなら父親を恨むんだな」

「お前らはいつもそうだな、そうやって俺をイラつかせる。人の苦しみ、死への恐怖、責任、みんな人のせいにして覚悟のない力を振りかざす。俺がどんな思いで覚悟を・・・誓いを・・・悲しみを!!!胸に秘めたと思っている!!

足音が聞こえた時・・・村人だからと無意味なやさしさを与えたことは間違いだったようだ・・・おい」レオンは剣の刺さったままふらふらと子供に歩み寄る

「へ?」

「ちょっとこれ抜いてくれないか?」

「む、無理だよ!?ち、血なんか触れないよ!!こ、怖いんだ」

「やっといったな?それが聞きたかったんだ。俺だって怖いさ、人を殺したら夢にだって見るし


レオンが話している最中後ろから火の玉が迫ってきていた


「よ、よけて!火が!!」子供は必死に目の前の状況を伝えようとする

「大丈夫」レオンはそう微笑むと子供をかばうようにして背中で炎を受けた


「お前は強い、今強くなった。今なら分かるはずさ、あの男の顔が恐怖にひきつっているのが・・な?あれが自分の中に覚悟がないもの、恐怖を認められないものの姿だ・・・剣・・今ならもう抜けるんじゃないか?」

「う、うん。ごめん、ごめんね」

「いいさ、謝るなら行動で示せ。お前の大切な母親が命をかけて守ったお前自身を守って見せろ!!」

「僕の大切な人が守った一番大切な人・・・・い、いくよ!」

子供が剣の柄をつかんで後ずさると血しぶきをあげて刀が動いた

(もはや一番慣れた痛みになっちまったな・・不本意ながら)

それは背に受けた炎よりも熱く今までこの剣で殺してきた者たちの恨みが傷を深くしているようだった


「ぬ、抜けたよ?だ、大丈夫?」

「大丈夫さ!あいつに俺は殺せない。今のお前にだったら・・・殺せるかもな」レオンはそういうとベットのシーツで子供に着いた自分の血を拭った

「な、なぜ!?なぜ死なない!?話している間だって当て続けていたのに!!」男の顔にはすでに戦意はなく足は震えてもはや立ってることすら困難だった


レオンはベットから鞘を取ると血をふきとった刀身を納めた

「・・・・・・お前とはもう口もききたくないが・・・・・これが俺の決めた誓いだ、守るとしよう」

「ひっ・・・化け物め!!こっちに来るな!!こっちは俺だけじゃないんだぞ!!」


「もう口を開くな・・・お前達が俺の守りたいものを奪おうというのなら、全員連れてくるといい・・その命俺が背負ってやる!!」

レオンが剣に手をかけると同時に窓から黒い大きな影が室内を闇に包んだ


(その気概やよし!!懐かしい気配があると思って来たのだが・・・お主はここの血縁者ではないな?)

レオンはとっさに声のもとを探る


(落ち着け、我に実体はない。お主ほどの腕があれば敵意くらい感じ取れるだろうに)

「感じ取れないだけかもしれない。それに、おれのからだじゅうがお前は危険だと騒いでいる」

(ふむ・・それはお前の中に光の魔力が満ちているからであろう)

「俺の命は恩人の魔力によって保たれているからな」

(おそらくそれは外にいる大きな光の気配によるものだな、ほかにも風の…これは馬か?あとは・・・珍しいなこれは時の魔力か!?この大陸には存在しないはずだが)

「別の大陸から来たからな、お前の存在にも驚いてるよ」

(我は黒の一族と長年交流を持っていてな、その一族を皆殺しにされて・・・生き残った子供もいたのだが何分子供には我の力は大きすぎる・・・だからと言って影が岩を砕けるわけもなく・・・こうして契約者になりえそうな人物のもとへ馳せ参じたのだ)

「俺はレオンハート・・・・・・名前は?」

(シャドウじゃ・・・お主この会話方法によくなじんどるようじゃなぁ)

「訳ありでね、こっちもききたいことはたくさんある・・・あとでゆっくり話そう」

(そうじゃな。契約が済んでおらぬゆえ今回は手を貸せぬが・・・平気か?なぜか深手を負っているが)

「もともとお前にこいつの命を背をわせる気はない」


「しゃ、シャドウだと!?契約される前に殺さねぇと!」

「もうしゃべるなと言ったはずだぞ?」

「ひっ」

「お前は俺に剣を抜かせた、これから俺はお前の絶対的な悪となってその業の深い命を背負うと決めた・・・・さよならだ」


「だ、黙って殺されるもんか!この死にぞこないめ!!」

男が炎を出すとレオンはそれを切り払った

(剣圧で無理やり消すとは・・・腕の筋肉がいかれるぞ!)

「この剣ならその心配はいらない。それに俺には待っていてくれる人たちがいる、無理無茶はするが無謀なことはしない」


すると1発では無理と悟ったのか男は炎を所構わず打ち出した


「くっ」レオンは家に炎は燃えうつらないようにすべての火球を掻き消していた

(レオンハートよ!!頼む!そ奴からあのカンテラを奪ってくれ!!)

「無理だ、この家を燃やすわけには」

(くぅ!我との契約さえ済ませることができたなら)


その時、今まで声すら発していなかった男の子がなぜか廊下から飛び出してきていた

「やあー!!」レオンに集中していた男は驚いているすきにあっさりとカンテラを奪われる

「なにっ!?」

「ふんっ!!!!」

レオンが踏み出した後は足の形に窪み鞘から抜かれた剣は光を吸うように鈍く輝いた

「は、ははは!!なんともないじゃないか!?しかもなんだその腕は」

レオンの腕は筋肉や血管が切れて腕の所々から血が噴き出していた

「・・・・だがお前と違って生きている」

(きれいに切られた植物は切られたことにすら気付かずくっつけるとそのまま成長するらしいのう。小僧、夢に見たくなければ我の中に顔を入れておけ)

「で、でも」

(その子を救ってくれてありがとう、遠慮せずに入れ)

「う、うん」


「俺がもう死んでいるだと!?心臓に穴があき腕に血の噴水を作っている奴に言われたくないわ!!」

「あまり喋るな、死期が早まるぞ?まだ切っただけだ死んではいない。死が怖くなければここまで歩いて来て俺のことを殺してみればいい」


「う、嘘だ!なぁ嘘なんだろ!?え?あ、あれ?う、うわ

言い終わる前に男の腰から上は床に落ちて、下半身はいまだ血を噴き出しながら立ったままだった


「さあ、帰るか・・・?」

レオンは歩きだすことができずにひざから崩れ落ちてしまった

(心臓に穴をあけてあれだけ力めばそりゃあ血も足りなくなるわい、腕からも噴き出しおって。いくら不老不死とはいえ血液がなくなれば肉体は腐って魂だけの存在になってしまうぞ?)

「誰かを、守るのに・・・・手・は・・・抜けな…・いだろ?」

(無理して話すな外まで運んでやるからじっとしていろ)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


シャドウがレオンと子供を連れ出すころ


外には何十人もの死体が転がっていた

(おい!)サイファーがレイナに声をかける

「なんか黒くて丸い塊が降りてくるよ!」


「え?」レイナはマークの指さす方向を見上げる

(あれはシャドウですね、闇の精霊王です)

レイナの傍らで光を放つ女性が答える

「それって大丈夫なの?魔王よりたち悪そうな肩書よ?」

(ハッハッハ違いない!人は闇を本能的に恐怖するからなぁ。それより人間の格好とは珍しいなレムよ)

(契約者の要望なのよ)

(ほう、ではこの娘がお前の・・・・む?まさかこ奴は)

(それ以上は・・・・)

(まぁお前の契約者だからな。確かに今すぐに知らないほうがよかろう)

(あなたの契約者は?)

(わしの中だ・・・ひどい無茶をする男でなぁ普通の人間ならもう死んでおる)

(なら早く治療を・・・・いや、あなたと契約すれば問題ないのでは?)

(それがなぁ、どうやら契約の儀で彼女から魔力の供給を受けているみたいでな・・・どの方法を取るにしても安全にはいかんだろう)

(そうですね・・・いいでしょう私から話してみます。あなたは言葉を選べないから)

(すまん)

(レイナ・・彼を助ける方法だけれど)

「相談しなくちゃいけないようなことなのね?」

(はい・・・生存させる方法としてはいくつかあります)

「1つは私があなたを通して回復魔法を発動させる・・ね」

(はい、怪我も癒えて元通りのからだになり、あなたたちが来た大陸に戻れば再び魔法も使えるでしょう)

「逆にいえばこの大陸では使えない…と」

(そういうことです)


「ほかの方法は?」


(彼からあなたの魔力を抜き取って、シャドウと魔力を共有することです)

「2つ質問があるわ。1つは契約に使った私の魔力はこの大陸で言う光属性なんでしょ?闇の精霊王の魔力で平気なの?2つめはさっき契約する時に精霊から魔力は受け取れないって言っていたじゃない?」

(えぇとまず1つ目ですね、あなたたちの大陸で行っている契約の儀は無属性魔法に分類されます、これは単純に魔力を注ぎ込めば成立する魔法です、色々例外があり内容によってはその属性にあった魔力を必要とします)

「ここであっさり契約の儀で突然死する真実を知るとはね。で?2つ目は?」

(はい、これは別に嘘をついたわけではなく精霊の性質によるものです。精霊は魔法とは別にそこに存在するだけで世界に影響を与えます。たとえば光は与え放つ力、闇は奪い吸収する力、ほかの4元素は形は異なりますが主に環境や物質の状態に影響を及ぼします)

「なんか闇属性だけイメージ悪いわね」

(まぁ何といっても闇じゃからな!いいイメージはせんだろうよ。だが実際はそんな大層なことはしておらん、皆が漏らしたり無意識に落とした小さな魔力をくっつけてしまう体質なんじゃよ)

「あなたのその性格はとても好感が持てるけどね。でもなんかそれ静電気で体に埃をつけやすい体質の人間みたいで・・・なんか」

(しょぼい・・・じゃろ?だがその地味さで我々闇の精霊は精霊の中で一番魔力に困らん生活を送っておるよ)


「じゃあ本命の三つめね?2つはいくつかとは言わないわよ?」


(なんとも・・・勘の鋭いおなごじゃのう・・光の契約者は基本的にのんびりしているもんじゃが・・・どうせ隠せはしまい、聞かせてやれレム)

(ですけど)

(これは、わしの契約者の問題じゃぞ?それにどれを選ぶかわしらに決定権はない)

(わかりました、3つ目です。これは基本的に魔力の枯渇した人間や消えそうな精霊王を助ける手段です。今回のように魔力の供給されている人間に行うものではありません。)

「話したくなかったんでしょ?ごめんね・・・でも危険なことだろうってのはうすうす気が付いてるわ、教えて」

(あなたの光の魔力を供給した状態の上でシャドウの魔力をさらに入れるのです)

「確かにそれは無理ね・・・もともと空か精霊王ほど莫大なキャパシティーでも持っていない限り」

(ええ、どんな生き物も自分よりも大きな食べ物は食べられません)


「どうしよう」


(?お!お忘れておったわ、わしの中に入れたままじゃった)

そう言ってシャドウはレオンと子供を自分の中から出した

(これは…確かにこんな怪我で生きている人間見たこともありません!)

「?いつもこんな感じよ?両腕を切り落とされたこともあったしね」

2体の精霊王は苦笑いをするしかなかった

(今までの会話は聞こえてたじゃろ?)

あおむけに倒れているレオンは少しだけ頷くと3本の指を立てて皆に伝えた


「あ、あなたね!!死ぬかもしれないのよ?3番を選ぶんだったら傷だけ直して元の大陸につれてかえるわ!!」

「お・・前・・からそん・・な・・ゲホッ・・しおらしい・・言葉が・きけるなん・・てな」

「そんなこと言ってる場合じゃ!!」

「大丈夫さ・・・俺が・・ぜったい・・死な・ないのは・・二人だけの・・唯一・・絶対の・約束だ・・・・から」

「・・・うっ・・・そんなの・・ぐすっ・・・ずるいよ・・・・・死んだら・・・追いかけて殴ってやるんだから」

(決まったようだな・・・レム彼女は今精神が不安定だ、手伝ってやってくれ)

(そのつもりよ・・・絶対に成功させるわよ!!)

(気を張っているところ悪いがなぁ・・・レムよ…こ奴不死身のようでな、激痛で精神が崩壊でもしない限り失敗はしないだろうよ)

(それはすでにレイナから聞いています!!これだけの傷ですもうすでに精神的にもつらいはずなのに・・・これからあれをやればいつもなら起こり得ない精神崩壊が最も起こりやすくなるんですよ!?もっと真面目に考えてください!!)

(わ、分かった、悪かった!すぐにでも始められるぞ?)


(ではレイナを呼んできます)


(聞いておるか?レオン)

レオンはさっきのように小さくコクっと頷いた

(これから大切な話をする・・・よく聞け。ほかの精霊と違って闇の魔力はそれ自体が明確な自我はないが意志を持っておる。お前に流し込めばそれはお前の中で暴れるはずだ、わしはそのまま意識をのまれた術者を幾人も見てきた。

わしも契約者の自我を破壊されるところは見たくない、だからわしは強い意志を持つあの勇者を生み出した黒の一族と長年契約を結んできた、皆万全の準備をして臨んだがわしから出てくるとボロボロになって出てきたものじゃ。結局勇者と呼ばれた若者はわしとは契約しなかったがな。

正直お主のそのけがで戦いの場に出したくはない。いくらその体で戦わないと言っても、お前であることに変わりはないからな)

「あ・・りが・・・・とう・・・・やさしいン・・だな・・シャドウ・は・・闇の・・王・・なのに」



(減らず口を!!・・・・寝たか)


これから始まる長い夜は永遠の闇をもたらすのか



それとも漆黒の夜明けになるのか



当の本人は未だ眠りの中に・・・


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