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ライオンハート~獅子の心~  作者: れおん
すべてはここから
13/24

12話 密航者~手品師

レオンたちが海賊船に着くと待ちわびていたのかイレーネが出迎えてくれた


「準備はできたのかい?」イレーネが声を張ると次々と配下の男たちが出てきた


「大丈夫よ」

「だ、大丈夫・・・だ」レオンは息も絶え絶えという様子で答える

(…とてもではないが信じられんな)サイファーは事情を知っているのでやれやれといった様子で首を振った


「坊やは大丈夫じゃなさそうだぞ?あんた達用に部屋を空けておいたからそこで休んでるかい?」

「問題無いわ、ちょっと運動不足なのよ」

「ありがとなイレーネ・・・でも俺は大丈夫だから」

レオンは心配させまいとできる限りの笑顔をつくる


「そ、そうかい?じゃあ依頼の内容の相談とかもしたいからあたしの部屋に来てくれ」

イレーネはレオンの笑顔に顔を赤くしつつ用件を伝える。しかし、もちろんそれをよく思わない人物もいる訳で


「レオ?船での訓練はたった今5割増しに決定したわ」レイナは最高の笑みを浮かべながらレオンに言った

「な、なんでだよ!?俺何かしたか?」レオンがボロボロの体で目をウルウルさせてレイナに訴える

「うっ、何?この子犬のような仕草は・・・なぜか自分が悪いことをしている気分になるわね」

(そう思わせる原因のすべての元凶がお前だからな、それは心も痛むだろうな)サイファーはレオンに紐をひかれながら言った


「あんたも懲りないわねぇ?」レイナの背後から黒くてまがまがしいオーラが立ち上る

(しまった!レオン乗れ!逃げるぞ!)

「俺もかよ!?」


3人はバタバタと目的の船長室まで走って行った

「全く騒がしい連中だねぇ」やれやれと言った様子でイレーネも後を追った


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


イレーネが部屋に着くころにはレイナの両隣りにボロボロの男と馬が座って・・・いや、横たわっていた


「だいぶくつろいでるみたいで何よりだよ・・・ちょっと遠慮に欠ける気がするけど・・・まぁ所詮ここは海賊船だからね」

イレーネは苦笑いをしながら席に着いた

「で、私たちの仕事って?ここまで隠してたんだから人に聞かれたくないんでしょ?それかどうしても断られたくないか・・・ね」

レイナはすべてを見透かすような瞳でボンズを見つめた


「あんまりうちの奴等を脅さないでおくれよ、トラウマになっちまうから。あんたらに頼みたい仕事は2つさ」


「一つは、あいつと遭遇した時の護衛だな?」レオンはいきなり深刻な顔になって話した

「そう力まないの、結構日がたっているから海の上で昼寝でもしてない限り出会ったりしないから」レイナがレオンをなだめる


「そうだけどさ・・・ん?・・・・じゃあお前ら俺達なんか雇わないで少し待ってから船出せばよかっただけなんじゃ?」レオンがふと疑問を上げる


(今頃気づいたのか?だからレイナは警戒してたんだろうに・・・最近の特訓はその心配ゆえの保険だったのだろう)

未だに海賊達が完全に信用できない二人は自分自身にサイファーは喋っていないと言い聞かせた


「そう、私達が呼ばれた理由にあまり触れられたくない、そんな態度を子分の男たちは取っていたのよ」

「こいつらはバカで正直だからねぇ、頭使ったり隠し事したりはできないみたいだね」

「そうやって話をのばしたがるのも結構気になってたけどね?」レイナはイレーネが誤魔化そうとすることに釘を刺した

「まぁまともな奴ならこの話は断るからねぇ、そりゃ言いにくいってもんさね。あんたの言う通り男の心配はしてないよ、話を聞いた時も海を歩くなんて信じられなかったしね・・・でも船を簡単に壊す生き物ならあたし達には心当たりがあったのさ」


「・・・・クラーケンでさぁ」ボンズが完全に下を向いてイレーネの話に付け加えた

「クラーケン?あのおとぎ話の?「海には魔物が住んでるぞ」って子供のころに本を読んでもらったことがあるわ」

「そのクラーケンで間違いないと思うよ。海には魔物が住んでいる、この大陸でこの言葉は海は危険だから気を付けなさいっていう意味で使われているけどあたし達海賊には


その本当の由来が語り継がれているのさ」イレーネが異様に古ぼけたノートを取り出してきた

「それは?」


「先代の日記さ、私の父親・・・私の父は海で行方不明になったんだ。クラーケンに出会ってね」

海賊の男達はその話が始まった途端に揃って下を向き何も言わなくなってしまった


「先代は海賊のくせにそれはそれは正義感の強い人だったらしい」

「今どき珍しいな」レオンが相槌を打つ


「そうね、そしてとても強かったそうよ・・・いなくなったのは私がまだ幼いころだったから私には分からないけれどね」

「それがまたなんで海賊なんかに?正反対なイメージだけど」今度はレイナが相槌を打った


「私の家系は元々傭兵や用心棒、護衛とかで生活していたらしいわ、私の父もそれに漏れずこの町を護っていた。この町に強者の館ができてからは街で暴れる男達もそこにだけは登録してお互い奪い合っていたそうよ」

「どの街も似たようなものなんだな」レオンが言う

「そうさね、でもそれは父にとっても有効活用できる場所だった」

「暴れる男が集まるからね、問題もすべてそこに集まるようになるって訳ね」

「そう、殺して奪う強者の館で父は誰も殺さずに勝ち続けたらしいわ」

「それは確かにすごいわね」


「そして次第に恩を感じた奴も出てきて、父は自警団を作ったらしいわ。ここは港町だから船もまもろうって思ったのね、主な仕事は船に乗って行っていたらしいわ」


「ま・・・まさか、それが?」

「そう海賊の始まり、強者の館に登録するようなゴロツキが街を守ってるなんて誰も思わなかったのね。船に乗って近づいてくる強面の男達に商船は必死で逃げ回ったそうよ」


「あほみたいな話だな、そいつら自分達の姿に自覚なかったのかな?」レオンが呆れながら言った

下を向いたままの男たちが心なしか恥ずかしそうに顔を赤らめた


「ある時ほかの大陸に商売に行くってこの町を勝手に出ていってしまった船がいたの、でも家には海には本物の魔物が出るって言い伝えがあったから父達は必死で引き留めにおいかけた」


「いい人ね、私ならそんなことしないわね」

「今の時代それが普通だろうね、商売敵が減ってむしろみんな喜んでたみたいさね。で、駆け付けた父はクラーケンに襲われている商船を見つける」


「その時行方不明になったんだな」

「父は囮になった、部下に商人を連れて帰らせて一人で商船でクラーケンと戦ったらしいわ」

「それはまた・・・無茶するわね、貴方の父さん」

「そのまま帰ってこなかったけどね、でもそのおかげで街の商人達はあたし達の言うことなら何でも聞くし生活はしやすいけどね、こいつらが私に尽くし放題なのもそれが原因さ」

「まさかボンズ・・・・商人だったのか!?」レオンが大声で驚く

「ちがうでしょ」(違うだろ)レイナとサイファーは頭を抱える

「こいつらがその時の部下なんだよ、気にしなくていいって言ってるんだけどなかなか難しいみたいでね」

「そりゃそうでしょうね、聞く人が聞けば見殺しにしたようなもんなんだから」

「レイナそれは言いすぎだぞ?」

「レオン・・・私が言ったのはこいつらの気持ちよ、自分でそう思ってるのよこの男達は」

「・・・・・その通りでさぁ・・・俺達は恩人を見殺しにしちまった、だからお頭に対する罪滅ぼしと二度と同じことが起きないようにあっし達は海賊を続けてるんでさぁ」


「で、そのクラーケンにはどのくらいの確率で遭遇しそうなの?もし遭遇しそうなら大きさや体の特徴、出航する前に教えておいて」

「た、助けてくれるんですかい?命の保証はできませんぜ!?」


「別にあんた達に同情した訳じゃないわ、私達にも海を渡らなきゃいけない事情があるの。貴方達にも戦ってもらうしね?」


「ありがとうごぜぇます!!おいオメェらぁ!!先代の敵打ちだ!!気合入れていくぞ!!」ボンズが顔を真っ赤にして船員に喝を入れた


それから船の出航は順調に進み、レイナが海賊を使って即席のいかだを大量に作らせたこと以外は何の変哲もない船旅だった


「おいサイファー!魚が泳いでるぞ!こっち来てみてみろよ!」

(だから俺は泳げないと何度言ったら・・・・足元が揺れるだけで落ち着かないというのに)

「実際に船に乗るのは初めてね、貴重な経験だわ」


一行は海賊船を客船のように使って船旅を楽しんでいた、クラーケンが出なければ仕事さえ無く料理も勝手に出てくる生活を満喫していた

ある日イレーネの呼び出しがありレオンたちを含めた全員がデッキに集められた

「皆わざわざ集めてすまないね、陸でならこんな問題気にも留めないんだけど今回はお客もいるからね・・・・誰かが食料を盗み食いしてるみたいなんだよ、海での食料は金より貴重ってことはみんな分かってるはずさ、レオンたちにしても食事が欲しい時は遠慮なく言ってもらってる」

「ってぇことは誰かが」ボンズが見た目に似合わず考え込む

「そう招いてないお客さんも乗ってるみたいなんだよ」

「また残念な奴もいたものね、化け物と戦いに行く船に乗り込むなんて」

「確かに同情するね、だけど食料は無限じゃないからね皆で探し出すよ!」


それから密航者探しが始められたが一向にその姿は見つからず、時間はかかるが食料を見張って捕まえることに決定した


しかし船員は皆仕事があり手があかないのでレオン一行が見張りを担当することになった

それから3日がたったが食料に問題は無く密航者も現れることが無かった

「本当にいるのかよ?これでもう3日目だぞ?」

「案外そこらへんで頭打って死んでたりしてね」

「縁起でもないこと言うなよ」

(相変わらず恐ろしい娘だな)


その時ボンズがあわててレオンたちを呼びに来た

「旦那達、密航者が見つかったぞ!!」

「そう、死んでなかったのね。で?どんな奴だったの?」

「し、しんで?まぁいいや今頃デッキで皆がボコボコにしてるはずでさ!」

「おぉ!なんか海賊みたいだな!」

「俺達一応海賊なんすけどね、あんた達も来て下せぇ」


そうしてデッキにたどり着いたレオンたちが見たものは殴られている男の姿ではなく歓声に包まれている美男の姿だった


「なんだなんだ?皆騒いでるぞ?イレーネまでいるし・・・」レオン達はなぜか歓迎されている男に近づいて行った


「イレーネ!どういうことなんだこれは?」

「ああ、あんたかい!樽の中で男が眠ってたって知らされてね、一発殴りに来たら代金にって不思議な事をし始めたんだよ」

「不思議なこと?」

「見てたらわかると思うよ。ほら、あたしの隣に座りな」

「そう?じゃあ遠慮なく」そう言って座ったのはレイナだった

「あんたはあっちの端に席を用意しておいたよ、ここはレオンの席さ」

そう言ってにらみ合う二人をよそにレオンはサイファーを連れて男に話しかけていた


「なぁあんた

言い終わる前に男は雷や炎などいろいろなものが一枚ずつ描かれたカードを差し出してきた

「なんだ?選べばいいのか?じゃあこれ」

レオンは花の描かれたカードを指さした

男はそれを確認するとカードを何度もシャッフルし今度はレイナに選ばせた

「え?わたし?じゃあこれにしようかしら」

そう言って手に取ったカードには先ほどと同じ花の絵が描かれていた

「まあ!貴方手品師だったのね?」レイナは少し嬉しそうに聞いた

「ん~正確にはマジシャンかな、その証拠に美しいお嬢様がたには贈り物をさせてもらうよ」

男がそう言うとレイナの持っていたカードの絵が空中に浮かびあがりそこから大量の花びらが舞った

「おぉ~!!」そこにいた全員がその光景に見とれていた


「俺はマーク、旅のマジシャンさ。特技は手品と


言い終わらないうちに魚とは似ても似つかない生き物が海から船に飛び乗ってきた。即座にマークは雷が描かれたカードを投げつけるとカードはその生き物に突き刺さった


「ではみなさん少し早いですが・・・終劇とさせてもらいます」そう言ってマークがパチンと指を鳴らすと空から不思議な生き物めがけて雷が落ちてきた


「!!魔法使いだったのね」レイナは絵の消えたカードを拾い上げる

「紙を媒体にしているのにあの威力、どういうこと?」

「それは企業秘密ってことで、まぁ特技は手品と魔法って事で」


マークの華麗な魔法には目もくれずにボンズ達は先ほどの生き物から目が離せないでいた

「で、でた」

「あなたたちこれが何か知っているの?」レイナがボンズ達に問いかける

「これが魔物ですよレイナの姉御、俺たちのいた大陸の外には普通にこうして凶暴な生き物が生息してるんです」

「これが、でも思ってたのより弱かったわね」

「そりゃあそうっす、こいつはクラーケンの手下みたいなもんすから。でもこいつがいるってことは」

「クラーケンがいるってことか」

レオンが口を開くと海から海賊船の3倍はありそうな巨体に体中に術式が描かれたイカのような生き物が姿を見せた


「で、でか」

「聞いてた話以上ね、成長したのかしら」

「え?え?何こいつ?どういうこと?」マークは聞いてないとばかりに取りみだす

「あたしらはこいつを仕留めるために海に出たのさ、あんたも運が悪かったね」イレーネが忘れてた説明を始める


生死をかけたクラーケンとの戦いが始まろうとしていた



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