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日曜日の夕暮れ

作者: 重野 松子

今日の天気予報では、最高気温35だと言っていたのに、それ以上に感じられる。地面からの照り返しがあつい。手の指の毛穴からどんどん汗がでていく。服が汗でからだにへっつく。10分前に買ったペットボトルのお茶がぬるい。

ったく、こんな暑いのに外で待ち合わせなのがおかしいのだ。だいたいこの村の人はのんびりすぎる。

10年ぶりかーー

高校卒業してから、東京の大学に進学、そのまま東京で就職した。時々母親から電話がかかってくるが、なかなか帰る機会がなかった。

そんなとき、かつての親友、中村 太一から一本の電話がかかってきた。同窓会なんていく気なかったので断ろうとおもったのだが、太一が以外な名前をだしてきた。

「山本 善晴。やまもっちゃん。ほら、いただろ?お前と、同じ東京組の、、、」

東京組。東京の大学にでていく人はそうよばれていた。ある者は、羨ましそうに。またある者は、非難するように。

東京はみんなのあこがれだった。なにもない村だったのだ。本当になにもない。家の事情は隣近所に筒抜けだったし、なにか悪さすれば初めてあった人にもげんこつをくらうような。プライバシーもなにもない村なのだ。

「高校卒業したら東京へ」

東京組だけじゃない。地元に残る奴らも合言葉のように、何かの呪文の様にそう言っていた。

「あいつ、死んだんだってさ。」

その言葉が今も頭からはなれない。

「だからさ、同窓会ついでに、やまもっちゃんに香あげたいだけど…ほら。一人はちょっとな…」

太一の気持ちもわからない事はない。子供をなくした親の所に同級生が行くのははばかられる。

「お前のお袋さんもお前が帰ってこないから心配してたぞ。」

結局、太一におされて土曜日の夜実家でとまって日曜日に同窓会、夕方には帰ることになった。

朝から電車を乗り継いできたはいいが、この村の駅には屋根がない。直火焼きだ。


一台の軽トラがとまった。運転席からはいかにもいかつい男がでてきた。

「ひさしぶりだな。」

タンクトップからでた腕は血管がうきあがり、日焼けをしていて、服の上からでもわかるその腹筋と背筋、スキンヘッドにタオル。

「わすれたのかー?俺だよ、いそろく」

思い出した。秋元磯六。学校でもトップの不良だが根はやさしく。情に暑い。そのうえ不器用でなかなかの人見知り。本当に不良か?と疑ったこともあるが、本人確かめたことはない。ただケンカっぱやく、一度キレたら手を付けられないのは誰もが知っている。

ニッと笑ったときに見えた歯はタバコの吸いすぎかヤニがついていた。

「お前のお袋さんに迎えに行く様にたのまれちまってな。」

補助席に乗ると車内はタバコ臭かった。でも、少しだけ良い匂いがした。あまい匂い。

いろんな話を磯六はした。

大工になったこと、スーパーができたこと、商店街の人がスーパーに反発してること、結婚したこと

「驚いたか?ん?相手か?」

きいてもいないのに、嬉しそうにはなす。

「香穂子だよ。」

時がとまった。

「香穂子って、村一の美人の!?」

おう。と嬉しそうに磯六は返事する。ありえない、子供までいるなんて…

香穂子は本当に美人だった。大概の男子は惚れていた。性格もよく、女子にも好かれていたし、頭もよかった。運動だけはだめだったがそこがかわいい所でもあった。

「でも、なんで?」

確か、香穂子は東京組だったはず…

「もどってきたんだよ、5年前。」

話によると香穂子は変な宗教にはまり抜け出さずにこまっていたらしい。そこに磯六からの年賀状。

「びっくりしたで、ほんとに」

すぐにこの村に戻るようにいうと、帰る家がないといった。香穂子の親は香穂子が東京にいってすぐに亡くなった。

「俺の家にこい。」

それからいろいろあっていまにいたるという。

この良い匂いがは香穂子のか…

「おし、ついたぞ。」

久しぶりの家だった。そばの畑では親父が作業していた。軽トラがきたことに気づくと作業をやめ、ちかづいてきた。





読んでいただきありがとうございます。

どんどん話を追加しますので、楽しんでいただけると幸いです。

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