キャンプ後
キャンプ後の笹本との触れ合い。近づきそうで、そうでなさそうで・・・・
ハードなキャンプが済んだ後、また通常の活動が始まった。
彼女との関係や距離は、心理的には極めて近かった。なのに、告白にはまだ至らなかった。
尾形と合わない、と山本から相談を受けたときに庇ってくれた笹本を、このときはまだ「大好きな異性」とまでは認識していなかったのかもしれない。
ただ、尾形にとってはかけがえの無い大切な存在であった事は、間違いなかった。
しかし、同じサークルの他のグループからは、噂がたったらしく、こんな声が聞こえてきた。
「尾形の好きな女の子、きっと笹本だよ。いつもからかって、ちょっかいだしてるみたい」
そんな噂が本人である尾形の耳に入ってきても、不思議に尾形は不快な気持ちにはならなかった。
まだ、自分の中の彼女への思慕が、友情なのか、愛情なのかの判別は、出来ずにいた。
そんなとき、尾形にとってちょっと嬉しいニュースを笹本から直接聞いた。
笹本が、下宿の自分の部屋に直接、電話を開通させたのだ。
これで下宿の代表番号にかけなくても、彼女の声が聴ける!そう思うと、尾形は嬉しかった。
で、早速電話をかけて、彼女の声を聴く。
「もしもし、笹本です」
笹本の声だ!尾形は柄にもなくちょっぴり緊張する。
「あ、尾形やけど」
「こんばんは。」
「電話の開通、おめでとう!」お祝いを言ってみる。すると笹本は
「ありがとう!でも尾形、また私を電話かけてきて、いじめるんやろ~~」と聞き返してくる。
何故かそんな彼女がかわいい。
「そんなことないよ。可愛がってあげてるんだ。男同士なんだから」
「何っ!男同士って!いぢめる!尾形がいぢめる~~!」
尾形は急に改まった。
「あんなぁ、笹本。何か知らんけど最近、変な事感じるようになってん・・・・それがな?オレにとって、ホンマに大事な人って、笹本やないんかって・・・・」
言ってしまった!確信が持てない段階で、どうしてこんな言葉が出てきたんだろう?
でも・・・。自分が彼女を好きなんだと思い当たるフシが、ないではなかっただけに、ちょっぴり、ほんのり、こんな言葉を口にできた事は、尾形は嬉しかった。
笹本は返してきた。
「そんなくさいこと、言わんとってよぉ~」
尾形は驚いた。あれぇ!?何だか、脈がありそうだ!