ヘビーな課題
笹本と尾形、そのほか数人の先輩とのグループで、英語を使ったドラマを作り発表する事になったのですが・・・・
さて尾形のサークルでは、キャンプにおいてやらねばならない課題は4つであった。
そのうち2つまでは、個人プレーで何とかなってしまう。
しかし英語を使ったショートドラマの制作は、「集団行動」だった。
一つ上の先輩がストーリーと配役を決定し、英語でのセリフまで作ってくる。
そして演技や、セリフにぎこちなさがなくなるまで、練習を繰り返すのだ。
個人プレーで済んでしまう準備を優先させたいのが本音だったが、先輩から集まれと言われれば、逆らえなかった。
ただし練習に参加したら、嫌がらずに精一杯やった。
紅一点の笹本も、大人しく練習に参加していた。真夏のキャンパスは、ギラギラした太陽が照りつけ、暑い。
その中を練習した。
今思えば、大人しく練習や準備が出来たのも、先輩たちの気遣いだけでなく、笹本がいたからかもしれない。
いや、十中八九、そう言いきれる。
尾形たち新入生は、確か2対2に分かれてドラマを準備した。尾形と笹本の組み合わせになった事について先輩ははっきりと「相性で分けたんだよ」と事も無げに言った。
笹本とドラマが一緒だった事、練習の間、彼女と時間が過ごせる事は、尾形にとって、何故か癒しの時間だった。
尾形は、傍から見ていたらじれったいほど、自分の気持ちに鈍感だった。
あるとき、ドラマの製作担当の西島先輩が、同級生の梶山先輩と激しく口論した。
後輩の立場である尾形や笹本は、何も言えなかった。
梶山先輩は、ドラマの練習はそこそこに、自分のやりたい事をやりたい、と西島先輩に言ってしまったのである。
たちまち険悪になる雰囲気。
尾形は笹本が「(自分の事をやりたいって言った)梶山先輩の気持ちもわかるなぁ」とボソッと呟いた姿が、とても印象的に思えた。
それでも尾形は、笹本が横にいてくれる事が、嬉しかった。