夏のキャンプの青春
サークルのキャンプで、尾形は笹本を気遣います。
桜はいつしか散り、暑い夏がやってきた。
しばらく笹本とも出会わない日々が続く。笹本は下宿を離れ、実家に戻っているようだった。
尾形はと言えば、バイトに精を出す毎日だった。
しかし、完全に解き放たれたわけではない。
尾形の属するサークルはなかなか規律が厳しく、9月初頭に行うキャンプまでに、さまざまな準備をしなければならない。
例えば、英語でのスピーチを作って発表したり、英語で議論したり、と英語を道具にさまざまな課題に取り組まなければならなかったのだ。
その意味では、夏も気が重かった。
とはいえ、授業もない、本当に開放された日々。浪人生活とは、雲泥の差だった。
夏の刺激的な日々はあっという間に過ぎ去り、夏のキャンプを迎えた。
先輩たちからは、ある課題で、笹本と一緒に割り振りをされた。
後から聞いてみると「尾形は笹本との相性が合う気がしたから」と言われた。
内心、嬉しかった。
ハードな課題を終えた後は、先輩たちがキャンプファイヤーを企画してくれた。楽しかった。
このとき、同じグループの先輩の一人が、一人で座っている尾形に近づいてきて、話しかけた。
「どうだった?夏休みを迎えるまでのサークル活動は?色々あったやろう?お前、笹本ってカワイイやつやと思わんか?」
尾形は答えた。
「はい、思います」
そう思うやろ・・・・先輩は続けた。
「最近、あいつはサークル活動で、ポツンと一人になる事、多くないか?このまま気遣わずにほっとくと、あいつ、クラブを去ってまうかもわからんで」
それを聞いて、尾形は内心「それは困る!」と叫んだ。
キャンプファイヤーが終わってから、尾形は笹本を、人気の無いところに呼び出した。
「笹本。お前、ほんまに大丈夫か?最近、一人でおることが多いから、・・・何かお前が心配になってさ」
笹本は答えた。「有難う!大丈夫よ、あたし」「・・・・・。」尾形は、笹本が虚勢を張っているような気がして、そんな返事を利いても不安だった。
するとあくる日、笹本は尾形のコメントシートにあらためて「有難う!あたしのことを心配してくれて。あたしは大丈夫です!それから、あたしのモノマネ、やめてね。笹本絵里」と書いてきた。
尾形は不安だった。
オレの気遣いが、正しく伝わったかな、と。