ふれ
尾形が、笹本とサークル活動を通じて触れ合ってゆきます。
何もかもが新鮮で、開放的なキャンパスライフ。尾形は受験で縮こまった心と体を、精一杯伸ばしていた。
尾形が属したサークルは、英語研究会。全員ではかなりの人数がいたが、複数のグループに分かれて活動するため、実際はフレッシュマンは活動開始当初は4人だった。
女の子は3人。笹本もその中にいた。オトコは尾形1人であった。同級生の同性がいないのは寂しくもあり、また嬉しくもある、複雑な気持ちだった。
大学生のサークルは、下ネタの嵐でもある。
3人の女の子の内、たった一人だけが「夜の女」と呼ばれていた。「夜の蝶」という訳だ。
あとの2人は「昼の女」と呼ばれ、何とも複雑な思いを抱いているようだった。
笹本が直接、尾形に言った言葉である。
今とは違って、携帯電話もメールも、ましてや無料電話のスカイプなんて全然無い時代。
尾形は無性に彼女とサークル活動が終わった後、話したくなった。
だが家の固定電話は動かしづらく、子機もあっという間に電池切れになった。妹もその固定電話を使うことがあり、電話に関してプライバシーなど当時はなかった。
昼のオンナと呼ばれていた笹本をからかうのが、なぜかすごく楽しかったのである。
尾形は調子に乗って、目の前の笹本に呼びかける。「おい、オッサン」笹本が怒っていいのか、笑っていいのか分からないなんとも複雑な表情を浮かべて、尾形に言った。「な、お、オッサンって!あたしオッサンちゃうもん」「笹本は女ちゃうやろ?お前。何で女子寮なんか下宿してんねん」女扱いされなかった笹本は、いじられながら少し苦笑いを浮かべている。何とも複雑な表情だ。「い、いじめる~~!尾形がいじめる~~」と、こんなくだらない会話をサークルが終わった後していた。
そうやってからかうのが楽しくて・・・・でも・・・オトコとからかっている笹本が休んだりすると、妙に寂しかった。
「何でこんなに寂しいんだろう??・・・・・」自分でも理由が分からない。
で、電話してみる。
彼女は当初、下宿の自分の部屋には電話を通していなかった。だから、電話は下宿の代表番号にかけなければならない。笹本本人が出るとは限らなかった。
「もしもし」少ししんどそうな声が響いてきた。尾形は気遣う。「今日、休んだやんか・・・体調、どうなん?」「ありがとう・・・大丈夫よ」
なぜ、彼女の声を聴けると、こんなにホッとするのか、尾形は自分でも理解できなかった。