笹本の逆襲
尾形は照れくささから笹本にKY発言をしてしまいます。それを聞いた笹本は・・・
心臓が飛び出すかと思うほどひしと抱き合った2人は、長い時間あってようやく離れた。
尾形は笹本に切り出した。
「なぁ。オレの事、駅まで送ってくれへん?」
大学から最寄り駅まではかなり遠く、バスでないと事実上、通えない。
今晩は笹本と一緒だし、ぎりぎりまで笹本と過ごしたかった。
素直に送ってくれる笹本。嬉しかった。
そうだ、ちょっとちょっかいをかけてみよう。少しくらいだったら許してくれるだろう。
マウンテンバイクをわざわざ押しながら、一緒に歩いてくれる笹本の右手を、尾形は握った。
そしてコンドームの自販機を指差してちょっかいをかけた。
「なぁ笹本?あれってなんに使うんやろうなぁ?」
「・・・・・・・。」返事が無い。
しまった、怒ったかな?
会話が無いのに焦った尾形は、友達だった頃のように言ってしまった。
「笹本ぉ、色気無いぞ」
あまりにもデリカシーが無い尾形の発言。
笹本は無言だった。しかしその表情は、穏やかだった。
川沿いをひたすら歩いて、少し疲れた二人は、ある橋の下で腰を下ろした。
「ちょっと休もう」
笹本はマウンテンバイクがとられないか気にしながら、腰を下ろした。
「ねぇ、笹本。マウンテンバイク以外に、何が趣味?」
「う~ん、旅行かな・・・・」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
またしても会話が途切れてしまった。どうしよう!と尾形が思った次の瞬間、
笹本がゆっくりと尾形の左肩にしな垂れかかってきたのだった。
尾形は驚きと喜びで一杯になった。
尾形は、無言で笹本を抱き寄せた。
「可愛い!」尾形は心の中で叫んだ。
これまでに聞いたことも無いほど、優しく甘い声で尾形に囁いた。
「髪の毛、触っていいわよ」
笹本は、これまでにないほど優しく、甘い声で尾形に尋ねた。
「あたし、色気ないんやろぅ?」
これを聞いた尾形は、すまないという気持ちと、いとおしみで一杯になった。