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夢みる籠のことり  作者: 宮原 奏音
5/5

2人の最期

結構更新遅くなりました。

これで終わりです。

a:novellの方にあったのがなくなったと思って次を書いたらもう最終回になってしまいました。

この話を書き始めた時はハッピーエンドになるつもりだったんですが結果的にバッドエンド(?)になってしまいました。

外でなにやら騒ぎが起きている。

使用人さんたちが皆下の階に走っていく。

何事だろうと思いながらも私はどこか懐かしいような感覚がした。

バンッ


不意に扉が開いた。

振り向いた先には疲れ切った朧の姿があった。

「朧!どうしてここに。」

夏夜乃かやの。君に…選んで欲しいんだ。」

いきなり朧は私にそう言った。

何を言ってくるのか、だいたいの予想はついていた。



「選んで、僕と一緒に逃げるか、この家に残るか。君の選択に僕はなにも文句は言わない。だから決めて。」

だいたいは予想通り。そして私の答えもまた、決まっていた。

「勿論一緒に行くわ。あなたと一緒ならそれだけで幸せだもの。」

「…ありがとう。じゃあこっちから行こう。」




そして私たちは誰にも見つかることなく中庭までついた。

思い出せば最初に朧と会ったのもここだった。

この場所から、全てが始まったんだ。

「ここから出るんだ。夏夜乃から先に行って。手伝うから。」

そこは少し低いサクだった。夏夜乃の身長より少し小さい。

「わかった。よいしょ。」

急いで登って向こう側に降りた。

「次は朧よ。」

「わかってる。」

朧がサクを登る。

その後ろに、お父さんの姿が見えた…。

といっても小さかったので少し遠くにいるのだろう。

しかしあの人は目的のためには手段を選ばない。

今だってほら、銃を持っている。

「朧!早く。」

「よっと。急ごう。」

サクを超えた朧は私の手を握って走り出した。

温かい手のぬくもりが伝わってくる。




パァン!




大きな銃声が響いた。

胸から大量の血が噴き出し、服に大きなしみができている。

しかも、私の胸に。

ぷつっと糸がきれるような感じに視界が暗くなっていく。

朧が必死で何かを言うがなにを言っているのかは聞き取れない。






「夏夜乃!目をあけてくれ夏夜乃!」

朧は必死で夏夜乃の名前を呼び続ける。

と、後ろに人の気配を感じて振り返った。

そこにいたのは夏夜乃の父親だろう男の人。

いまだに煙をあげている銃を片手に持っている。

「いくら言うことを聞かないものでも逃げられるくらいならこの手で始末する。君がこんなことをしなければ夏夜乃が死ぬこともなかったのにな。」

その顔は精神がいかれてしまった者のように狂っていた。

まるで壊れたガラクタを捨てるとでもいうかの様に無機質に言った。

自分の子供を殺して悲しむ様子などこれっぽっちもない。

こんないかれた男に夏夜乃が縛られ続けていたと考えると怒りがあふれてきた。

しかし朧には銃をもつ相手に対して対抗するすべはなかった。





夏夜乃の父親は夏夜乃のことなどどうでもいいといった様子で去って行った。

それで朧は自分が今何をすべきか思い出した。

夏夜乃を背負って病院まで駆けだす。

病院までは幸い近かったので夏夜乃を背負っていても20分程度でついた。






それから2時間後。今は緊急手術が行われている。

しかしあれだけ血をながしていたのだからもう助からないだろうと朧は思った。

朧が病院に着くまでに夏夜乃はだいぶ多くの血を流していて、呼吸も小さくなっていた。




「…?」

ふと朧は誰かに呼ばれたような気がした。

声の聞こえた方、病院の外まで行ってみる。

するとまた声が聞こえた。

「朧…ありがとう。私を外の世界に連れて行ってくれて。」

「夏夜乃!?どこにいるんだい?」

「私…もう死ぬみたいね。せっかく朧と一緒にいられると思ったのに残念ね。」

「まだ死んじゃだめだ。外の世界には、楽しいことがたくさんあるんだ!だから…。」

「でも、もう駄目なの。」

「そんな…僕のせいで…。」

「自分を責めないで。私は最後まであなたのそばにいられて幸せだったから。」

「待ってくれ。僕も夏夜乃のところに行く。僕も夏夜乃のそばにまだまだいたい。」

「ありがとう、朧。待ってるわ。」


そう言って声は聞こえなくなってしまった。






夏夜乃が息を引き取った少し後、中庭で朧の遺体が見つかった。

死因は心臓発作。

2人が死んだ時間はほぼ同時で、関係者は夏夜乃が朧を連れていったのではないかと言っている。

なぜなら朧は笑顔で死んでいたから。




若いながらにつらい恋をした二人は、天国という楽園で幸せに暮らせるのでしょうか?



ひて

逢える時だに

うつくしき

言尽くして

長くと思はば



「あなたにお会いできる今この時だけでも優しい言葉をたくさん下さい。2人の仲が長く続くと願うのなら。」


FIN

ここを見てくれているということは最後まで読んでくださったということですね。

ありがとうございます。

この話は最初と最後にある和歌、これをもとに作った話です。不思議な雰囲気の漂う話にしようと思って書いてきたんですが、どうだったでしょうか?


アドバイス、感想などなどをいただけたら光栄です。

では、またいつの日かお会いしましょう


by 奏音かのんリイ

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