青髪の女
石の通路が奥まで続いている。
壁はひび割れ、ところどころ苔が張り付いていた。
四人の騎士の足音だけが、静かな遺跡に響く。
突き当たりに、小さな部屋があった。
崩れた壁に囲まれた行き止まりの空間。
先頭の騎士が足を止める。
中央に、石の台。
その上に――
空色のイースターエッグ。
「……これか」
イースターエッグに指が触れようとした瞬間――
「待ちな」
四人の騎士が一斉に入口を見た。
入口に、一人の女。
長い青髪を背中で束ねている。
黒いロングコートを羽織り、細身の体を気だるげに壁へ預けていた。
女は、ぼー、と騎士たちを眺めている。
四人の騎士が剣を構えた。
「誰だ」
「さあね……」
青髪の女は気にする様子もなく歩き出した。
「そのイースターエッグは置いていきな」
「ふざけるな。これは退魔騎士団のものだ」
女は笑った。
「じゃあ――死ね」
背中に結った髪を掴み、腰のナイフを抜く。
ざくり、と髪を断つ。
「50mm、変換」
宙に散った髪が瞬時に燃えるような青い光へ変わり、女の全身を覆う。
前へ踏み込む。
次の瞬間――
騎士の腹に拳が突き刺さった。
鎧ごと、貫かれている。
乱暴に拳を抜くと、騎士は力なく崩れ落ちた。
ぶん、と女は腕を振り、拳についた血を払う。
「一人」
「なっ……!」
三人の騎士たちが目を見開く。
「囲め!」
三人の騎士が女を囲む。
三方向から剣が振り下ろされた。
しかし――
女の姿が消える。
次の瞬間、騎士の頭上に現れた。
蹴りが顔面を打ち抜く。
騎士がまた一人崩れ落ちる。
「おのれーー!!」
叫んだ騎士が斬りかかる。
女はバックステップで回避。
騎士の一人へ掌を向けた。
青い閃光が一直線に走る。
騎士の体が吹き飛び、床を転がった。
静寂。
残りは女と騎士が一人。
騎士は剣を握り直した。
「化け物め……」
女は肩をすくめる。
「失礼だな」
騎士が踏み込んだ。
剣が唸る。
女は紙一重でそれを躱す。
二撃、三撃。
鋭い斬撃が続く。
女は後ろへ滑るように距離を取った。
「へえ」
少しだけ、口元が上がる。
「あんた、結構やるじゃん」
騎士は答えない。
次の瞬間――
地を蹴った。
剣が一直線に突き出される。
女はそれを半身で避けると、騎士の懐へ潜り込んだ。
掌を胸に当てる。
「終わり」
青い光が弾けた。
女は一息つくと、石台へ歩み寄る。
空色のイースターエッグを手に取った。
「これで二つ目っと」
かすかな呻き声がした。
「か……必ず……お前を殺す……」
倒れた騎士が、血に濡れた手を伸ばす。
女は振り返らない。
「まだ生きてたんだ。やっぱり強いね、あんた」
女は一瞥すると、背を向けて出口へ向かった。
「【断末魔の叫び】に伝えといてよ。
次は――お前を殺すって」
女の足音が、やがて石の通路の向こうへ消えた。




