VS 蛇の魔女団
死んだ人間を蘇らせることができるという六つのイースターエッグを求め、キリエとハナコの冒険が始まったのであります。
二つ結びの左側だけが途切れ、不格好な髪のキリエは、首にかけたコンパスを手に取る。
内部の針は淡く光り、一定の方向を指している。
「エッグは向こうの方角だね」
「あと五つも集めなきゃいけないのね……」
ハナコは小さくため息をついた、そのときだった。
「――っ!」
反射的に身をひねる。
直後、背後の地面が爆ぜた。
土が跳ね上がる。
さっきまで立っていた場所が、深く抉れていた。
「キリエ、ようやく見つけた!」
声の方へ顔を向ける。
枝の上に、強気な顔の女が立っていた。
金髪を左右に結った長い髪が、風に揺れている。
別の木の上にも、もう一人。
背後の茂みからも一人現れる。
三人の胸元には、蛇の刺繍が入っていた。
蛇の魔女団の刺繍……イースターエッグを盗んだキリエを捕えに来たのだろう。
襲撃者の中に見知った顔が一人いた。
「久しぶりだね、サユリ」
「馴れ馴れしくすんじゃないよ、裏切り者!
あんたがエッグを盗んでから、こっちは大変だったのよ!」
「それは悪いことしたね」
キリエはまるで他人事のように言った。
「でもおかげで、あんたを堂々と倒せるわ!
ライバル同士決着をつけましょう!」
サユリの口元が歪む。
「ライバル? 笑わせないでよ、三下が」
小さく鼻で笑った。
「絶対殺す!!」
サユリの怒声を合図に、三人の襲撃者が同時に動く。
左に結った髪を掴み、腰のナイフを抜いた。
ざくり、と髪を断つ。
「「「100mm、変換!」」」
切り落とされた髪が宙に散る。
次の瞬間―――
燃えるような黄色い光となり、三人の身体を覆った。
キリエとハナコは同時に後ろに跳んだ。
三人の襲撃者が人差し指をこちらへ向ける。
魔力の弾丸が連射された。
空気を裂く音が連続する。
ハナコは腰の刀を抜き、いくつかの弾丸を切り落とした。
「全部は防げませんよ」
「仕方ないか」
キリエは髪に目を落とし、ぽつりと呟いた。
右に結った髪を掴むと、腰のナイフを抜いた。
ざくり、と髪を断つ。
「100mm、変換」
宙に散った髪が瞬時に燃えるような赤い光へ変わり、キリエの全身を覆う。
髪を代償に魔力を生成した。
「この代償、高くつくぜ」
キリエは愉快げに笑うと、右拳に力を込める。
魔力の塊を作り出し――三人の襲撃者へ投げた。
魔力の塊が地面に付いた瞬間、白い煙が爆ぜるように広がった。
煙は一気に襲撃者たちを覆い、視界を奪う。
煙の中で襲撃者たちは声を上げる。
「ちっ、なにも見えん」
「煙幕か」
「相変わらず燃費の悪い魔法使ってるわね」
ハナコは煙の上へ跳びあがる。
襲撃者の気配を捉え、刀を振るった。
「――そこっ!!」
煙の中で刃が走る。
「――っ!」
短い悲鳴。
サユリの右側のおさげが切り落とされた。
結っていた髪がほどけ、地面に散る。
「ぎゃああああ!! 私の髪が!!!」
「ハナコ、離れて」
「はい」
ハナコはすぐに跳び退き、三人の襲撃者から距離を取る。
キリエは掌へ魔力を集めると、地面に触った。
「――爆ぜろ」
キリエを中心に衝撃波が広がる。
地面が揺れ、周囲が大きく抉れた。
ハナコが戻ってきて周囲に目を走らせる。
「……終わりましたか」
「たぶん」
キリエは短くなった毛先に触れながら答えた。
煙の向こうで、蛇の魔女団の二人が後退していくのが見える。
やがて森の奥へ消えていった。
そのとき、背後からガサゴソと音が聞こえた。
キリエとハナコが振り向く。
「……一人のこってました」
視線の先。
髪を切られ不格好な髪型をしたサユリが、足を押さえていた。
仲間に見捨てられ、逃げ遅れたようだ。
「あの……手、貸してくんない……?」




