バレンタインに渡せなかった女の子の話
私は三鷹美奈。昨日のバレンタインで渡せなかった。
せっかく早くから材料も準備して手作りしたのに……今からでも受け取ってくれるかな?
でも溶けてるかもしれない、などと言い訳を連ねている時、スマホの通知音が聞こえた。
涼介からのメールだった。
『俺の家に今から来てくれないか美奈』
私は既読してすぐ会いに行くことを伝え、渡し損ねたチョコを持って家を出た。
涼介とは保育園からの幼馴染だ。
高校生の今でも仲が良いと私はそう思っている。
涼介の家は私の家とも徒歩六分と近く、昔からよく遊びに行っている。
ピンポ〜ン
ガチャ
「こんな時間にどうしたの美奈ちゃん? この匂いって」
「今から話すこと、涼介には話さないでもらえませんか?」
私は涼介が来る前に涼介の母である沙由香さんに説明した。
「それで昨日ソワソワしてたのね。黙ってるから安心してね。(今日は赤飯にしなきゃね)」
「ありがとうございます」
涼介の部屋のある二階に行くために階段を登っている時に沙由香さんが言ってくれた
「それと涼介は美奈ちゃんからの贈り物ならなんでも喜ぶからね〜」
この言葉が私の背中を押してくれた。
コンコン
「来たよ涼介、入っていい?」
親しき仲にも礼儀あり、私は常に入る前に聞くようにしている。
ガチャ
「毎回言ってるけど、聞かずに入ってくれて構わないからな」
「涼介にだって入られたくない時だってあるでしょ、だからいつも聞くの」
「まあ、たまにはあるけど……美奈になら別に見られたって構わないんだけどな」
「ねえ、涼介……遅くなったけどこれ、受け取ってくれる?」
「この匂い、もしかしてチョコか?」
「うん。昨日渡そうと思ったんだけど、恥ずかしくて、今日呼んでくれたから持ってきた」
「ありがとう美奈、嬉しいよ」
「手作りなんだけど、引かないでね」
「引くわけないだろ」
顔を真っ赤にした涼介を見て私まで照れてしまった。
そして私がチョコの味を聞く前に涼介が『世界で一番美味しい』と口に出して言ってくれて私の心臓の音が余計にうるさくなった。
「「あのさ」」
「先に言っていいよ、涼介」
「分かった。俺さ、美奈のこと好きだ」
「……え!? 私も涼介が好きって言おうとしたんだけど……それと本当は昨日言おうと思ったんだよ、涼介」
「考えることは同じなんだな」
「どういうこと?」
私が聞いたら、昨日涼介も私に告白しようとしたが出来なかったと。
「そんなところまで似てるんだね私たち」
「嬉しいけど、なんか複雑だな」
ドドドド
階段を登る音が聞こえてすぐ沙由香さんが涼介の部屋に入ってきた。
「二人ともご飯出来てるよ。早く下りておいで」
「「今下りる(下ります)」」
バレンタインは過ぎてしまったけど、勇気を出してよかったと心底思う。
二月十五日この日は私たちの付き合い記念日であり、三年後には結婚記念日になる特別な日だ。
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
遅れましたが、バレンタインネタの話です




