表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナポレオン戦争に迷い込んだ女子大生、おねぇ提督とフランス軍を救います  作者: もふおのしっぽ
第三章:フランス・スペイン連合艦隊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/128

第46話:スペインの太陽と、漆黒の確信

翌朝。


ナギが滞在するホテルのスイートルームに、ロドリゴが大きな麻袋を担いで現れた。中には昨日約束した、驚くほど質の良い、真っ白な砂糖が詰まっている。


 だが、ナギとジャンの目が釘付けになったのは、その砂糖……ではなく、彼の後ろに立つ**「見かけない女の子」**だった。



「(……どちら様?)」



 ナギとジャンが、全く同じタイミングで小首を傾げる。


 そこにいたのは、15歳くらいだろうか。


スペインの強い陽光を浴びて健康的に日焼けした肌、意志の強そうな大きな瞳。


ひまわりのように明るく、けれどどこか大人びた雰囲気を持つ、スペインらしい少女だった。


「よう、ナギ殿、ジャン先生。……昨日、ナギ殿がお風呂からなかなか出てこなかったと言ったら、アドリアン様が『ジャンだけでは身の回りの世話が心配だ。女性をつけたい』と仰るので、連れてきた」


 ロドリゴがニカッと笑うと、隣のジャンが「うっ……」と呻いて、気まずそうに眼鏡を押し上げた。


軍医として研究には私心がないつもりだが、うら若き乙女の入浴管理まで任されていた事実に、改めてうろたえたらしい。

 


「Bonjour. Je m'appelle Leonor.(こんにちは。レオノールよ)」



 少女――レオノールは、流暢なフランス語で挨拶した。スペインの太陽のように眩しく、可愛らしいその姿に、二人は一瞬見惚れてしまう。



「……ロドリゴ。失礼だがどこの娘だ?」



「みてわかんのか?俺の自慢の娘だ」



 その瞬間、ナギとジャンは顔を見合わせ、**「(似てない……!)」**と同時に心の中で叫んだ。


岩のような大男のロドリゴと、可憐なレオノール。


二人の驚愕が重なったリアクションに、ロドリゴは怪訝そうな顔をする。


「なんだ? なんかあるのか?」


「い、いえ! なんでもありません!」


 渚が慌てて手を振ると、レオノールはクスクスと笑いながら、ナギの前に歩み寄った。


15歳にしては面倒見がよく、むしろ渚の方が幼く見えるほどだ。


「ナギ様、よろしくね。お父様の仕事(用心棒)を手伝ってるから、港のことなら何でも知ってるわよ。どこに最高の香辛料があるかもね」


レオノールは机に積まれた材料を賢そうな目で見つめ、ナギにウインクした。その頼もしさは、まさに港の裏の支配者ロドリゴの娘そのものだった。


「よろしく、レオノール」


二人はしっかりと握手をした。


ナギはロドリゴが持ってきた上質な砂糖に触れ、確信を持って呟いた。


「……やっぱり『アレ』が作れるかもしれない! 砂糖さえ手に入れば、あとはだいたい目星がつく。……エネルギーの糖、カフェイン、そして香辛料。たしかに昔は薬として飲まれていた。いまでも……不眠不休で戦うための、美味しい最強の『黒い薬』が!」


ナギの全身から、かつてないほどのやる気がみなぎる。


その隣で、軍医ジャンは眼鏡の奥の瞳を熱く燃やし、ナギに吸い込まれるような視線を注いでいた。


「……なんだかどんどん禁断の劇薬じみてくるな」


ジャンは不敵に微笑み、ナギの覚悟を受け止める。


「俺も、最後まで楽しませてもらうよ。……さあ、調合を始めようか」


「ええ! 私も全力でお手伝いするわ、女神様!」


レオノールが弾けるような笑顔で割って入る。


「だって、あなたがこの街に来てから、港のみんなの顔がずっと明るくなったんだもの。お父様も私も、ナギ様のためなら何だって揃えてみせるわ!」


こうして、1800年代のスペインに、歴史を揺るがす「黒い液体」の甘い香りが漂い始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ