表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗北確定のフランク軍にタイムスリップしたので、未来知識で滅亡フラグをおねぇ提と回避します!  作者: もふお
第一章:未来から来た航海士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/35

第13話:血の写本 ― 運命の翻訳 後半

「……選ばなきゃ。全部は無理でも、これだけは、これだけは絶対に伝えなきゃ……!」


渚の瞳は血走り、猛烈な疲労で視界が歪んでいた。だが、指を止めることはできない。


羊皮紙に叩きつけているのは、1803年の人間には「神の視点」そのものである、残酷かつ精密な「未来」だった。


渚はオフライン保存していた『気象学入門』の統計データを呼び出し、直近の死線である**「1803年10月22日」**の情報を解析した。


「10月22日未明、気圧が急落。リオン湾から吹き下ろす暴風ミストラルが海を白く染める。規律を重んじるネルソンは、必ず艦隊を東のマッダレーナ湾へ避難させる。その48時間、港の正面は『空白』になる。西へ舵を切れ。嵐の渦中こそが、イギリスの目から逃れる唯一の道」


「数時間単位の精密な気圧変化グラフ」を写し取った。


次に開いたのは、ダウンロードしていた学習漫画や歴史小説の資料ページだ。1803年から1805年に至る、フランス海軍崩壊の歴史をほんのわずかな記載でも、残すことなくひろいだし、予言書のように書き留める。


手が激しく震える。本来、トラファルガーでフランスが壊滅する日の記録。


「ネルソン・タッチ……縦列突破。敵が正面から垂直に突っ込んできたら、それは罠ではない。その瞬間に一斉回頭し、敵の横腹を叩け。歴史通りの陣形(横並び)に固執すれば、フランス海軍はここで全滅する」


ついにバッテリー残量1%…


画面のバックライトが絶望的なほど暗くなる。渚の手が止まった。


写本の手を止め、震える指でカメラロールを開いた。現代の服を着て笑う自分、友達、大好きな両親。

そして、ぶっきらぼうで優しい成瀬の姿。


渚は唇を白くなるまで噛み締め、涙をこらえた。泣いている暇などない。


網膜に焼き付けるように見つめた。


これが消えれば、自分を証明するものがすべて消えるような激しい焦燥感。


(さよなら、私の世界…。)


最後に一文字、成瀬へメッセージを送信した。


『私は生きてます。』


パツン。


届くか分からない、メッセージ。


絶望的なほど小さな音と共に、スマートフォンは冷たい黒いガラスの板に変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ