表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗北確定のフランク軍にタイムスリップしたので、未来知識で滅亡フラグをおねぇ提督と回避します〜  作者: もふお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/24

番外編:海上の着せ替え人形(ドール)

「さあ、大きく息を吐いて! もっと! 肺の中の空気を全部出し切るのよ!」


シャルルの私室は、戦利品として運び込まれた極上の絹と宝石の香りで満たされていた。提督としての威厳はどこへやら、シャルルは軍服の袖を捲り上げ、獲物を狙う豹のような目つきで渚の背後に立っている。


「ひ、提督……っ、これ、流石に……く、苦しい……です」


渚は柱にしがみつき、脂汗を浮かべていた。


彼女の腰に巻き付けられているのは、クジラのボーンが仕込まれた本格的なコルセットだ。シャルルが容赦なく紐を引き絞るたび、ギリギリと嫌な音が鳴り、渚の肋骨が悲鳴を上げる。


「あら、弱音を吐くには早すぎるわ。美しさは戦いなの! 姉様なんて、この状態でワルツを三時間踊りきったんだから。……ほら、もう一絞り!」


「う、ぐっ……!?」


グイッ、と力任せに紐が引かれた。渚の腰は現実離れした細さに絞り上げられ、押し出された胸元がドレスのデコルテから溢れんばかりに強調される。


呼吸は浅くなり、視界がチカチカと点滅する。軍服を着ていた時の「兵士としての自分」が、物理的に削ぎ落とされていくような感覚。


シャルルは満足げに鼻歌を歌いながら、深紅のベルベットドレスを渚の頭から被せた。


「……完璧。ああ、なんて可愛らしいのかしら。まるで海に咲いた一輪の薔薇だわ!」


鏡の中にいたのは、作られた少年の面影など微塵もない、一人の「女性」だった。コルセットのせいで少し潤んだ瞳と、浅い呼吸で上下する白い肩。


その時、ノックもなしに部屋の扉が勢いよく開いた。


「提督! 護衛艦からの緊急報告を——」


現れたのは、伝令のアドリアンだった。


しかし、彼の言葉は最後まで続かなかった。手にしていた書類が、音もなく床に滑り落ちる。


「…………なぎ、さ……殿?」


アドリアンの瞳が、信じられないものを見たかのように大きく見開かれる。


貴族の家から追放され、美学も誇りも捨てたはずの彼にとって、目の前の光景はあまりにも劇薬だった。苦しげに肩を震わせ、今にも折れそうな細い腰をドレスで包んだ渚。広くあいたデコルテにつたう冷や汗。その眩しさに、アドリアンは心臓を素手で掴まれたような衝撃を受ける。


「あら、アドリアン。ノックもできないなんて、お里が知れるわよ?」


シャルルは渚の肩にわざとらしく手を置き、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。


「でも、見惚れるのも無理はないわね。この子は今夜、私の大事な『お姫様』なんだから。ねえ?」


「あ……ぅ……」


渚は恥ずかしさと苦しさで顔を真っ赤にし、助けを求めるようにアドリアンを見た。


しかし、アドリアンは真っ赤になった顔を隠すように拳を握りしめ、目を逸らすことすらできずに、ただ立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ